供述小説
やです。
第1章 到着──あなたのよく知っている導入
最初に申し上げておきますが、これはあくまで“小説“です。
供述書ではありませんし、調書でもありません。ただの娯楽小説──あなたがこれまで何十冊となく読み散らかしてきた、あの手の物語と同じ棚に並ぶものです。
……そういうことにしておきましょう。今のところは。
* * *
十月の終わり、季節外れの台風が本州の南をかすめるという予報が出ていた。
日本海側に浮かぶ小さな島、羽鳴島。その周辺海域には、すでに注意報だの強風域だのという言葉が飛び交っていたが、この国の船乗りは昔から、そういった予報を「少し割り引いて」受け取る傾向がある。
つまり、よほどのことがないかぎり、船は出る。人は渡る。事件は起こる。
あなたも、こういう導入には見覚えがあるだろう?
「嵐の孤島」「閉ざされた館」「外界との断絶」。密室と同じくらい、推理小説の世界ではお約束の舞台装置だ。
だからこそ、安心してほしい。これは型どおりの話だ。少なくとも、ここまでは。
* * *
午後三時、羽鳴島行きの連絡船は、港町・羽鳴坂の桟橋を静かに離れた。
船体は古びているが、きちんと手入れはされているようだった。白い塗装はところどころ剥げ、鉄板にはうっすらと錆が浮いているものの、油の匂いと鉄の匂いが混じった空気には、奇妙な安心感があった。
乗客は多くない。観光シーズンはとうに過ぎていて、島に渡ろうとする物好きは限られている。
甲板に出ている客は、目に見えるだけで六人。そのうちの五人が、今から向かう屋敷──「羽鳴館」に招かれた客だった。
残る一人は、釣り竿を手にした初老の男で、誰とも口をきかず、ただ海を眺めている。物語に関わらない人物だ。
あなたは、彼のことをすぐに忘れていい。
* * *
一人目は、黒いスーツに身を包んだ細身の男だ。
年のころは三十代前半。眼鏡の奥の目つきは鋭く、けれど姿勢や所作には妙な落ち着きがある。ネクタイは地味で、靴はよく磨かれている。
あなたが街で彼を見かけたとしても、「真面目そうなサラリーマン」くらいにしか思わないかもしれない。
彼の名は、白石怜二。職業は弁護士。
ただし、彼がメディアでたびたび「異色の弁護士」と紹介されるときには、もうひとつ肩書きが添えられることが多い。
──素人探偵。
あなたも、こういう人物に見覚えがあるはずだ。
殺人事件が起こる物語のなかには、決まって彼のような「説明役」「真相解明役」が配置される。
凡百の読者は、彼の観察と推理に導かれて、物語の迷路を歩いていく。
だからあなたが今、彼の姿を追っているのも、偶然ではない。
甲板の手すりにもたれて、白石は灰色がかった空を眺めていた。
雲の切れ間から、薄く太陽の光がのぞく。その向こう、水平線に、低く黒い島影がかすんで見えた。
「白石先生ですよね? あの、テレビで……」
おずおずと声をかけてきたのは、小柄な女性だった。
明るいベージュのトレンチコートに、場違いなほど大きなキャンバストートバッグ。肩までの髪は少し乱れていて、本人の性格の慌ただしさを暗示している。
「はい。そうですが」
白石が振り向くと、彼女はぱっと顔を赤らめた。
「やっぱり。わたし、いつも番組見てます。あの……被告人の無実を証明した回とか、本当にすごくて」
白石は、どこか照れたように、けれど慣れた手つきで名刺入れを取り出した。
「ありがとうございます。白石怜二といいます。あなたは──」
「あ、すみません、名乗ってませんでしたね。三枝ののかといいます。雑誌の編集をやってまして」
彼女は自分のコートのポケットをまさぐり、くしゃりと折れた名刺を引っ張り出した。角は丸くなり、紙にはコーヒーの染みがついている。
「週刊アクト」というロゴが印刷されている。あなたも、どこかのコンビニの棚で見かけたことがあるかもしれない。
芸能スキャンダルと事件特集を売りにした、やや下世話な週刊誌だ。
「羽鳴館には、お仕事ですか?」
白石が尋ねると、三枝は「ええ」と曖昧に笑い、少し目を泳がせた。
「まあ、取材というか……企画というか……。でも、今回のはどっちかというと、お仕事半分、好奇心半分ですね」
彼女はトートバッグから小さなノートを取り出し、ぱらぱらとめくった。ぎっしりと書き込まれたメモの中に、いくつも「羽鳴館」「オーナー」「姉妹」「事故?」といった単語が見える。
「ご招待状にもありましたよね? 『羽鳴館・完成記念パーティー』って。建築マニアの間じゃ、ここ数年ずっと噂になってた場所なんですよ。
それがやっと、こうしてお披露目になるって聞いて、どうしても見ておきたくて」
「建築マニア、ですか」
白石は小さく笑った。
「僕はそういう趣味に疎くて。依頼人から“ぜひ来てほしい”と頼まれただけです」
「依頼人?」
三枝が、記者らしい敏感さでその言葉に飛びついた。
