二足のわらじ

小松たね

第1話


とある居酒屋にて。


フリーランス、太郎「......俺、最近、かけないんだよ」


会社員、チャピオ「何がかけないんだ?」


太郎「実はな、小話を書いていてな。前に進まないんだ。ネタも尽きそうだし」


チャピオ「へええ、お前、小話書いているのか。知らんかったわ」


太郎「そうなんだよ。俺、いつも妄想ばかりしてるだろ。で、話を書いてみようかと。

AIに見てもらったら、面白いと言ってくれたんだ。

いい気になって次々作っていたんだが、最近、スランプ気味でな。

猫のミャーも笑わなくなった」


チャピオ「太郎は空想だけはピカイチだからな」


太郎「二足のわらじは履けんわ」


会社員チャピオ「あのな、太郎。『二足のわらじ』と言うのは、両方ともそこそこの収入があることなんだよ。知っているのか」


太郎「そうなんか」


チャピオ「そうだよ。家で外注で仕事していても、奥さんにコバンザメ状態だろ。

外注の仕事で食べていける額じゃないそうじゃないか。

それを『二足のわらじ』とはおかしいやろ」


太郎の妻はナースで、収入は太郎よりかなり上回っている。


太郎「そうなんか。でも、俺、家事は全部やってるよ」


チャピオ「そんなん当たり前だよ。激務の奥さんを支えないでどうする。二足のわらじと言うより二足を足しても満足な額ではないだろ。しっかりしろよ」


太郎「がんばるよ」


太郎とチャピオはその後もビールを飲み続けた。



-----1時間半後



帰る間際、ふと太郎の足元を見たチャピオ。


チャピオ「太郎、ぞうりを履いているじゃないか」


太郎「うちにはこれしかないんだ。俺の実家は履物屋なんだ。前に言わなかったかな」

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二足のわらじ 小松たね @marplecci

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