推しヒロインの死亡ルートを回避するため、悪役キャラに徹します

みつば

プロローグ

 ある日、目を覚ますと――

 僕は死ぬ直前までプレイしていた

 学園恋愛ゲーム『学園ラブコレクション』、

 通称“ラブコレ”の世界に転生していた。


 最初から、確信に迫るような出来事があったわけじゃない。

 学校の名前や教室の配置。

 そうした些細な違和感に、

 何度かデジャブのようなものを覚えただけだった。


 それだけなら、

 まだ「偶然」だと言い聞かせることもできた。


 僕が本当に確信に至ったのは、

 ゲームの主人公をこの目で見た時だ。


 彼の姿を見た瞬間、

 胸の奥に沈んでいた前世の記憶が、

 一気に蘇った。


 ――間違いない。


 ここは、

 僕が死ぬ直前まで遊んでいた、

 『学園ラブコレクション』の世界だ。


 そしてこのゲームは、

 ヒロインたちが救われる結末がひとつも存在しない、

 いわゆる“鬱ゲー”と呼ばれる作品だった。


 だが――考えたことがある。

 もしかしたら、

 ヒロインたちを救う方法があるんじゃないかと。


 僕は生前、ラブコレを……自慢じゃないが、

 何百、何千時間とプレイしていた。

「どこかに、ヒロインたちが幸せになれる

 “隠しルート”があるんじゃないか」

 そう思い続けていたからだ。


 なぜ、このゲームには

 救いのエンディングがひとつもないのか。

 どうして、誰も報われないのか。


 あまりに納得がいかなくて、

 ラブコレの開発会社に

 直接問い合わせたことすらある。


 それくらい――

 僕はこのゲームのヒロインたちが、大好きだった。


 だからこそ、

 理解してしまった。


 開発者たちは最初から、

 ヒロインが傷つく物語を

 プレイヤーに見せるためだけに、

 このゲームを作っているのだと。


 ――恐らくだが。


 運営は話題性を重視していた。

 救いのない展開。

 後味の悪い結末。

「こんな終わり方はないだろう」と

 語られること自体を、

 狙っていたのだ。


 だが、

 たかが一般人にできることなど何もなく、

 ゲームをプレイするだけでは、

 ヒロインたちを救うことはできなかった。


 ――だが、今は違う。


 なぜなのかは分からないが、

 僕はラブコレの世界に転生してしまった。


 僕の大好きな彼女たちが、

 最初から悲惨な運命を背負わされているなんて、

 そんなこと、どうしても許せない。


 だから――

 たとえ彼女たちから嫌われようとも、

 僕は絶対に、彼女たちを救ってみせる。


 そう、心に誓った。

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