「どんなご依頼なんですか? あ、差し支えなければでいいんですけど……。ほら、“謎めいた依頼を受けた探偵が、嵐の島に呼ばれる”って、それだけで記事になるというか、小説一本書けちゃうというか」
「小説なら、ここに本職がいるようですよ」
白石は、彼女の視線を甲板の反対側へと誘導した。
* * *
そこでは、別の二人の客が、海風にあたりながら言い争いに近い口調で話していた。
「だからさ、今回ばかりは顔出ししといたほうがいいって。羽鳴館のオーナーっていえば、今後なにかと箔がつくしさ」
そう言っているのは、四十代半ばくらいの男。
ブランド物のカジュアルウェアに、派手な腕時計。襟元には、さりげなく高級ブランドのロゴがのぞいている。よく通る声は、どこか舞台俳優のようでもあり、あるいは営業マン的な図々しさもある。
彼の名は、久住晴臣。
不動産、飲食、投資、エンタメ──とにかく「儲かりそうなもの」にはなんでも顔を出す、やり手の実業家だ。
「箔なんていらないわよ。あたしは静かに暮らしたいの」
ばっさりと切り捨てたのは、対面の女性。
髪はきっちりまとめられ、シンプルなネイビーのコートに、品のいいシルクのスカーフ。
彼女の立ち姿には、どことなく学校の校長か旧家の長女のような、「責任の重さ」を抱えた人間特有の厳しさがある。
彼女は、羽鳴真理子。
この羽鳴島の出身であり、今回お披露目される羽鳴館のオーナーだ。
「でもさぁ、マリコさん。せっかくこんなすごい館を建てたんだから、世間の目にさらさないともったいないって」
「この館は、見世物じゃないわ」
真理子は、少しだけ表情を和らげる。
「……まあ、今回ばかりは、いろんな人に見てもらおうと思って招待したんだけれど」
「そうそう、それそれ。そういう顔になっておいたほうが、なにかと得なんだって」
久住は笑いながら、ポケットから銀色のライターと煙草ケースを取り出した。
だが、甲板に掲げられた「禁煙」の札に気づき、舌打ちしてポケットに戻す。
「島の連中にも挨拶しとかないとな。こういうのは地元との関係づくりが肝心でね。ね、マリコさん?」
「あなたが言うと、なにか裏がありそうに聞こえるから不思議ね」
真理子は、軽くため息をつく。
「あなたが館に出資してくれたのは感謝しているけれど、その代わりにあたしの静けさが少しずつ削られてる気がするのよ」
「静けさだけじゃ、人は食っていけないんだよ」
久住は、海のほうを見ながら肩をすくめた。
「島の連中だって、そろそろ観光とか外貨とか、そういうのに目を向け始めないとさ。
羽鳴館は、そのための“旗”になれる。そう思って投資してるわけ」
あなたは、ここでひとつの関係性を確認する。
──館のオーナーと、金を出した実業家。
利害が絡み合い、価値観がすれ違う二人。
もしここで事件が起きれば、互いに相手に動機を見いだすだろう。
だが繰り返すが、彼らのなかに「本当の犯人」はいない。
少なくとも、物理的な意味では。
* * *
あなたの視線が久住と真理子のやり取りから離れたとき、ゆっくりとキャビンの入口近くにカメラが向く。
……カメラ、というのは比喩だが、あなたは今、そこに視点を移したはずだ。
そこでは、若い男女二人組が、キャリーバッグと格闘していた。
「ほら、早く閉めないと、スーツがしわになる」
神経質そうにスーツケースの蓋を押さえながら言うのは、赤瀬悠斗。
二十代半ば。細身の体にブランド物のスーツを無理やり着せられたような印象がある。
髪はきちんと整えているが、どこか「よそ行き」に慣れていない感じがした。
「そんなにきっちり詰め込むからよ。原稿のプリントアウトまで持ってくることないじゃない」
からかうように言ったのは、赤瀬沙耶。悠斗の妹であり、彼のマネージャー代わりも務めている。
ショートカットにパーカーというラフな格好だが、眼差しは兄よりよほど冷静で現実的だ。
「だって、島にこもって一気に直したかったんだ。編集さんだって、そのつもりで合宿みたいにしようって……」
「はいはい、“羽鳴館で新作を書き上げた若手ミステリ作家”ってキャッチコピーもつくのよね」
沙耶は肩をすくめ、兄のスーツケースの上に勢いよく乗った。
ぎゅう、と軋む音がして、ようやくファスナーが閉まる。
「う……ありがとう」
悠斗は、情けない声を漏らしながらも、どこかほっとした表情を見せた。
赤瀬悠斗は、ここ数年売れ始めたミステリ作家だ。
デビュー作こそひっそりと書店の棚で眠っていたが、三作目がドラマ化されてから、一気に知名度を上げた。
文庫帯には「新本格の旗手」「論理の魔術師」といった、くすぐったい惹句が並ぶ。
だが、あなたが本当に知っておかなければならないのは、彼が「物語を書く側の人間」である、という一点だけだ。
「編集さんも呼ばれてるんでしたっけ?」
近づいてきた三枝が、興味津々といった様子で尋ねた。
