死んで転生したら自作最強メイドNPC達と共に異世界攻略やろうとしたらゲームと全く違う世界線でした。

山田孝彦/ダーヤマ・タカヒコ

第一章 初めての転生……悪徳貴族と対峙……序盤は上場ですね?

第一話 プロローグご奉仕致します。

 20XX年……人類は何事もなく平和に暮らしている。僕、『山崎春馬』はいつも通り満員電車に乗ると会社へ出勤する。

 相変わらず中はギュウギュウで安らぎはない。不思議と息苦しい空間は20分もすれば解放される。

 電車の扉が開くと前の人から順に漏れた水のように出ていく、僕はその水の一部であり後に続いていくのだ。


 会社は最寄駅から徒歩5分で着く、立地は良い。

 会社のビルへ入り自分の担当する部署へ入る、そこで席について朝礼をしてディスクワークを黙々とするだけの通常業務。

「はぁー終わった……。午前がね……。」

「そう言ってくれるなよ、気が滅入る。」

 隣の席には友人がいる、彼と共にお昼へ直行……場所は牛丼屋。

 

 中に入れば、まぁ混んでる。お昼時特有の現象はいつもの事だ。

「なぁ、ハル?いつも牛丼ばっかで飽きないの?時にはカレーだって美味いもんだぞ?」

「……ん?なんて言った?」

「まーた、ゲームやってんの?ご飯の時ぐらい手を止めなさい。」

「悪かったって。」

 スマホをテーブルの上に置き残った飯をかき込む、そしてまたスマホに手をつける。

「ハルはそのゲーム飽きないの?何年やってんだよ……俺も昔はやってたけどプレイヤーの減少でワイワイやれないのに。」

「確かに前よりも結構減ったよ、発売当初は人気やばかったのに……。」

「その会社も必死だろうよ、新規ユーザ獲得のためにスマホにも媒体を適用させてさ……ラグいの何のって……。」

 彼も以前はこのゲームのプレイヤーだった、仕事が定着してくと同時に疎遠になっていく。今の時代珍しい話じゃない、彼自身もゲーマーだったけど新しいソフトを買っては積んでいる、所謂積みゲー……なんでこう、昔は遊べていたのに手をつける事が難しくなるのだろう……。

「やべ、ハル!時間!」

「え、もう?!」

 時間を忘れ没頭していた、店を出て再び会社に戻る。


 午後の業務も同じくディスクワーク、肩が痛い。

「部長、書類できました。」

「春馬君、ご苦労ね。あとこれもやっといて、残業代も出るし何より明日は君休みでしょ?若い内に稼いどきなさい。」

「は、はい……。」

 悪いけど僕は残業万歳の人間じゃない、拘束時間が長ければ長いほど頭がおかしくなるタイプの人間だ。今日は13時間勤務か……人間の活動時間は13時間らしいぞ、帰って寝るだけだ……はは……。

 自分の席に戻り言われた通りに仕事を始める。

「おい、大丈夫か?」

 友人が小声で話す。

「まぁ、仕方ないよ。働いてるんだからさ……。」

 本当にその一言に尽きると思う。頑張って働いて納税して、社会を回す国民の一人なのだから。


 ずっと座ってパソコンと対峙する、タイピングの音はいずれ聞こえなくなりコーヒーは水より美味い飲み物になっていく。

「こ、これで……最後……。」

 最後にエンターキーを押して解放されると周りに誰もいなかった。

 携帯を確認するとメッセージで『戸締りよろしく。』とだけ書かれていた。

「チェリアアアアアアアアアアア!!」

 最後の戸締りという仕事をして駅に直行する。


 終電の電車の席は午前と比べて少なかった。若い子が多い気がするな……。終電の電車ほどサラリーマンはあまり見ない。皆んなはどうだ?


 電車が目的地に着き自分の住むマンションまで歩く、玄関を前にし鍵を差し込み開く、スーツを脱ぐ。いつもならコンビニで何か買って食べるが、明日は休みなので食べない。着替えも後で良い、椅子に座り家庭用ゲーム機を起動、コントローラを握り機動を確認。やりたいソフトを選んでスタートボタン……ここからは僕だけの時間になる。やる気は後からついてくる、疲れている時でも一度手をつければ集中は出来るもんだと思う。


 起動したゲームは『フリーダム・オーバー・オンライン』というMMORPG……このゲームの最大の売りはバリエーション豊かなキャラクタークリエイト、最近のゲームはキャラクリのレベルが高いがこのゲームは他と違った……最初の種族選択の時点で選び切れないほどの種族数を誇る。獣人を選んでもそこから派生が多くある、例えば犬の獣人『ドッグリア』ネコだと『キャットリア』他にも『カウート』『イナテール』など何かの動物を彷彿させる選択が可能、獣人以外にも定番であるエルフやオーガだって存在する、モンスターにだってなれるんだ。

 この入り口の部分で心を掴まれたプレイヤーが多くいたが同時に面倒だと思う方も少なくは無かった……だが、この種族選びで今後の攻略は変わってくる、パラメータが変わるのだ。それぞれの必要経験値も違うし覚える職業の向き不向きも関わってくる。何より職業も膨大だ、とにかくこのゲームは細かかった。それがハマるプレイヤーもいたがとにかく『くどい』のが原因で賛否が別れている。そして、このゲームが多くのプレイヤー減少に落ち入れた最大要素がNPCの存在なのだ。

