第25話 スキエンティア降臨

第25話 スキエンティア降臨

(Descent of the Draco Magnificus Omnisciens)

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 ーーー闇雲に走って走って走って走って

走り続けた。


 プルーデンスは最愛の娘をその胸に抱え、遺跡の最奥を目指してひたすらに走っていた。


 『 アルテイシア……!!!!!! 』


 「おとうさん、あっち!」


 まるで、迷路のような遺跡の最深部を、幼いノエマがコンパスのように導いてくれている。


 それが、父プルーデンスには頼もしく、それと同時にアルテイシアの面影が娘と重なった。


 「っはあ……はあ。くっ……はあ……かはっ!」


 何度も立ち止まっては、また全力疾走でノエマの小さな指が差す方向へとひた走る。


 「こっち!……おとうさんついてきて!」


 「ノエマ……」


 父の胸から下りて一人歩き出した娘の姿を見て、熱いものが胸に込み上げて来る。


 それをしっかりと手放さないようにプルーデンスは先へと進んでいく。



 「ここは………」


 そこは、とうに滅びた『 超古代文明の遺跡 』内部の真の『 最奥であり超最深層 』


 『 龍の谷ウァリス・ドラコニス 』の神殿だった。


 「おとうさんわたしについてきて!」


 娘が僕の手を強く引っ張っている。


 「ああ。……行こう。ノエマ。」


 『アルテイシアが最後に言っていた、

[ この先にある、光のなかに入って ]とは……

ここのこと……なの……か?』


 「「………!!!」」


 底は真っ暗で見えないほどの『 巨大な穴 』が、超最深層全体に広がっている。


 そのちょうど中央部に位置する場所には、苔生した石で出来ている、『 白紫色に輝く光の祭壇 』の様な物が、不自然に宙に浮かんでいる。


 「しかし一体どうやって……あそこまで行けば……」


 「おおおーーーーーーい!!!」


 気付けば娘が大きな声で巨大な穴にむかって叫んでいた。


 「ノエマ?!……ここは一体……」


 とその時だったーー


 突如、風が下から突き上げるように巻き起こって、しゃがんでいたノエマの体を空中に浮かせる。


「うおおーーーっと!!!あぶない!!!」


 すんでのところで娘をスーパーナイスキャッチしたプルーデンスは、安堵する暇もなく先ほどの神殿の方を見上げて、言葉を失った。



 そこには、『 白銀色の光 』を放ちながら宙に羽ばたく『 大きな龍 』がいた。そして唐突に彼は、僕たち二人にこう言った。


  [ん?あれ?『 観測者 』は?]

 [ん〜〜〜?]


 [ずいぶん小っちゃい女の子がいる………]

 [あれがほんとに『 観測者 』なのかな……?]


 [やば!んんっ……]

 [良いかんじにかっこよく………]

 [『いい直さなきゃな。』]


 [ んんっ!………………… ]

 [……………………………]



 [ 我、この龍の谷に仕えし者 ]

 [名をスキエンティア=アンブリフェル

 ・オブスクルクス・ドラコニス]



 [『 偉大なる全知の龍 』]

 [人々はそう呼ぶ]



 [ 汝の希望のぞみを聞こう。]


 「ッ!!?」


 「スキエンティア!」

 ノエマは、龍の威光にも怯まずその言葉の先を堂々と言い放った。


 「わたしはノエマといいます!5才です!」


 「こちらは父のプルーデンスです!

まちでせんせいをしています!」


 「おねがいです。わたしたちを……

みらいのおかあさんのところまで

つれていってください……っ!!!」


 「ノエマ……」


 [『……!!』]

 [『なにこの子……』]

 [すごくかわいい!!]


 [『よし。そしたらぼくがすごくて

  カッコいい龍なんだぞってところを]


 [この翠緑の眼のかわいい女の子に

  見せてあげなきゃ、だな。』]



  [ ん、んん!……]


  [『 幼き観測者 』とその父よ]


  [汝の希望のぞみ我が

   しかと聞き入れようぞ………]


  [そして我が友人テネルクスとの約束を

   ここに果たすと固く誓おう]



  [ それじゃあ!じゃなくって……]

  [ 我の背に……二人とも乗ってくれ。 ]


 プルーデンスには言いたいこととや、ツッコミたい所は多々あったのだが、あえて言わずにそっと胸へとしまいこんで、その偉大なる龍の背にノエマを肩車して先に乗せた。


 「おとうさんも!ほら、わたしにつかまって!」

「んしょっ。……んんーーーっ!」


 「おっと。ノエマ。ありがとう……。」


  [それじゃ!しゅっぱーつ!……]

  [じゃなくて!!]

  [……神殿へとその希望のぞみ

   導こう。]


 そうして、無事?に二人を乗せた(かなり疑念は残っているが)『 大きな龍 』は強く羽ばたき、あっという間に中央に浮かぶ『 光の祭壇 』へと父とその娘をいざなったのであった。


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