ヤバい病
夕日ゆうや
ヤバい話。
――ヤバいヤバいと言っていると、将来的に人類が滅びる可能性があります。
記者会見は一気にざわめきだつ。
「どうして、人類は滅びるのでしょうか?」
一人の果敢な記者が手を挙げる。
「はい。これからゆっくりと時間をかけてヤバい話をしますね」
「は、はい……!」
気を引き締めて記者がごくりと生唾を飲み下す。
「あなたたちは仕事をしていますよね?」
「そりゃもう……!」
笑いが一気に吹き出す。
記者の仕事はみんなに真実を伝えること。
ならこのヤバい状況を伝えなくちゃいけない。
その気持ちが真面目な返しになった。
「その仕事、誰に教わりましたか?」
「上司、です……」
何を当たり前のことを、と記者集団は鼻で笑う。
「その上司の仕事全てを理解していますか?」
「え? あ、いや……それは……」
戸惑いの声が大きくなる。
ここで理解できていないと言えば、上司から失望されるかもしれない。
そんなヤバい感情が湧いているのかもしれない。
「失礼。少し意地悪でしたね」
研究者はこほんと咳払いをし、話を戻す。
ホッとした様子の記者。
「つまりですね。世代が進むにつれて人は何かしらを失っていくものです」
上司の仕事を80%理解し、その次の後輩には60%伝わる、と。
「そうなっていくと、人はどんどん力を失っていくでしょう」
「力を失うとは具体的に何でしょう? 経済力? 知恵? それとも……暴力ですか?」
記者団から茶化すような声が湧き上がる。
失笑をする者もいる。
「そうです。でももっと恐ろしいものを失います」
「……それがヤバいとどう関係が?」
一人の記者がヤバい顔をしている。
「ヤバい一つで全てを済ませるようになった人類は、言葉を失い、情報伝達を失います」
再び記者団に緊張が走る。
「つまり、我々記者団が、ヤバいと使っているのも……?」
「そうです。ヤバいばかりを使い誤魔化していると、すべてヤバいで済ませるようになる――つまりヤバい病の発症です」
「ヤバいな」
「ヤバいっすね」
「そういえば、お前、ヤバいしか言わないな」
記者団が騒ぎ出す。
「か、解決方法は?」
一人の勇者が手を怖ず怖ずと挙げる。
私はしめしめと顔を歪める。
「読書をしましょう♪ まずはこのカクヨムコン11に応募している作品から――」
ヤバい病 夕日ゆうや @PT03wing
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