第5話 前編 不可解なダンジョン


昨日、ステータスがカンストしていたという事実や自分が初代勇者の末裔であったことなどを聞かされ「さあ、旅に出よう!」となった訳だが...


「このスキルってどうやって使うの?」


「そこからですか...」


そう、技術が無かった。

考えると当たり前の話ではあるが、元々スズメの涙ほどの実力だった者がいきなりこの世界の覇者といった存在になった所で、何が出来るんだよ。という話であり、フウトもその一例であった。


表示されているスキルは本で読んでいたものばかり。

どれも上級スキルだ。しかもレベルMAX。

元も子もない話であることは重々承知なのだが、使い方が分からなければもちろん戦うことも出来ないので、こういうことに関しては僕よりも知識が豊富なシモに頼って教えて貰っている。


「ここは、こうしてですね..ああ!違います!」


さっきからずっと教えて貰っているのだが、全く出来る気配がない。


教えている立場なのに、僕が出来なければ出来ないほど謝罪してくるのでいたたまれない気持ちにずっとなっている。


だいたい初代勇者の末裔ならこんぐらいすぐ出来るようになって欲しいものだな、と自分の事を言う。


「はあ、早く覚えられないかなー...」


「それは、フウトさんの練習し...」


『スキル発動:スキル生成』

『即時習得を新たに習得しました』


『え?』


口を両者ぽかんと開けて表示されている新たに加わったと考えられる見たことも聞いたこともないスキルに釘付けだ。


「な、なんとも便利なものだね...」


「私の努力はあああああ...!!!」


「いやごめんって!!」


この後シモを宥めるのには少々時間を要した。


ともかく、このスキルを新たに習得したことで体から何かエネルギーを感じるようになった。

何とも言えないこの感じ。

体が疼くようだ。動かしたくてたまらない。



そうやって色々な技術を習得したのが昨日の夜


今日から本当の旅が始まる。



「さあ行こう、シモ。準備はいいかな?」


「はい!フウトさん!どこへでも行きましょう!」


「スキル発動、転移!」


詠唱を唱えたと同時に目の前が光に包まれて

ダンジョンへと移動した。


「ここがダンジョンか...」


勇者時代はステータスなどの問題からダンジョンには参加することが出来なかったので、初めて見る。


「こんにちはー!お二人で潜られますか?」


「はい、お、お願いします...」


少々人見知り気味のシモだが挨拶をして、2人分のカードを渡す。


「はい、ではシモ様とフウト様ですね..

えーと、ステータスは、、、」


「あ!ありがとうございましたあ!!」


すいません、と言ってカードを奪う形になってしまったがとりあえずダンジョンに入り込む事が出来た。


まああんな数値は容易に見られていいものではないからね。


「スキル、暗視」


頭の中に空間の情報が入ってくる。

おおよその個体値や数。

明確に伝わってくるのだが...


「おかしいな、シモ。このダンジョンの階級は?」


「えーと、推定ランクCになってますね」


「ありがとう」


推定ランクCであればそこまで強い幻魔は出現しない。

せいぜいケルベロスぐらいだ。


だが、少し異様な気配を感じる。

他のものよりも頭3つ抜けたような。


一応暗視スキルは上級のはずだが、明確な情報が入ってこない。こんなのは初めて。


「少し急ごうシモ。嫌な予感がする」













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勇者諦めて村人になったら最強になった件について/みゐ みゐ/なのむ @Yassu1216

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