「あ、はい。あの、その……」
悠斗が言葉に詰まる横で、沙耶がすばやく会話を引き取る。
「お世話になってる編集さんが、明日合流する予定です。今日は先にあたしたちだけで」
「へえ。じゃあ、今夜はまだ準備運動ですね」
三枝は、ちゃきちゃきとメモを取る。
「若手ミステリ作家と編集者が孤島の館で合宿って、それだけで一本、特集いけますよ。ねえ、先生?」
「先生って呼ぶの、やめてください……」
悠斗は、恥ずかしそうに顔をそむけた。
あなたは、ここまでに登場した名前と職業を、すべて記憶しているだろうか。
弁護士に、週刊誌編集者に、実業家に、館のオーナー、そして売れかけのミステリ作家とその妹──。
典型的な「クローズド・サークル」の布陣だ。
動機のありそうな人間が、うじゃうじゃしている。
安心してほしい。
彼らのなかに、「本当の犯人」はいない。
今のところは、そう言っておこう。
* * *
連絡船は、波を切り裂きながら、ゆっくりと島に近づいていった。
羽鳴島は、地図で見ると、かぼちゃを横からつぶしたような、いびつな楕円形をしている。
海岸線の大半は切り立った崖で、人が上陸できる浜辺は北側と東側のわずかな入り江だけだ。
その東側の小さな入り江に、桟橋が伸びている。錆びた鉄板とコンクリートの継ぎ接ぎ。
島の人口は三十人にも満たず、定期航路も一日二往復きり。
あなたが想像する「寂れた離島」のイメージから、そう外れてはいない。
しかし、その島の南端──崖の上には、異様な存在感を放つ建物があった。
白い外壁。水平と垂直を強調した直線的なデザイン。
海に向かって大胆に突き出したテラスと、崖の側面に這うように走るガラス張りの回廊。
コンクリートとガラスと鉄骨で組み上げられたそれは、どこか現代美術館のようでもあり、或いは高級リゾートホテルのようでもあった。
羽鳴館。
三枝が、感嘆の声を上げた。
「すご……。写真で見るよりずっと大きい。ほんとに、こんなところに建てちゃったんだ」
彼女は、バッグから小型のデジカメを取り出し、夢中でシャッターを切り始めた。
白石も、無意識に息を呑んでいた。
あれほどの建築を、こんな交通の便の悪い島にわざわざ建てる意味は、合理的にはあまりない。
しかし、合理性だけで人は動かない。
巨大な財産を持ち、巨大な孤独を抱えた人間は、ときに常識を逸脱したものを欲しがる。
羽鳴真理子は、そういう人間のひとりだった。
* * *
桟橋に船が横付けされると、甲板員が素早くロープを投げ、錆びた係船柱に括りつけた。
エンジンが停止し、急に辺りが静かになる。残るのは、波と風の音だけだ。
島の側から、一人の男が歩み寄ってきた。
作業着に長靴。日に焼けた肌と、額のしわ。
背は高くも低くもなく、年齢も三十代にも四十代にも見える。
要するに「島の男」の典型のようでいて、どこかその輪郭が曖昧だった。
彼は、乗客たちを見回し、ぺこりと頭を下げた。
「遠いところ、ようこそおいでくださいました。羽鳴館で管理人をしております、佐伯一馬と申します」
低く、よく通る声だった。
「お世話になります」
真理子が代表して頭を下げる。その後ろで、久住がひらひらと手を振った。
「久しぶりだな、サエさん。相変わらず真面目そうで」
「久住さんも、お変わりなく」
佐伯の口元が、かすかに動いた。笑ったのかどうか、判別しづらい微細な変化だった。
彼は、すぐに仕事モードの表情に戻ると、客たちの荷物に視線を落とした。
「皆さまのお荷物は、館までこちらでお運びします。道が悪いので、足もとにはお気をつけて」
「道って、そんなに大変なんですか?」
三枝が不安そうに尋ねる。
「崖の上までの坂が急でして。手すりはついておりますが、雨が降ると滑りやすくなります。
今のうちに上がってしまったほうがよろしいかと。天気も崩れそうですし」
あなたも、ここで「天気が崩れる」という言葉に反応したはずだ。
そう、嵐が来る。外界が断たれる。
誰かが死ぬための、準備が整う。
* * *
六人分の荷物が小さなトラックの荷台に積まれていく。
トラックには、羽鳴館のロゴがさりげなくプリントされていた。白地に、波と鳥を組み合わせたようなシンボルマークだ。
「船は、明日は出ますか?」
白石が、桟橋に残っていた船長に声をかけた。
「さあなあ。天気しだいだ」
小太りの船長は、鼻の頭を指でこすりながら笑った。
「明日の朝になってみねえと、なんとも言えん。風がこの調子で強くなれば、欠航もありえるな」
「そうですか」
白石は、短く礼を言ってから、坂道のほうへと歩き出した。
あなたなら、ここでこう考えるだろう。
──つまり、この客たちは、早ければ今夜、遅くとも明日には「外界から隔離される」可能性が高い。
そのとおりだ。
ただし、その事実を一番早く知っていたのは、船長でも気象庁でもない。
この物語を書いた人間だ。
* * *
