境界世界へ告ぐ

りりにき

第一話


辺り一面に広がる藍色。水面には白い雲のようなものがぼんやりと映っていた。

どこか張り詰めた空気、見たことのない景色。

ここはどこだ?

春季は、立ち上がって一面を見渡す。

どこまでも、何の変化もなく同じ風景が広がっていた。


「……なんだ、ここ」


そうして少し歩いていると、そんな異様な空間に一つの声が吹き抜ける。

誰だ?


「こんにちは、五条春季くん」


よく通る声の先。そこにいた一人の少女は、ガラスのような椅子に腰をかけていた。

風に揺れる水色のショートヘア。コスプレのような衣装を身に纏った眼前の少女は、こちらを見て微笑む。


「……え、えっと、なんで僕の名前を?」


僕がそう言うと、彼女は椅子から立ち上がった。


「うーんとね、女神だから」

「え?」


戸惑いを隠せない僕を見て、彼女は笑みを浮かべる。


「言葉の通り」

「………」


無論、全く理解していない。

異世界ファンタジーの真似事か。それともただの中二病なのか。どちらも同じようなものだろうと結論付ける。


「名乗り忘れてたね。私の名前はユキメ、よろしく」

「よろしくお願いします。聞きたいことがいろいろあるんですがここはどこなんですか」


彼女は少し悩んでから口を開いた。


境界世界コネクテッドワールド。君がいつも暮らしている世界に接続された世界。あるいは並行世界」


「なるほど……?で、これは夢なんでしょうか」

「その通りだよ…現実世界の春季くんはいつも通りベッドで寝ているってこと」


理解しようと試みるがやはり何もわからないままだった。おそらくこんな中二病みたいな設定を並べ立てられて完璧に理解できる人間なんてこの存在しないだろう。いたとしても、異世界とか。そこら辺のはずだ。


「でも、この世界は普段春季くんが見ている夢とは決定的に違う部分がある」

「えっと……その、具体的には?」

「見てればすぐにわかるはずだよ。じゃ、やるね」


彼女が拳を天に向けると、淡い光の粒子が中心に集まり始めた。粒子は渦を巻き、瞬く間に純白の剣へと結晶化する。その後、神々しい輝きを放つ『それ』を、彼女はなんの迷いもなく握りしめた。


「これから湧いてくる怪異達は、全て現実世界を具現化したもの。初めて見るかもだけど、怖がらなくていいよ」


そう言った途端、僕はユキメの背後から狼のようなものが襲いかかる瞬間を目に捉えた。


「あっ……!危ないです!!」


その瞬間、狼の首が宙を跳ねた。


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