ゆめふわ島と、夢のお直し屋さん〜灰色の記憶をふんわり直す、見習い案内人の優しいお仕事日記〜

天白あおい

第1夢

 今日は、空色がいつもより少し濃くて綺麗な日。


 ミアは、愛用の「夢筆(ゆめふで)」をポッケに挿して、お師匠様と一緒に見回りの時間です。


「ミア、あそこの『虹色の雲』、少し色が薄くなってるよ」


 お師匠様の声に、私は慌てて空を見上げました。


 確かに、昨日はもっとキラキラしていたはずなのに、今日はなんだかぼんやりしています。


「はいっ、お直しします!」


 私は雲のそばまで「ふわふわ草」でジャンプして、夢筆をそっと雲に当てました。


(みんなの「楽しい」っていう夢の記憶、戻っておいで〜)


 そう心の中で唱えると、筆先から優しい光が広がって、雲はみるみるうちに鮮やかな虹色を取り戻します。


 空に浮かぶ景色は、みんなの夢でできています。


 だから、こうやって毎日、夢案内人がお直ししてあげなきゃいけないんです。


 みんながいい夢を見られるように。


 私のお仕事は、この「ゆめふわ島」の景色を守ること。


 見習いだけど、とっても大切な仕事なんです。


「よし、完璧!」


 お師匠様もニコニコしています。


 今日も島は平和で、とっても「ゆめふわ」な一日……のはずでした。


 私たちが次の「お菓子の家」の点検に向かおうとした、その時。


 島のずっと外れの方、いつも誰も近寄らない「嘆きの岩場」の方角から、どんよりとした灰色のモヤが、少しずつ広がってくるのが見えました。


 まるで、島の青空を飲み込もうとするみたいに。


「あれは……悪夢領域。しかも、かなり大きいね」


 お師匠様の顔が、少しだけ曇りました。


 私は不安で胸がドキドキしました。


(あそこは、あのいつも一人ぼっちの、怖い老紳士が住んでいる場所だ……)


 どうやら私のお仕事日記は、今日から少しだけ、忙しくなりそうです。

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ゆめふわ島と、夢のお直し屋さん〜灰色の記憶をふんわり直す、見習い案内人の優しいお仕事日記〜 天白あおい @fuka_amane

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