桟橋から館までは、徒歩で二十分ほどだった。
海岸線に沿って少し歩き、やがて山の斜面に取りつく。
急な坂道は、コンクリートで固められてはいるが、ところどころに苔が生え、足を滑らせそうになる。
「はぁ、はぁ……。これ、毎日はきついですね……」
三枝が、肩で息をしながらつぶやいた。彼女の額には、すでに汗が滲んでいる。
「島の人たちは、もっと楽な道を使いますよ。裏の林道から回るルートがあるんです。
ただ、こちらの道のほうが眺めはいいでしょう?」
佐伯が、崖のほうを指さした。
視界の下半分には、鉛色の海が広がっている。
遠くで白波が砕け、風に煽られた飛沫が、崖の半ばまで届きそうだった。
白石は、足もとに注意を払いながら、つい職業柄というべきか、道の構造を観察していた。
坂道は、崖の際ぎりぎりを、蛇行しながら上っている。
片側は岩肌、反対側はすぐに切り立った断崖。ガードレールはあるが、細い鉄パイプが一本通っているだけで、心もとない。
足を滑らせれば、海へ真っ逆さまだろう。
「ここから、誰かが落ちたら……」
思わず、そんなことを考えてしまう自分に気づき、白石は小さく首を振った。
あなたも、もう同じ光景を想像したはずだ。
「崖からの転落死」。事故か、自殺か、他殺か。
そのどれであっても通用する、便利な死因。
こうして、物語の可能性は、ひとつずつ準備されていく。
もちろん、実際にここから誰かが落ちるかどうかは、まだ決められていない。
……少なくとも、あなたの読み方しだいでは、そういうことにしておける。
* * *
坂道の途中、ふいに風向きが変わった。
海から吹き上げていた冷たい風が、今度は斜面の上のほうから吹き下ろしてくる。
遠くで雷鳴のような低い唸りが聞こえた。まだ雷雲は見えないが、空気に、じわじわとした重さが混じり始めている。
「やっぱり、降りますね」
佐伯が、空を見上げて言った。
次の瞬間、ぽつり、と冷たいものが白石の頬に当たった。
続けざまに、二滴、三滴。
あっという間に、細かい雨粒が混じった風が、顔に、コートに、髪にまとわりつき始めた。
「急ぎましょう」
真理子が、スカーフを押さえながら声を上げた。
久住は「やれやれ」といった表情で天を仰ぎ、三枝は慌ててカメラをトートバッグにしまい込む。
赤瀬兄妹は、荷物を抱え直しながら、小走りで坂を上っていった。
あなたは、こういう場面で「天候の悪化」を、もはや一種の記号として読み取るだろう。
嵐が、物語の歯車を早める。
偶然のように見える出来事が、実は「嵐の夜だからこそ」起こりうるものになる。
それはそのとおりだが──
それ以上に重要なのは、「悪天候」を理由に、人々の行動がわずかに変化することだ。
足もとへの注意。視界の悪化。判断の鈍り。
それらはすべて、後に「証言の揺らぎ」となって、あなたの推理を惑わせる材料になる。
今のうちに、覚えておいてほしい。
この物語では、「覚えていない」「よく見ていなかった」という言葉が、何度も繰り返される。
そのたびに、あなた自身もまた、「何をどう読んでいたのか」を問われることになる。
* * *
坂を上りきると、視界がぱっと開けた。
羽鳴館は、崖の縁に沿って、横に長く伸びていた。
近くで見ると、その建築はさらに異様だった。
海に向かってせり出したテラス部分を支える、格子状の鉄骨フレーム。
崖側に沿って走るガラス張りの廊下。その下には、崖の岩肌がむき出しになっている。
館の一部は、まるで「宙に浮いている」かのような印象すら与えた。
「……やっぱり、すごい」
三枝は、雨をものともせず、再びカメラを構えた。
「このテラス、どんな構造になってるんだろ。あとで設計図見せてもらえたら最高なんだけど」
「うちの設計士を、あまり困らせないでくださいね」
真理子が、苦笑しながら言った。
「彼らは、もう十分わたしたちを困らせてくれたんだから」
「いいじゃない。お金は払ったんでしょ?」
久住が、軽い調子で口を挟む。
「払ったのは、ほとんどあなたでしょ」
真理子が、きっぱりと言い返した。
「わたしは、もともとこんな派手な館を望んでいたわけじゃないの。もっと、島の風景に馴染む、静かな家でよかった」
「でも、それじゃあ客は呼べないだろ」
久住は、まるで当然のことを言うように肩をすくめた。
「非日常感ってのは、ある種の人間にとっては最高のエサなんだよ。
都会の連中は、“こんなところに家を建てるなんて、どうかしてる”って思いながらも、そういう場所に大金を払う」
あなたは、この会話の中に、すでにひとつのテーマが埋め込まれていることに気づくだろうか。
──「日常」と「非日常」。
羽鳴館は、その境界線上に建っている。
ここで過ごす数日は、登場人物たちにとって「特別な時間」だ。
しかし一方で、島の住民や管理人にとっては、これもまた日常の延長線上にある。
