アタヲカオ様の『紫霞のヴェール ― My Funny Valentine』を読み終えたあと、派手な謎解きよりも「心に残る静けさ」が強く残る作品でした。
事件を追ううちに、少しずつ浮かび上がる人間関係のズレや、言葉にされなかった感情がとてもリアルで、「もしかしたら自分も見落としてきたものがあるかも」と考えさせられます。文章は静かで美しく、会話の間や沈黙まで意味を持っていて、読み進めるほどに胸が締めつけられました。
ミステリーが好きな人はもちろん、友情や恋、居場所のなさに悩んだことのある人、目立たない側の気持ちに寄り添いたい人にぜひ読んでほしい一作です。
若きジュエリーデザイナー・紫月晶人が死体となって発見。
死因は薬品の誤飲による事故、とされた。
贋作師・佐竹紘は、自身のジュエリーブランドと提携していた工房内で起こったこの事故に対して不審な思いを抱き、アイリス探偵事務所を訪れることに。
嫉妬の目を向けていた同僚、学生の頃から仲良しだった友人たち……晶人をめぐる人間関係を調査するうち、目立たない存在として認識されてきた滝沢海という女性が浮き彫りになってくるが――。
『白の模倣者』に引き続き、アイリス探偵事務所の面々が謎を追って真実を暴き出す傑作ミステリ短編です!
今作もまた、静謐で美しい空気感と余韻を引くような物語世界が描かれており、プロローグから引き込まれました。
「紫という色はね、
真実を少しだけ曇らせる」
プロローグでの佐竹の言葉ですが、すべてを読み終えたあと、この言葉に物語のすべてが内包されているのに気が付き、驚嘆するほかありませんでした!
『紫』というテーマを使い、ミステリとして見事に構築した展開は本当にお見事!
是非ともご一読いただき、謎解きに挑戦してみてください!