(改) 〜 神様に「地球の神にならない?」と言われたので新米神様として頑張ります!? 〜
イナ
第1話 神様就任!?
いつも通りの放課後
いつも通りの通学路
いつも通り……のはずだった神様からの提案
……いや
(なんだ…今日だけは “いつも通り” じゃない気がする…)
そんな引っかかりを抱えながら、平凡な男子高校生・田中慎一の物語は静かに大きく外れ始めていた
いつも通りの時間に起床し
いつも通り母が作った朝ごはんを食べ
いつも通りリュックを背負って学校へ向かう
ただの繰り返し
ただの三年間
気がつけば高校三年の夏に入ろうとしていた
だが――
(…なんか変だな 今日)
胸の奥に変なざわつきだけがずっと残っていた
「はぁ…今日も授業終わったし、さっさと帰るか…」
教室で独り言を洩らしながら、部活へ向かう同級生、友達と笑い合う連中を横目に見る
それだけで胸が締め付けられるような感覚があった
(なんか…いたたまれないな 今日は)
そのまま急ぎ足で学校を出た
帰り道
いつもなら聞こえるはずの車の音、人の会話、工事の音
それらが――突然、全部消えた
「あれ…? 静かすぎないか…?」
そう呟いた瞬間、背筋に冷たい何かが触れた気がした
見渡しても、誰も、何もいない
車も、人も、犬猫すらいない
音が消えた
世界から“気配”が消えていた
(なにこれ…絶対に普通じゃない…)
そして
「――地球の神にならない?」
若い女性にも聞こえ
年老いた男性にも聞こえる
どの性別にも、どの年代にも当てはまらない声が
真後ろから、唐突に響いた
(……嘘だろ さっきまで誰もいなかったのに)
振り返りたくない
振り返ったら終わる
なのに振り返らずに逃げるほうがもっと危険だと本能が叫ぶ
恐る恐る、首を後ろへ向ける
そこに“誰か”がいた
いや、“誰か”という認識しかできない
男か女か
若いか老いているか
姿形の輪郭すら曖昧で、理解できない
ただ――絶対に人間ではない
それだけは分かった
俺が発せた言葉は一つだけだった
「……え?」
存在は笑ったような気配を漂わせた
「いや、だから地球の神にならない? 正確には、私の後任だけどね」
(……神? 後任? なに言ってんだこの人……いや、この“存在”)
理解を拒む頭を無理やり動かしながら、慎一は丁寧に口を開く
「すみません…いきなりで驚いてるんですけど、いくつか質問してもいいですか?」
普段敬語なんてほぼ使わないのに、自然と口調が丁寧になる
当たり前だ
この存在は、逆らってはいけない“何か”だ
「ああ、いいよ。私を見て発狂しないだけでかなり優秀だよ。素質ある子を選んだつもりだったけど、これなら安心だね」
(優秀…? いやいや、違う そんなつもりは…)
「まず一つ目…あなたは“神様”なんですか?」
「そうだよ。正確には、いくつもの世界を同時に管理してる上位神だね」
軽く言うのに、言葉の端に“宇宙”みたいな重みが乗っていた
(やっぱり…人じゃない…)
「では二つ目…どうして俺を地球の神に?」
「簡単だよ。私がたくさんの世界を管理してると忙しくてね。地球は誰かに任せようと思って探した。そして君は、最低限の素質を持ってる知的生命体の中から選んだ」
“知的生命体の中から”
その言葉だけで喉がつまる
(俺が断ったら…次は人間じゃない別の種族が担当になる…ってことか)
「最後に質問です。この提案を断った場合、罰とかは…?」
「特にないよ。でも、私と話した記憶は全部消える。最初から何もなかったみたいにね」
「………なるほど ありがとうございます 少し考えてもいいですか?」
「なるべく早くね。君がダメならすぐ別の候補に行くから」
考える、と言ったが
答えはほぼ最初から決まっていた
(…ここで断ったら、一生後悔するだろ…)
中二病的に「特別」に憧れた時期もあった
だが今、本物の“特別”が目の前にある
「……地球の神になるという提案、受けさせていただきます。よろしくお願いします」
存在は満足そうに頷いた
「よかった。一人目で決まって助かったよ。それじゃあ地球の管理方法を教えようか。と言っても簡単だよ。力を使えばいいだけだし」
そして語られる
“力の種”
“物語を脚色するように世界へ干渉する感覚”
“地球への直接介入は基本NGだが最終判断は慎一次第”
“人類を滅ぼすことも、砂漠を緑地にすることも容易い”
軽い口調なのに、内容がどれも規格外だった
慎一はただ必死に頷くしかなかった
(本当に…本当に俺は…神になるのか…)
説明を終えると、存在は最後に言った
「じゃあ、この世界は任せたよ。力が育てば私にも連絡できるようになる。あ、正確に言うと君は“地球”だけじゃなく“この世界全体の神”だから。他の惑星も余裕が出たらよろしくね。面白い星がたくさんあるから」
そう言うと
そこから“音もなく”消えた
気がつくと、街には人の気配が戻り
車も普通に走り
蝉の声すら聞こえていた
夢ではない
だが、現実感も薄い
慎一が最初に漏らした言葉は――
「……名前聞くの忘れた」
それだけだった
そしてその瞬間から
彼の日常は、確実に“普通ではなくなる”方向へ動き出した
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既存の作品を読みやすく改良したものです
前の話数に追いつくまでまで 8:00 12:00 15:00 20:00投稿します
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