あなたにとっては、もちろん「非日常」だ。
だからこそ、あなたはこの物語を「安全なもの」として消費できる。
少なくとも、今のところは。
* * *
館の正面玄関は、思いのほか質素だった。
ガラスと木と鉄を組み合わせた引き戸。その奥に、吹き抜けのエントランスホールがちらりと見える。
自動ドアではないところが、この館の「奇妙なまでの手作業感」を象徴しているように感じられた。
佐伯が先に中に入り、靴を脱ぐ場所とスリッパを示した。
「すみません、館内は土足厳禁でして。床材にこだわったものですから」
「とことんこだわってるのね、マリコさん」
沙耶が感心したように言うと、真理子はどこか誇らしげに微笑んだ。
「ええ。ここは、わたしの《家》だから」
その言葉には、お金では買えない重さがあった。
もっとも、お金がなければ建たなかった家ではあるのだけれど。
* * *
玄関を抜けると、すぐに大きなホールが広がっていた。
高い天井。二階まで吹き抜けになっており、上階へと続く階段が、ゆるやかな曲線を描いている。
壁の一面は、床から天井までの大きな窓ガラス。外の海と空が、まるで一枚の絵のように切り取られていた。
床は、淡い色合いの木材で統一されている。
柔らかな光沢があり、歩くとほんの少しだけ、ぎし、と控えめにきしむ。
その音が、かえって館全体に「呼吸」を与えているようだった。
「このガラス、全部特注か?」
久住が、感心したように窓を軽く叩いた。コン、という低い音が返ってくる。
「防風仕様になってます。台風のときでも、そう簡単には割れませんよ」
佐伯が淡々と答える。
「誰かが体当たりしても?」
「普通に考えれば、飛び出していきたい人なんていませんから」
淡々とした口調に、微かな棘が混じる。
「……そうね。普通に考えれば」
真理子が、窓の外を見ながらつぶやいた。
あなたは、こういった会話を「意味ありげな台詞」として読み取る。
そして実際、そのとおりだ。
このガラス窓は、のちに重要な役割を果たす。
ただし、それはあなたが今、想像しているような使われ方とは、少しだけずれている。
* * *
「ようこそ、羽鳴館へ」
ふいに、ホールの奥から、女性の声が響いた。
ゆっくりと歩み出てきたその人影を見て、客たちの視線が一斉に集まる。
羽鳴真理子──ではない。
真理子より一回りは若く見えるその女性は、しかしどこか彼女と似た面差しをしていた。
長い黒髪を後ろで束ね、白いブラウスに黒のタイトスカート。シンプルだが、立ち姿は凛としている。
目元の涼しさと、口もとの厳しさのバランスが、どこか「裏方」の人間らしい。
「姉さん、お客さま、連れてきたわよ」
真理子が声をかけると、女性は小さく会釈した。
「姉の、羽鳴沙織です。表向きは、この館の“共同オーナー”ということになっています」
「裏向きは?」久住が茶化すように尋ねる。
「姉の財布番、ですね」
さらりと返した。
場に、控えめな笑いが起こる。
沙織は、客たち一人ひとりに視線を向けると、柔らかな声で続けた。
「皆さま、お忙しいなかお越しくださって、本当にありがとうございます。
今日はまだ“前夜祭”ということで、特に堅苦しい会は予定していません。館内をご自由に見ていただいて、夜はささやかな夕食会を」
「ささやか、ねえ」
久住が、小声で白石に囁いた。
「絶対、ささやかじゃないぞ。料理人だって都心から呼んでるんだから」
白石は曖昧に笑い、視線をホールの奥へと送った。
正面にはダイニングへ続く扉。右手にはラウンジと呼ばれるスペースが広がっており、ソファと暖炉が見える。
左手には小さな図書コーナー。その先には、客室へと続く廊下が伸びていた。
あなたなら、この館の構造を頭の中にマッピングしはじめているだろう。
どこが人目につきやすく、どこが死角になるか。
どの部屋から、どの部屋へ、どのくらいの時間で移動できるか。
それは、きわめて正しい読み方だ。
ただし、この物語では「どこに誰がいたか」以上に、「どこに誰がいなかったか」が重要になる。
* * *
「それでは、お部屋にご案内します」
沙織と佐伯が、それぞれ客を振り分けていく。
館は、南北に長く伸びた構造になっており、客室は二階の両翼に配置されていた。
各部屋には、それぞれ違うテーマがあるという。
北側の部屋は「森」をイメージした落ち着いた内装、南側は「海」をモチーフにした開放的なデザイン。
「弁護士の白石さんには、南側の“蒼の間”をご用意しています」
沙織の言葉に従って、白石は二階への階段を上った。
階段は幅広で、踏み板はしっかりしているが、あえてかすかなきしみを残しているようだった。
静かな館内で、足音ときしみが、微妙に反響する。
「防音は、完璧というわけではないんですね」
白石が何気なく口にすると、沙織は少し首をかしげた。
「ええ。完全な無音って、落ち着かないでしょう?
