配達員の異世界旅
たるとたん
第1話
「純おめぇ暇なら配達やらねえか??」
遅めの朝食をとっているとりんご亭のマスター…120センチほどで髭を蓄えて小柄でありながらガッチリとした…いわゆるドワーフという種族にあたるのだろう…通称ダンナが話しかけてきた
「配達??いきなりどうした?いつものフードさんはどうしたん?」
フードさんとはいつも食材を届けてくれるイケメンの兄ちゃんでまともに話したことはないが知った顔だ
「フードさん?ジルの事か?それなら国に帰っちまった…」
ダンナは無精髭を触りながら寂しそうに呟く
「付き合い長そうだったのに残念だったねぇ…まあ俺も顔見知りではあるから残念ではあるけど」
「まあな…それなりに付き合いが長えのは確かだな。まあ、あいつにも色々あるんだろうし仕方ねぇ
……まあそう言う事で人が居なくて困ってんだ!よろしく頼むぜ!」
どうやら直ぐに切り替えたらしく豪快に肩を叩く…どうやらダンナの中では決定事項のようだ
「痛いって!てかなんだって俺なんです?他にも頼めるやつとか信頼できる冒険者的なやつはたくさん居るだろう??」
「どうせギリギリの生活なんだろうから仕事回してやるからしっかり働け」
相変わらず失礼なおっさんだな…配達で稼いだ金はあるからギリギリな事はないが…いや確かにギリギリではある
「わかりましたよ〜断ったってどうせ首を縦に振らなきゃ返さないんだろうから、特別に受けますよ」
「よしきた!じゃあ市場に行って野菜、魚、肉を受け取ってきてくれ。注文票を渡せば用意してくれるから持ってきてくれたら依頼は完了だ」
「……リアカーとか無いのか?この細腕で流石にこの量は難しいと思うんですよねぇ…」
依頼自体は距離も短いし簡単だが、どう考えても非力な俺には到底運びきれない。往復するのは良いけど一回で済ませることができるならそれに越したことはない
「…ほらこれ貸してやるよ」
ダンナはそう言って古びた袋を雑に投げてよこした
「…財布か?先に手間賃が入ってるとかですかね??まさかこれに入れろとか言わないですよね?」
「お前マジックアイテムとかしらねぇのか?魔法職じゃなくても使えるアイテムボックス的なもんで、マジックバックってやつだ。ちと古いが使えるから持っていきな」
「あっこれがそうなの?…てかこんな高価そうなもの借りて良いんです?」
呆れたように言われてもわからん…光ったり音がしないと異世界初心者には厳しい
「まあ細えこたぁ良いんだよ!とりあえず夕方までに帰ってくれば良いからとりあえず頼んだ。たくさん入るから他に仕事して来ても良いぞ、暇だろ?」
「個人的には助かるけどマジックバックって高価だろうし他の仕事で使うのは申し訳ない…あと暇じゃないんですが?」
優雅にご飯を食べる時間だから暇ではない人生においてとても重要な時間だ配達をしているとご飯の概念が無くなるからこそ大切にしたい時間だ
「お前ポーターだったのか?じゃあ尚更マジックバック必要じゃねえか?ポーターの必需品だぞ?どうやって生きて来たんだおめぇ…」
ポーターじゃなくて配達員なんだが…そんなこと言ってもまぁ伝わらないか…
「俺にも色々あるんですよねぇ…まあご厚意に甘えてありがたく使わせて頂きますよ。とりあえず行って来ますね」
そう、色々ある…酒を飲んで寝たら突然異世界に来てしまった身としては当然知識も能力も無い。不思議なことに金はそのまま使えるからとりあえずどうにかはなっている。とりあえず頼まれた仕事をこなしに行きますか
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