 NPCごときでプレイヤーが離れるか?そう思う人が過半数だろう、本来ゲームのNPCは話しかけてクエスト発生だったり。武器の商人だとか、密接な関わり方はしない……だが、このゲーム……プレイヤー自身でNPCを作れてしまう。

 これがプレイヤー減少に繋がる、NPCはキャラクリ同様に限りない自由がある。自分だけのキャラを作ってパーティに組み込むことが可能なのだ。

 これが原因でMMORPGの最大の醍醐味でもある他プレイヤーとの交流が薄れていったのだ、自分の都合の良いパーティ、仲間を作り自分の世界に入り込むプレイヤーが続出、MMOを好きでやる人間からしてみれば『コレじゃない感』に駆られる。完全にソロプレイな感じに陥るMMORPGが誕生してしまった。

 もう一つ他の原因がある、長くプレイしていれば色々なアイテムや装備に巡り合うだろう。転生石というものがありそれを使うとキャラクリにはない種族が選べる、『神』とか『堕天使』とか……必要経験値が最初から多いのがネックだがレベル1時点でかなりの強さを誇る。これがバランスブレイカーだった。

 こんなものを引き連れて冒険しプレイヤー同士の戦いが発生するとレベルカンスト状態でもこの種族のせいでNPCがプレイヤーをPKする事例が発生した。

 つまりプレイヤーですら勝てない存在が出てくる、勝つためには己に転生石を使いその種族になったり、余程腕に自信がある化け物みたいなプレイヤーになる他ないのだ。

 これがこのゲームの主な特徴である。


「ぐへへへへ……。今日も可愛いねぇ……。」

 今日も今日とでこのゲームを遊ぶ訳だが、僕の作ったNPCは全てメイドであり女性……まぁ、ハーレムっていうやつですよ。

「とりあえず、NPCのレベル上げるか……素材集めも一緒にやって屋敷を増設しなくては……明日が休みでサイコー。」

 そんな具合で朝日が昇るまでゲームに没頭した。これが唯一の癒し、MMOとか敷居が高いし他のプレイヤーとあまり干渉しないでプレイしてみたかった、唯一このゲームが自分のペースでやれる最高のゲーム。仲間も自分で作れるし、MMOの味こそしないが僕のような一人で黙々系の人間には最高なのかもしれない……。


 

 ——首の辺りに激痛が走る……寝落ちしたか……てか、何時だよ……。

「ん……?」

 目を開けるとゲーム機はスリープモードに入っている。

「まぁ、休みだし……もう一度寝てやりますかぁ。」

 スマホを手に取りメールやら連絡が来てないかチェックする。

「通知一件……会社……まさか……。」

 『ごめんけど代わりに出てくれない?』との事、差出人は全く話した事のない同僚だ。

「これ、大事なプロジェクト……出席しないとヤバイって……。」

 幸い時間はある、シャワー浴びて歯磨いて、スーツを着て外出。飯は後でで良い。

「あぁ〜俺のハーレムライフ……何でこんな……。」

『6番線、電車が参ります。』

 はぁ……今日も頑張りますか……。

 満員電車を考えてボケっとしていると悲鳴が上がる。

「キャああああああああああ!!」

 ざわざわと人がその場所に集中する。

 なんだ?

 人混みを掻き分けて集中している場所を見る。

 線路に人が倒れていた、普通の男性社会人のようだが。

 続々と人が集まり、二、三人が線路に降り担いでホームへ上げる。電車はまだ来そうにない。

 

「に……荷物は?」

 倒れていた社会人の男性は意識があるようで周りを見渡す。

「あれを……」

 指を指されたところは丁度自分の下……鞄がある……距離が離れてるのに何故?

 本来であれば駅員さんが来て長い棒を使って取ってくれるのだが、空腹そして出来心と寝不足のせいで体が勝手に降りてしまった。

「おい、にぃちゃん。あぶねーぞ。」

「大丈夫ですよ、これぐらい。」

 近くにいた中年のサラリーマンに心配された、まぁ普通はそうだよな……。

 鞄を拾いホームへ上げる。

「手ェ掴まりな。」

「ありがとうございます。」

 その手を掴みホームへ登ろうとするとトラブルが起きる。

「ん、あれ?」

 線路の間に挟まったのか?そこから何故か上がれない。

「どうした?!早く上がれ?!」

 中年のサラリーマンが顔を真っ青にして心配する。

「足が!何かに挟まって!」

「おい!早く駅員呼べって!」

 周りがさらに騒々しくなる。駅員を呼びに走る人もいればスマホカメラでこちらを撮る人間だっている。

 でも、僕はそんなモノ気にはしなかった。何よりも電車がそこまで迫ってきているという事実が優先される。

「ああ、クソ!」

 こんな、死に方あんまりだ!寝不足で気だるかったけどそんな要素は既に吹き飛んでいた。

「にぃちゃん!急げ!もう……」

 電車が減速しない……なぜだ!?どんな確率だよ!

 訳の分からない感情の波が押し寄せ、自分の死を悟り始める。

「だあああああああああああああああああああ!!」

 この時全てが変わった、僕は肉片になったという事実を確認しないまま明らかな死を受け入れた。


 第二話へ続く……。

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