ここはホテルではなく、“家”ですから。人の気配が、少しは感じられたほうがいい」
「なるほど」
白石は、廊下に並んだドアを眺めながら頷いた。
廊下の右側──南側には、それぞれ趣の違うドアが並んでいる。木材の色や取っ手のデザインが微妙に異なり、その上に嵌め込まれた小さな真鍮のプレートには、「蒼」「紺」「群青」など、青にまつわる漢字が刻まれていた。
「この部屋は、オーナーの真理子さんが一番気に入っている部屋なんですよ」
沙織は、廊下の突き当たり近くで立ち止まり、一枚のドアの前に鍵を差し込んだ。
プレートには、「蒼」とある。
「窓からの眺めが、一番いいものですから」
ドアを開けると、たしかに、息を呑むような風景が広がっていた。
* * *
部屋の奥一面が、床から天井までの大きな窓になっている。
そこから見えるのは、遮るもののない海と空。
さきほどまで灰色がかっていた空は、いまや低い雲に覆われ、鈍い鉛色を帯びていた。
しかし、海面にはそれでもかすかな光が射し、細かな波が銀色の鱗のようにきらめいている。
「……これは」
白石は、思わず窓に近づいた。
手を伸ばせば、そこに海風があるような錯覚すら覚える。
だが、窓の外はすぐに空中だ。
足もとの床から垂直に落ちる崖。十数メートル、いや、二十メートル以上はあるだろうか。
足もと近くまでガラスになっているため、立っていると、自分まで宙に浮いているような心地になる。
「お気をつけください」
沙織の声が、背後から飛んできた。
「その窓も、防風仕様ではありますが……あまり強く体重をかけられると、こちらとしては心臓に悪いです」
白石は、はっとして一歩退いた。
「すみません。つい見とれてしまって」
「いえ。初めてここに立った人は、皆さん同じ反応をされます。
そのために、この部屋を“蒼の間”と名づけたんでしょうね、姉は」
沙織は、控えめに笑った。
部屋の内装は、シンプルで統一感があった。
壁は白ではなく、ごく淡い青灰色。
ベッドカバーもクッションも、青から白へのグラデーションでまとめられている。
余計な装飾はなく、あるのは木の質感と布の手触りだけだ。
「落ち着きますね」
白石がそう言うと、沙織は少しだけ肩の力を抜いた。
「気に入っていただけたなら、よかったです。
なにか不便なことがあれば、遠慮なく言ってください。電波の入りは、あまりよくありませんが」
「仕事の電話は、今日は極力出ないつもりです」
白石は、鞄をベッド脇に置きながら言った。
「ここには、別の用件で来ていますから」
「ええ。存じています」
沙織は、その言葉に、ほんの一瞬だけ目を伏せた。
あなたは、ここでようやく、「白石が招かれた理由」が、単なるパーティーではないと確信する。
そして、その理由には「過去の事件」が絡んでいるのだろうと、推測する。
それは、ほぼ正しい。
ただし、あなたのその推測が「誰かの思惑通り」である可能性については、まだ考えなくていい。
* * *
簡単な部屋の説明を終えると、沙織はドアの前で振り返った。
「荷物をほどかれましたら、ホールのラウンジにお越しください。
夕食まではまだ時間がありますから、皆さん自由に館内を見て回ると思います」
「わかりました」
白石が頷くと、沙織は軽く会釈をして部屋を出ていった。
ドアが静かに閉まると、部屋の中は一気に静まり返った。
窓の外では風が唸り始めているが、その音もガラスを隔てると、遠い海鳴りのようにしか聞こえない。
かすかな雨粒がガラスを叩き、透明な筋を残して滑り落ちていく。
白石は、ベッド脇に用意されていた小さな机に腰を下ろし、鞄から一冊のノートを取り出した。
黒い表紙に、なにも書かれていないシンプルなものだ。
彼は、ゆっくりと表紙を開く。
最初のページには、すでにいくつかの箇条書きが並んでいた。
- 羽鳴館オーナー・羽鳴真理子(四十代前半)
- 妹・羽鳴沙織(会計担当・実務)
- 羽鳴家と羽鳴島の歴史(先祖代々の地権者?)
