主要人物紹介

●水城 有沙（みずき ありさ）／72歳・主人公

元・食品会社の事務職。

10年に及ぶ夫の介護を一人で担い、看取りを経験。

夫の死後、同居していた義家族との関係が悪化し、家を出て老人ホームへ。

資産は夫の遺した不動産の一部のみで、それを売却して入居金を払った。

「どんな場所でも、静かに暮らせればいい」と思っていたが、即座にカースト最底辺へ。

優しさと頑固さの両方を持つが、人に踏みにじられると心が折れやすい。

美しいものに敏感で、花や音の変化で感情が揺れる繊細さを持つ。

カースト崩壊の中心となる“変革者”。

●宇津木 セイ（うつぎ せい）／89歳・元画家

若い頃は海外でも評価された女性画家。

晩年は家族に煙たがられ、ホームに預けられた。

認知症が進行しているが、時折驚くほど澄んだ言葉を発する“覚醒の瞬間”がある。

有沙をモデルにした絵を密かに描く。

老い・孤独・愛の意味を象徴する存在。

物語の“心”となる人物。

●久羅田 麗子（くらた れいこ）／80歳・上位カーストの女帝

大手ゼネコン創業家の生まれ。

若い頃から“自分は選ばれた側”として生きてきた。

一人息子は海外在住で冷淡。

カーストの頂点で君臨し、有沙を最底辺に追い落とす。

しかし内側は驚くほど脆く、老いと孤独への恐怖から他者を攻撃している。

終盤、有沙の言葉によって崩れ落ち、人間らしさを取り戻す。

●榊原 忠臣（さかきばら ただおみ）／85歳・元大学病院の外科教授

医師として絶対的なプライドを持ち、ホームでも“医療知識でマウント”を取る。

上位カーストの一員。

麗子とは表面だけの同志。

実は家族からは距離を置かれており、定期的に来る看護師の孫だけが心の支え。

有沙に対しては、強く当たりながらも途中から認識を改めるキャラクター。

●成宮 千賀子（なるみや ちかこ）／76歳・元宝飾店オーナー

華やかな見た目で、常にブランド物を身につけている。

カースト中位。

強い者についていく処世術に長け、麗子派筆頭の“取り巻き”。

しかし実際は非常に孤独で、何かにすがらずにはいられないタイプ。

有沙のコミュニティに揺れ動くキーパーソン。

●七尾 典正（ななお のりまさ）／90歳・元地方銀行会長

寡黙で温厚だが、カーストを黙認している。

食堂では「静かに誰かの皿だけを片付けてあげる」など、影の優しさを持つ。

老いと共に言葉が少なくなるが、最終話で有沙に重要な言葉を残す。

●梶山 慶（かじやま けい）／41歳・ホームスタッフ（介護士）

下っ端スタッフ。

カースト上位の入居者に気に入られれば昇給できるため、態度がブレる。

有沙には最初冷たいが、セイの一件をきっかけに心が揺らぎ始める。

終盤、有沙側につく。

●富樫 亜矢（とがし あや）／33歳・ホームの看護師

仕事熱心だが、上司に逆らえず優先順位を「偉い入居者」に合わせざるを得ない。

その中で有沙の誠実さに気づき、密かに支える。

華やかな世界に憧れるわけではなく、むしろ「老いの現実」から逃げない芯の強さを持つ。

●水城 夕也（みずき ゆうや）／45歳・有沙の義息子

夫の連れ子。

有沙を内心「財産目当て」と決めつけており、ほぼ絶縁状態。

物語序盤では不快な存在だが、終盤で価値観を揺さぶられる。

有沙と和解するか、しないかは読者の想像に委ねられる余白を持たせられる。

◆登場人物の役割構造図（簡易）

主人公側の光

　水城有沙

　宇津木セイ

　七尾典正

　梶山慶

　富樫亜矢

カースト側の影

　久羅田麗子（女帝）

　榊原忠臣

　成宮千賀子

境界線を揺れる人

　千賀子

　榊原

　梶山

外部からの現実

　義息子 夕也

　家族・スポンサー・来客たち