美人投票で読む投資心理 ケインズで市場を語る
## ■1 爺さん、株価にキレる
爺さん
「まったく……最近の株価はわけがわからん!
業績も伴っていないのに上がったり下がったり……」
ユダヤ人
「暴落は嫌いだ! お金が溶ける!」
わい
「ケインズはこの現象をすでに説明してるんですよ。
“美人投票”って言葉で」
爺さん
「ほう、孫娘が“わからん”と言っていたやつか。ぜひ頼む」
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## ■2 『美人投票』とは?
わい
「昔の新聞に“あなたが美人だと思う女性に投票してください”という欄があったんですけど──
参加者の多くは、こうしなかったんです」
ユダヤ人
「“自分が美人と思う人”に入れないの?」
わい
「そう。実際には──」
### ●レベル1
**“みんなが美人だと思いそうな人”に投票する。**
### ●レベル2
**“みんなが、みんなが美人だと思いそうな人に投票すると読んで投票する”。**
### ●レベル3
**“みんなが、みんなが、みんなが美人だと思いそうな…”**
わい
「ケインズ曰く、株式市場はこの“多段階の読み合い”で動いている」
爺さん
「……つまり、人々が評価しているのは“企業の本当の価値”ではなく──」
わい
「**“他の参加者がどう評価しそうか”**です」
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## ■3 投資家は鏡の中の鏡を見ている
ユダヤ人
「え? じゃあ、企業の業績って関係ないのか?」
わい
「もちろん長期的には関係ある。
でも短期では、“業績”より“みんなの予想の予想”が強い」
爺さん
「まるで鏡合わせだな」
わい
「そう。ケインズ的には市場とは──」
> **“鏡の中で互いの推測を映し合うゲーム”**
わい
「たとえば、A社の株が急に上がる時、
現実はまだ何も起きていなくても──」
* この企業が伸びそう
* そう思う人が増えそう
* そう思う人が増えると価格が上がりそう
* なら今買った人が得をしそう
わい
「こんな心理が重なって“上がって見える”」
ユダヤ人
「うわぁ……それ、推理ゲームじゃん」
爺さん
「そして人間は推理を間違える生き物だ」
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## ■4 なぜバブルは起きるのか?
わい
「バブルのメカニズムも美人投票で説明できるよ」
### ■通常
“企業の価値 × 期待”で価格が決まる。
### ■バブル
**“期待 × 期待 × 期待 × 群衆心理”** が単独で走り始める。
わい
「つまり、“現実”という土台から浮いた価格が走る」
ユダヤ人
「浮くのは嫌いだ! 怖い!」
爺さん
「怖いが、儲けが出ると舞い上がる。それが群衆だ」
わい
「ケインズはこれを“アニマルスピリット(野生の本能)”と呼んだ。
理屈ではなく本能が市場を動かす、という意味」
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## ■5 ケインズの教え:
# **「他人の予想の予想」を信仰するな**
爺さん
「しかし、どうすれば惑わされずに済むんだ?」
わい
「ケインズは“短期市場の予想ゲーム”を否定していた。
だから彼の結論はこう」
> **「市場は短期では美人投票になる。
> だが、だからこそ“本当の価値”を見る努力を続けよ」**
ユダヤ人
「わからん……けどカッコいい!」
わい
「アキレスと亀と同じだよ。
真実(価値)は逃げ続ける。
でも追う努力をやめれば、それで終わり」
爺さん
「なるほど。それゆえ短期の投機に飲まれるな、と」
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## ■6 また始まる勧誘
爝さん
「……君の話は本当に面白いな。
“美人投票”が孫娘にもわかるとは思わなんだ」
ユダヤ人
「ヤー、こいつを婿にすべきだぞ!」
わい
「またその流れ!?
いやケインズから直で“結婚”に行くなよ!」
爺さん
「市場の予測より、家族の期待のほうが重要なんだよ」
わい
「美人投票の使い方間違ってるって!!」
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# ■エピローグ
市場は“企業の価値”で動いているように見える。
しかし実際には、
* 他人の予想
* 他人の予想の予想
* 群衆心理
* 期待の連鎖
という、**鏡合わせの心理ゲーム**で動く。
それをもっとも簡潔な比喩で語ったのがケインズの「美人投票」だ。
そして、わたしたちが学ぶべき教訓は一つ。
> **市場を見るときは “鏡の裏側” を見る努力をやめてはいけない。**
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