第3話 妖怪譚 ―「かんからこん」
和光は夜の山道を歩いていた。すると、風に乗って「ん」の響きが連なり、五体の妖怪が現れる。
• かん ― 「感」の妖怪。人の心を過敏にし、喜びも悲しみも極端に増幅させる。
• きん ― 「禁」の妖怪。触れるものを封じ、自由を奪う。黄金の鎖をまとい、近づく者を縛る。
• くん ― 「訓」の妖怪。古い言葉を囁き、聞く者を古代の掟に従わせる。
• けん ― 「剣」の妖怪。鋭い影を持ち、争いを呼び寄せる。
• こん ― 「魂」の妖怪。人の精気を吸い取り、異界へと連れ去る。
和光は一体ずつ対峙しながら悟る。
「かん」から「こん」までの妖怪は、心・禁制・掟・争い・魂――人間の生を縛る五つの力の象徴だった。
最後に「こん」の妖怪が囁く。
「お前の魂も境界に溶けよ」
しかし和光は答える。
「魂は境界を越え、言葉の響きに還る」
その瞬間、五体の妖怪は「ん」という一つの響きに収束し、夜の闇へと消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます