第3話 コラボ相手が決まった理由が不純すぎる

第一章

コラボ相手が決まった理由が不純すぎる


事の発端は、一本のDMだった。


「コラボしませんか?」


送り主は、

登録者15万人の実況系配信者

「シロクマ先輩」。


特徴:


顔出しなし


トーク力そこそこ


超能力は一切ない


とにかく「安全そう」


コメント欄でもよく名前が出ていた。


あの人とやったら面白そう

普通人代表

どこまで信じてるか見たい


俺は悩んだ。


超能力は俺だけの専売特許。

他人にバレるわけにはいかない。


だが――


「普通の人と並んだ方が、

能力の異常さが際立つのでは?」


という、

配信者として最低限まともな思考が勝った。


こうして、

コラボは決まった。


第二章

初顔合わせ、すでに噛み合わない


通話が繋がる。


「どうも〜! シロクマです!」


「どうも、レンタル超能力大学生です……」


「いや名前強すぎでしょ(笑)」


開始三十秒で、

もう面白い。


シロクマ先輩は、

完全に俺を“エンタメ枠”として見ている。


「今日は何するんです?」


「えっと……

“超能力っぽいことを検証”とか……」


「っぽい、なんですね(笑)」


正解だ。

あくまで“っぽい”。


第三章

普通の人が一番困るやつ


最初の企画。


「どっちが先に当てられる? 目隠しクイズ!」


ルール:


目隠しして、


机の上の物を当てる


俺は“勘がいい人”枠


シロクマ先輩は余裕だった。


「いやこれ、普通に触れば分かるでしょ」


俺は透視を使った。


「……マグカップです」


「え、正解!」


次。


「USBメモリ」


「正解!」


コメント欄、ざわつく。


勘良すぎ

たまたまだよな?

これ仕込み?


シロクマ先輩が困惑し始めた。


「え、俺が下手みたいじゃん……」


ここで俺は気づく。


普通の人のメンタルを削っている。


第四章

普通の人はツッコミ役にならざるを得ない


次の企画。


「未来予想トーク」


俺は未来視(微)を使うが、

内容は超しょうもない。


「シロクマ先輩、

次に飲む飲み物、麦茶ですね」


「……いや今コーラありますけど」


30秒後。


「喉乾いたな……

あ、麦茶あったわ」


コメント欄爆発。


なんで当たる

日常未来視やめろ


シロクマ先輩、

完全にツッコミ役になる。


「いや怖いって!

それ予言者の使い方じゃないでしょ!」


第五章

事故は一番どうでもいいところで起きる


問題は最後の企画だった。


「同時にコンビニ商品当て」


シロクマ先輩は勘。

俺は透視。


だがここで――

俺はやりすぎた。


「シロクマ先輩、

あなた今、財布に小銭ほとんどないですね」


一瞬、沈黙。


「……え?」


しまった。


透視が、

余計なところまで見えた。


コメント欄。


それは言っちゃダメ

プライバシー


シロクマ先輩は笑ってごまかした。


「やめろやめろ(笑)

俺が貧乏みたいじゃん!」


だが、

空気が一瞬だけ、

ピシッと冷えた。


俺は即座にフォローする。


「い、いや、

“今たまたま”ですよ!」


危なかった。


最終章

コラボは成功、でも――


配信は大成功だった。


同接、過去最高。

切り抜き量産確定。

登録者も増えた。


通話終了後、

シロクマ先輩からDMが来た。


「正直さ、

ちょっと不思議だったけど

面白かったよ!」


「またやろうぜ!」


俺は安堵した。


能力は、

バレていない。


……たぶん。


だが、

自販機の表示が変わっていた。


観測者:4

外部接触イベント:記録済


「……増えてるんだけど」


俺は苦笑いする。


普通の人とのコラボは、

楽しくて、

笑えて、

そして――


思った以上に危険だった。


次にコラボするなら、

もっと注意しよう。


俺はそう思いながら、

次の配信タイトルを考える。


――

「超能力者(自称)と一般人が

どこまで噛み合うのか検証」


コメント欄は、

きっとまた盛り上がる。


その裏で、

世界は少しずつ、

俺を中心に動いていることを、

まだ視聴者は知らない。


自動販売機は、

今日も何も言わず、

俺の部屋に立っていた。


次の“コラボ”が、

誰になるのかを、

知っているかのように。

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