- 数年前の「ある事故」──詳細不明
- 依頼内容:「真相の確認」?
白石は、ノートの余白に、今日見聞きしたことを追加していく。
- 管理人・佐伯一馬(島出身。無口)
- 出資者・久住晴臣(実業家。ビジネス志向)
- 週刊誌編集者・三枝ののか(取材目的。好奇心旺盛)
- ミステリ作家・赤瀬悠斗(新作執筆合宿?)+妹・沙耶(現実的)
ペン先が、紙の上で静かな音を立てる。
「……さて」
書き終えたところで、白石はペンを置いた。
彼は、ノートの端に小さな欄を作り、「リスク」と書き込む。
その下に、思いつくままに箇条書きを足していく。
- 島の地理:悪天候時の孤立
- 羽鳴館の構造:崖上、窓、テラス、屋上
- 島民との関係:不明(羽鳴家への感情)
- 過去の「事故」:再燃リスク
あなたは、ここで初めて、「弁護士としての彼」が仕事のモードに入ったことを知る。
白石は、事件を「解く」ためだけにここにいるわけではない。
彼は、依頼人の法的リスクを洗い出し、可能ならばそれを最小化するためにここにいる。
つまり、このノートは──
のちに、あなたが読むことになる「記録」の、ひとつの原型でもある。
* * *
コンコン、とドアがノックされた。
白石が返事をすると、ドアが少しだけ開き、沙織が顔をのぞかせた。
先ほどよりも、わずかに硬い表情をしている。
「白石さん。少し、お時間よろしいでしょうか」
「ええ、もちろん」
沙織は中に入り、ドアを静かに閉めた。
窓の外で、風が少し強くなったようだった。
ガラスに打ちつける雨粒の音が、さっきよりわずかに大きく聞こえる。
「改めて、来てくださってありがとうございます」
軽い礼の言葉のあと、沙織は一呼吸置いてから、本題に入った。
「姉から、依頼の件は伺っていますか?」
白石は、頷いた。
「大枠だけは。数年前、この島で起きた“事故”について、でしょうか。
その“本当のところ”を、確認してほしいと」
「ええ」
沙織は視線を窓の外に向けた。
海は、さきほどよりずっと暗く見える。
雲が厚くなり、水平線との境界が曖昧になっている。
「三年前──正確には三年と少し前。この島で、一人の人間が死にました。
警察の記録では、“不慮の事故”ということになっています」
「しかし、あなた方はそうは思っていない」
白石は、彼女の言葉の先を継いだ。
沙織は、小さく頷いた。
「姉は、“あれは事故ではない”と思っています。
でも、わたしは……正直、わからないんです」
「わからない?」
「ええ。あのとき、現場に居合わせたのは、島の人間だけでした。
警察も来ましたし、捜査も行われました。でも、すべてが“島の中”で完結してしまった。
だから、誰もが、自分の見たいようにしか、あの出来事を見ていない」
沙織は、白石のほうを振り向いた。
「だからこそ、外の目が必要だと。姉はそう言いました。
島にも、この館にも、直接の利害関係を持たない人に、“あの日の真相”を見てもらいたいと」
「しかし、僕は完全な“第三者”というわけではない」
白石は、穏やかに言った。
「羽鳴家から正式に依頼を受け、報酬を得る立場です。
それでもよろしいのですか」
「はい」
沙織は、きっぱりと頷いた。
「わたしたちは、自分たちだけの目で“真実”を決めてしまうのが、怖いんです。
姉は、あのときからずっと、“誰かに答えを言ってほしい”と思っている。
たとえそれが、姉にとって、つらい答えだったとしても」
「……なるほど」
白石は、ペンを取り上げ、ノートに一行書き加えた。
- 羽鳴姉妹:真相を外部に委ねたい?
