先読みスキルを手に入れた俺は、最初ですべてを解決しちゃいます

里坂 叶真

プロローグ

穏やかな町アインス


活気のあるその町のはずれにはアインボワと呼ばれる広大な森がある。

普段は落ち着いた森だが、時には魔物も出ることから町の人間はこの森に入るときは

ギルドで護衛を雇ってから森に入るというのが鉄則となっている。

頻度は少ないながらも、魔物に出会った際は普通の人ではとても太刀打ちできず

大けがをするものもいるし、行方不明となる者もいる。


その森の中、1人の青年が悠々と歩いていた。護衛もつけずにだ。

青年の目線は下に向いている。

「…あった」

と言い、青年は地面から薬草を掘り出した。


「もうすぐこの薬草が必要になるからな、今のうちに集めておかないと」

青年は黙々と同じ薬草を掘り起こし、持参した大袋に入れていく。

今回採取している薬草はさほど希少なものではない。

だが、アインボワの奥にしか生息しない種のため自然と森の奥へと進むこととなった。


そんな青年の後ろからうなり声がした

青年が振り返ると、魔物【グロボタリー】がいた

姿を現したその巨躯は、もはや獣というよりも、生命を宿した岩塊のようだった。

見た目からわかる膨大な質量、分厚い皮膚は年輪を刻んだ古木の樹皮のように硬い。

討伐された個体を解体しようしたら生半可な刃は通さなかったほどだ。

その毛は錆びた針金のようにごわついている。

最大の特徴は、口元から湾曲して突き出した一対の牙であった。

それは単なる歯ではなく、大きく長く伸び、先端は鉄をも穿つ鋭利さを持っている。


青年も【グロボタリー】との遭遇は初めてで一瞬、驚く。

その驚きを察したかのように【グロボタリー】はいきなり仕掛けてきた。

青年に突進していく。その巨体が青年にぶつかれば、ぶっ飛ばされることは必須だろう。その後に待ち受ける運命は想像に難くない。

だが、青年の驚きはすぐに消え去り、ただその突進を見据えていた。

そして、皮膚がかすめる極限の間合いで右に跳躍し、その突進を回避した

【グロボタリー】はそのまま青年の後ろの木にぶつかると、木をへし折り倒した。


【グロボタリー】はすぐさま青年に向きなおり、そのまま再度青年に突進を仕掛ける。

青年は先ほどと同じように皮膚がかすめる極限の間合いでよけていく。

1つでも間違いがあれば死ぬかもしれない状況の中で青年はどこか余裕の雰囲気があった。


同じやりとりを何回か重ねた後、【グロボタリー】は流石に疲れたのか、それか一旦様子を見ようとしたのか。

その突進をやめた。


それをみた青年は次の瞬間、【グロボタリー】の目の前にいた。

突然の出現に巨体の魔物は驚愕に身を硬直させた。

青年は無音の速さで【グロボタリー】を蹴り上げた。その威力が大きいのかその巨体がわずかに宙を舞う。

続けて、浮いた巨体に対してさらに上から足を振り下ろす。いわゆるかかと落としだ。

またその威力が大きいのか今度は激突した地面からバウンドし、また宙に放り出される。

今度は横から蹴りを一閃。その巨体は木々を何本かへしおり最後の木に激突した。


あたりには静寂が広がっていた。

木に激突した【グロボタリー】の体はもう動いていなかった。

「…生の【グロボタリー】をはじめてみたぜ、結構迫力あったな」

青年はその様子を確認すると、さらに森の奥へと歩みを進めた。

「さぁ、もう少し薬草を集めておきますか」

そうつぶやいて、日が傾くまで薬草採取を続けた。
















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