感謝の魔女
小藤ゆか
第1話
この世界には、禁断の呪文がある。
決して口にしてはいけないその呪文は、
一切衆生を殺せてしまうというものだ。
どんなに強くても、
加護やらバフやらを盛り沢山にしても、
不死であるはずの存在でも、
構わず殺してしまえる呪文がある。
杖を対象に向けて、呪文を唱えるだけ。
な。簡単だろう?
と、思ったら大間違い。
その呪文がかなーり長くて、
唱え終わるまでに時間がかかる。
人間には口や声帯が1つずつしか無いから、
この必殺呪文を唱えている間は、
他の呪文を唱えることができない。
実戦には不向きなのだ。
存在は知られているけれど、
使い所がよく分からないし、
実際に使われることはまずない。
そしてここに、
この禁断の魔法に憧れている、
少しかわいそうな魔女が1人。
「mm...mmmm...魔女!n...nnnの私g...gggg...」
魔法を使いたい時にはまず、
精霊に向けて自分の名前を名乗る。
今から呪文を唱えますから、
聞いていてくださいねと合図を出す。
ところがこの魔女は、
詠唱前の名乗りすら満足にできない。
禁断の魔法は、呪文を途中で言い間違えたり、
最後まで一息で言い切れなかったりすると、
相手を幸せな気分にする呪文に変わる。
上手く言えていた部分が長くなるほど、
杖を向けていた相手の幸福度は高くなる。
殺したい相手を幸せにしちまうのさ。
この唖者の魔女の名前は、カタシェ。
そして彼女が禁断の呪文を唱え切ることは、
未来永劫、不可能だ。かわいそうに。
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