後遺症について 序


 しかし成功ばかりではなかった。こればかりは、先にこうなることを予想していなかった私の失態だ。貧乏ゆすりみたいに体に悪いクセがついてしまうように、人間は繰り返していれば思考にもクセがつく。


 卑屈なマイナス思考を続けていれば、やがて自分の本心すらマイナスに引きずられていくように。この世をクソと断じてそればかり考えている奴の視界に映るものが、全てクソに塗りつぶされていくように。


 思考はある程度、自らコントロールすることができる。


 やはりマザーテレサは正しかったのだ。

 まぁ、つまりなんだ。



 …………「おっぱい」が習慣化しすぎた。



 はは、ねぇー、ヤバいよねー(語彙力の低下)

 字面にすると面白いが、事態はわりと深刻だった。


 思考の隙間すきまに「おっぱい」が潜り込んでくるのだ。


「はぁ、今日の天気は『おっぱい』だなぁ」

 というように。


 あたかも、どの単語を入力しようとしても必ず「おっぱい」が予測変換に上がってくるかのような。


 以前は日の3分の1を暗いぐるぐる思考に支配されていたが、今は日の3分の1おっぱいという単語に脳を支配された人間になってしまった。


 アカンやん。いかにおっぱいに性的興奮を覚えないからって、これは人としてアカンやん? だって物憂げに黙り込んでる奴の頭を覗いたら「おっぱい」が飛び交ってんですよ? 客観的に見て変態以外の何者でもないんよ。


 とはいえ、ぐるぐる思考は止められるようになったので思考は健全になった。過去が自分の生活から切り離され、悩まされることも少なくなった。


 そうやって、この時の私は楽観視していた。

 すでに薄っすらと胸騒ぎがしていたというのに、成果だけに目がくらみ、ある可能性から目を逸らしてしまった。


 後に顕在化する後遺症は、これだけではなかったのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぐるぐる思考を止めるあまりにも下らない数多ある方法の一 まじりモコ @maziri-moco

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