生まれ変わったら
J.D
生まれ変わったら
俺は、生まれ変わったら女になりたいのです。
それは、最近何かと話題にあがる、トランスジェンダーとはまた別で、俺は、男として生きることに疲れました。
俺の家庭は、どこにでもある一般的な家ではあったのですが、その実歪な家でした。まず、俺の父は、俺に散々暴力を振るったり暴言を吐いてきました。
酒が回っていたのではありません、シラフでです。
母は、そんな俺を励ましたり、守ってはくれていましたが、いざ俺が
「警察に行きたい」
というと、
「そんなのに行ったって意味がないからやめなさい。それにあんたのそれで、もしお父さんが仕事失ったら・・・ね?」
と言ってきました。
こんなのなので、俺は今まで、窮屈な思いをして生きてきました。
こんな苦しい思いを紛らわす手段は、性に逃げることでした。
思い切り、自分の衝動と向き合い、何度も何度も一人で達する夜。
気持ち悪いと言われればそれまでですが、苦しくて涙を流した日も、俺は枕を抱きしめながら、静かに自分を慰めていました。
生産性のない、虚無な快楽。それだけが、俺の涙を拭ってくれました。
こんなとき、女性なら、きっと男性が慰めてくれるのでしょう。しかし、俺は男性。こんな姿を見られたら、誰からも
「気持ち悪い」
と罵倒されるでしょう。こんな女々しい男は、どこに行っても気持ち悪いものです。
・・・と書くと、炎上待ったナシなのでしょうが、事実でしょう?
・・・俺には、妹がいるのですが、妹は、俺とは違い、父から殴られたことがほとんどありません。多少の暴言も言われていましたが、俺のそれとは比較にならないくらい優しめでした。こういうところも、俺が女性になりたい理由でした。つまり、俺はある意味妹にあこがれていたのもあるのかもしれません。
ある日、俺はなんとなしに鏡を見ました。すると、意外と自分の顔は、可愛らしいのかも知れないと思うようになりました。
確かに、会う人会う人から、
「可愛い顔してるね」
とは言われていましたが、そんなのはお世辞だと聞き流していました。しかし、いざこうやって見ると、成る程女装などしたら意外とそれっぽくなるかもしれない。
と思うと同時に
「女に生まれてたら・・・・みんなに愛されてたのかな」
と思うようにもなりました。
男性に生まれて、いくら顔が可愛くたって、愛されはしないのです。
俺は、元々女性に生まれたかったわけではないのですが、少しずつ、女性に憧れるようになりました。
でも、先程も言った通り、別に俺は、所謂トランスジェンダーとは異なるので、今から性転換手術を受けたいとかではありません。
俺は、生まれ変わったら、女性になりたいのです。
力強い男性に、愛され守っていただきたいのです。
包みこんでくれる女性に、慰めてほしいのです。
しかし、男性にそれは許されません。勿論、どこでもそうではありませんが、やはり、弱音を吐くのは躊躇してしまう。
女性になりたいのです。か弱く、儚い女性に。
もう、痩せ我慢をするのはつかれたのです。
だから、俺は、この体を売ることにしました。
男性専用の売春で、俺は様々なおじさまと関係を持ちました。
・・・おじさま、パパたちは、俺を可愛がってくれました。それはそれは、小鳥のように、時には力強く、俺を求めてくれました。
俺は、満たされました。身も心も、すべて彼らに委ね、好きにされるが、愛と安心を与えてくれる彼ら。
あの、一人で慰める夜。
あの日感じた、孤独の快楽より、よっぽど、気持ちよく、幸福に満ちた絶頂を、味わうことができました。
パパの一人が言ってくれました。
「晴人くんは、可愛いね。愛してるよ、ずっと守ってあげる」
ああ、なんて嬉しい言葉なんだ・・・。
大好き。俺を、こんな醜く歪んだ俺を、愛してくれるパパたち。
ずっと、俺は女でいたいな。
俺は、色々なシチュエーションで、いろんな格好で、彼らと重ね合わせました。
彼らは、俺の頭を優しく撫でて、キスをしてくれます。
ああ・・・幸せ。
生まれ変わったら、女になりたいな。
生まれ変わったら J.D @kuraeharunoto
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