「依頼料の話は、すでに伺っています」
白石は、視線を沙織に戻した。
「僕は、依頼人の利益を守るのが仕事です。
ただし、“真実”が必ずしも依頼人にとって都合のいいものであるとは限らない。
それでも、よろしいですね?」
沙織は、短く笑った。
「弁護士さんって、本当にドラマに出てくるみたいなことを言うんですね」
「ドラマほど、派手なことはできませんよ。現実には」
「……そうでしょうね」
沙織は、わずかに目を伏せた。
あなたは、ここで「過去の事件」の存在をはっきりと認識する。
この物語には、すでに一つの死が横たわっている。
これから起こるであろう新たな死は、その延長線上にある。
ただし、あなたが誤解しないように言っておくと──
あなたがこれから読む殺人事件は、「二度目」ではない。
あなたにとっては、初めてでも。
この物語にとっては、繰り返しなのだ。
* * *
「今夜は、ただの顔合わせです」
沙織は、ドアノブに手をかけながら言った。
「でも、明日の夜には、姉が皆さんの前で“ある発表”をするつもりです。
それは、おそらく、この館のあり方も、島のこれからも、大きく変えてしまうような内容になる」
「ある発表?」
「ええ。まだ、詳しくは」
沙織は首を振った。
「だから、白石さん。どうか、それまでに──」
そこで、彼女は言葉を切った。
唇が、言いかけた言葉を、ぎりぎりのところで飲み込む。
「いえ。やっぱり、今はやめておきます。
わたしがここで余計なことを言うと、あなたの“目”を曇らせてしまうかもしれない」
白石は、彼女の迷いを静かに受け止めた。
「わかりました。僕は、見たものを見たとおりに受け取り、聞いたことを聞いたとおりに記録します。
それ以上のことは、まだ約束できません」
「それで十分です」
沙織は、深く頭を下げた。
「夕食は、七時からダイニングで。館内の見学はご自由に。
ただし、地下の設備室と、屋上には出ないでください。安全上の理由で」
「安全上?」
「ええ。あの……本当に、安全上の理由です」
その言い方に、白石はわずかな引っかかりを覚えた。
しかし、今はそれ以上追及しなかった。
追及すべきことは、他にも山ほどある。
「承知しました」
「では、後ほど」
沙織はそう言い残し、部屋を出ていった。
ドアが閉まると、部屋の中に、再び雨音だけが残った。
* * *
あなたは、ここまでの情報を整理しようとするだろう。
登場人物、舞台、過去の事件、そしてこれから予告される「ある発表」。
どれも、ミステリの物語装置としては、よくできたパーツだ。
だから、ひとまず素直に楽しんでいていい。
白石の目を通して、羽鳴館の構造を見て回り、登場人物たちの会話に耳を傾け、
「あの人は怪しい」「この人は動機がありそうだ」と、あなたなりの推理を組み立てればいい。
──その推理のすべてが、あとになって「あなた自身の供述」として裏返されることを、今はまだ知らないまま。
* * *
ドアノブに手をかけたところで、白石はふと立ち止まった。
もう一度、机の上のノートに目を向ける。
開いたままのページに、ペンを走らせる。
備考:
・窓ガラス、防風仕様(しかし落下の可能性あり)
・崖上の坂道、滑落の危険。裏道も存在?
・地下設備室、屋上──立入禁止(理由不明)
書き終えると、彼はノートを閉じた。
黒い表紙が、静かに現実を覆い隠す。
そのノートに書かれた言葉のいくつかは、のちに決定的な意味を持つ。
そしていくつかは、あなたが真相から目をそらすための「囮」になる。
あなたは、ページの上に並んだ文字列を、ただの情報として読み飛ばすかもしれない。
しかし、そこで選び取られた言葉の一つひとつが、
「誰か」が自分にとって都合のいい物語を紡ぐために、綿密に選んだ結果であることを、覚えておいてほしい。
* * *
白石が部屋を出るころ、館内には、ほのかな生活音が満ち始めていた。
廊下の向こうからは、誰かの笑い声がかすかに聞こえ、
階下のキッチンからは、包丁がまな板を叩くリズミカルな音が響いてくる。
ラウンジをのぞくと、暖炉にはまだ火は入っていないが、ソファにはすでに人影があった。
久住が足を組んで雑誌をめくり、真理子は窓の外を見ている。
三枝は、ラウンジから続く回廊に興味津々といった様子でカメラを向け、
赤瀬兄妹は、備え付けの本棚を覗き込みながら、何かひそひそと話し合っている。
あなたなら、どこから覗きたいだろうか。
ダイニングでくつろぐ久住と真理子の、金と理想の話だろうか。
館内を探索しながら写真を撮りまくる三枝の、職業病じみた好奇心だろうか。
あるいは、自室で原稿を前に頭を抱える赤瀬悠斗と、それを叱咤する沙耶のやりとりか。
どれでも、かまわない。
あなたがどの順番で、誰を“視る”かによって、この物語の受け取り方は、少しずつ変わっていく。
変わっていきながら、しかし、最終的には同じ場所に辿り着く。
──あなたが犯人である、という一点に。
そのことを、まだ信じられないとしても。
それはむしろ、当然の反応だ。
なにしろ今のあなたは、ただの「読者」にすぎないのだから。
供述小説 やです。 @ya2423
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