001:ストーカーは怖いです

 2年弱共に過ごしてきた仲間に追放された。

 その事実が僕にとって非常に悔しかったし、ショックも大きかった。


「絶対に見返して、やり返してやる」


 と心に決め、やる気に満ちていたのも束の間つかのま、いまの俺じゃ、と言うより、この先どうすれば強くなるのかのロードマップすら出てこない。


 正直わかっていた。いつ追放されてもおかしくなかった。最弱ジョブの『召喚術師』。一般的には保有できるスキルは召喚ただ1つ。召喚できるのもただ1匹。見た目は少々派手だが、強さはそこらのイヌと変わりない。だからといって見捨てられる訳でもない。どんな時も俺の1番近くにいてくれた従魔ペット。俺の最大の癒しだからだ。そんな癒しがあってもこの悔しさは拭いきれなかった。


 なけなしの金でいちばん安い宿に泊まる。部屋は案外広かった。意外とふかふかのベッドに個室のお風呂とトイレ、そして、朝食と夕食がついてくる。これからはここを拠点にすることに決めた。


「もう遅いし、寝ようか。アル」

「キュ〜」


 俺の従魔ペットのアルが「そうしよう」と言うかのように鳴く。


 今日は特別疲れた。荷物持ちの時や、囮にされた時よりも、体がズンとした感じで。たぶん精神的にも疲れたのだろう。いつもはアルの方が先に寝るのに今日は俺の方が先に寝てしまった。


 朝早く起きる必要がなくなったのと、今までの疲労が溜まっていたせいなのか、気がついたら日が既にいちばん高いところまで昇っていた。


「どれだけ寝たんだろう」


 そんなことを言っていると、部屋のドアがノックされた。


「レンさん、起きてますか?手紙が届いてますよ」


 この声はこの宿の主人だった。


「は〜い。ありがとうございます」


 そう言ってドアを開け手紙を受け取った。


「誰からだろう?」


 封筒に差出人の名前は記載されていなかった。つまり、ここに直接届けに来たということだ。


「昨日ここに来たのに……なぜわかったんだ?」


 そんな疑問を抱きつつも、封を切る。中に入っていたのはギルドの勧誘だった。ギルド名は「追放者ギルド」だった。何一つ聞いた事のないギルドだった。

 手紙には、


・俺をギルドの幹部にしたい

・追放者のみでの構成

・絶対に才能が開花する




 などといった胡散臭いうさんくさい内容で明らかに怪しいし、追放者だけでギルドを?どんだけ追放されてるんだよ。っていう疑問もある。


(俺はこんなのに乗っている暇はないんだ)


 そう思い今日は図書館に行く。召喚術師についての文献を探すためだ。強くなるにはそこから始めなければ。




 王国図書館にて――


「ここが王国図書館か……」


 外見はギルドの建物と同じくらいの大きさだったが、中は空間魔法で広げられていて、パッと見10階ぐらいある。


「この中から探すのか……骨の折れる作業になりそうだざっくりとした場所だけでも分からないかな」

「こんにちは、なにかお困りですか?」


 そう声をかけてくれてのはこの図書館の司書さんだった。


(これは助かった)


「ジョブについての資料を探していまして。どこにあるか分かりますか?」

「ジョブについてですね。ちなみに何のジョブですか?」

「……召喚術師です」


 最弱ジョブの召喚術師について聞くのは恥ずかしかった。しかし、司書さんは何も聞かず、「わかりました」の一言。


「136件ヒットしました。案内しますね」


 聞き間違いだろうか。いや、確かに136件と言っていた。


「そんなに多いんですか?もっと少ないものだと……」

「いえ、少ないですよ?剣聖様についての文献、何件あると思いますか?」

「500件くらいですか?」

「いいえ、30,000件ですよ」

「たった一人でそんなに!?」

「はい。あ、召喚術師についての文献はここですね」


 いつの間にかに着いていた。あまり歩いていないと思ったのだが、実際には6階まで来ていた。


「あ、ありがとうございます」

「では、ごゆっくりどうぞ」


 司書さんはそう言って戻った。


「ここら辺が召喚術師に関する文献か。何日あっても読み終わらない気がする」


 アルと協力して大事そうな文献を読み漁ること6時間。読んだ内容は大体が似たようなものだった。


 1.召喚できるのはせいぜい2匹

 2.魔力量によって決まる

 3.スライムの方が強い


「いや、スライムの方が強いってなんだよ」


 って、そんなことは置いといて。何一つ参考になるものがなかった。途方にくれて帰ろうとした時だった。背後から男の人が俺を呼んだ。


「君がレンくんだね?」


「はい、そうですが何か……」


 もしかして、例の追放者ギルドだったり……


「お察しの通り、私、追放者ギルドの幹部、エレン・バスラーだ」

「なんで俺の場所わかるんだよ。しかもこんな広い図書館で」

「後ろからついて行かせてもらったので」


(あー、ただのヤバいやつー。こんなやばい集団に誘われてるの?俺。断ったらどうなっちゃうんだよ。ヒェ~)


「手紙だけじゃ上手く伝わらないよね。ちゃんと説明しないと思って直接会いに来ちゃいました」

「ちゃんとって……」


 ちゃんと説明されたからなんだと思いつつも話を聞いてみることにした。


 彼は俺に質問を投げかけた。


「君は古龍を知っているかい?」

「古龍ですか?もちろん知ってますよ」


 古龍――それは数百年前にこの世界を滅ぼしかけた龍で最強と言われている。しかし、アーサーという放浪者によって封印されたのだ。


「古龍を封印したのは誰か知っているか?」

「常識じゃないですか。アーサー様ですよ」

「よく知っているな。じゃあ追放者ギルドの創立者は誰か知ってるか?」

「まさか……あの伝説のアーサー様……?」

「ご名答」


(なぜ伝説のアーサー様が追放者ギルドなんて……)


「何故かって、聞きたそうな顔をしているね」

「そりゃもちろん」

「簡潔に説明すると、アーサーは初代勇者パーティーから追放されたんだ。理由は至って簡単、当時は弱かったからだ」


 アーサー様が弱かった?そんな話は聞いたこともないし、元勇者パーティーだったことも。俺は疑ったが、エレンの目は嘘をついていなかった。


「それでどうして追放者ギルドを?」

「君と一緒さ。元仲間ゴミどもを見返してやりたいからだよ。どう?入る気になった?」


「じゃあ、最後に質問を……」


「なんだい?なんでも聞いておくれ」


 俺はなぜ俺をストーカーをしてまで勧誘するのかを聞いた。


 追放者ギルド彼らによると、「勇者パーティーを追放されたから」、と、「最弱と言われるが故、数が少ない召喚術師だから」だという。


 俺は半信半疑、いや、ほぼ疑の状態で追放者ギルドに行くことにした。


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2025年12月14日 12:00 毎日 12:00

お前たちが追放した俺は神獣テイマーだ アンティス @Xx_Antis_xX

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