路上占い、あれこれ128【占い師は呆れる】

崔 梨遙(再)

後でまとめます、マジで。夜のコーヒー1413文字。

 僕が夜のミナミの路上で占い師をしていた時のお話です。



 あ、奴が来る・・・奴が来る・・・奴が来る・・・。

 スウェットの上下で奴が来る・・・オッサンだ。要注意人物のオッサンだ。

 おそらく50代。デブでハゲ。でも、親からビルを3つ譲り受けて、家賃収入でお金には困っていないというふざけたオッサンだ。オッサンは、また当たり前のように僕の目の前に座った。またキャバクラ帰りだろう。


『今日もこれで幾つか占ってくれや』


 その日、渡されたのは1万円。5千円の日もある。オッサンは立花という名前、以前もらった名刺に名前が書いてあった。下の名前は忘れた。オッサンは長居するし、幾つも占わせるので、僕がまともに占い師をやっていたなら5千円でも1万円でも足りない。僕が占いに関しては料金に無頓着なので成立しているのだ。


『今日は何を?』

『なあ、処女はおらんのか?』

『いるでしょうけど、誰が処女かは占ってみないと』

『あ、あの娘(こ)はどうや? 清純な感じがするけど』

『占いましょうか、はあ・・・・・・あ、処女かも』

『おお、処女がおったか!?』

『でも、占ってる間にどこかへいっちゃいましたけどね』

『占った意味が無いやないか!』

『あなたが占わせたんでしょうが!』

『ほな、キャバ嬢で二十歳の麗華ちゃんはどうかな?』

『はあ・・・(僕は何を占わされているんだろう?)あ、違うでしょうね、それどころか多分、彼氏がいると思いますよ』

『二十歳で処女じゃないって、経験が早いなぁ』

『そんなことはないでしょう』

『俺の初体験、25歳やったで』

『それは少々遅いのではないでしょうか?』

『そうかなぁ、まあ、ええわ。とりあえず、運転手と秘書がほしいんやけど。月給は50万出すから』

『以前、それで求人広告の営業の人を紹介しましたけど、立花さん、「愛人の秘書」と「愛人の運転手」を求めているらしいですね? 求人広告の営業さんから聞きましたよ。ダメですよ、秘書、運転手で募集して、「愛人になれ」なんて言ったら大問題ですよ。もう求人広告屋は紹介しません。それこそ、お気に入りのキャバ嬢にやらせたらいいじゃないですか』

『キャバ嬢に言うたけど、嫌やって言われたんや』

『なんで嫌なんでしょうね?』

『最低でも100万って言われたわ』

『じゃあ、100万出したらいいじゃないですか』

『いや、100万は高いやろ?』

『でも、愛人もやるんでしょ? そのくらいは求められるでしょう?』

『うーん、やっぱり50やな。それで、処女はどこにおるねん?』

『どこにいるか? と聞かれましても・・・・・・』

『お、あの娘はどうや? 清純派やで』

『占いましょうか・・・あ、もしかすると処女かも」

『おお、処女がおったか!?』

『でも、占ってる間にまたどこかへ行っちゃいましたけどね』

『占った意味が無いやないか』

『何度、同じことを繰り返すんですか?』

『ほな、たまには仕事の話をしようかな、今、ビルの運営や管理を任せてる奴がおるんやけど、こいつは信用してもええんか?』

『・・・・・・普通の人ですね。善人でも悪人でもない。今のところは大丈夫でしょう。とはいえ、人間ですからいつ変わるか? わかりませんが』

『あいつめ!』

『いやいや、今はおそらく大丈夫ですよ』

『今、気付いたんやけど』

『なんでしょう?』

『仕事のことを占ってもつまらんな』

『どういうことでしょう?』

『やっぱり女のことを占う方が楽しいなぁ』

『・・・・・・』



 そして、また奴が来る。


『処女はおらんかぁ?』




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路上占い、あれこれ128【占い師は呆れる】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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