「幸(さち)は、いつも私のそばにあった。」
- ★★★ Excellent!!!
この物語のいちばん素敵なところは、主人公の心が少しずつほどけていく様子が、とても静かで自然に描かれているところ。つらい出来事や雨の冷たさが丁寧に積み重ねられているからこそ、喫茶店の灯りやひだまりの温かさが、そっと胸にしみ込んでくる。世界が急に優しくなるわけじゃないのに、、主人公の見え方が変わることで、日常が少しずつ色を取り戻していく。その変化が押しつけがましくなく、読んでいる側までふっと息をつけるような、やわらかい余韻を残してくれる日だまりのような物語。