叶わぬ恋なら、殺してしまえ

　人間というのは面白い生き物だ。

　生活のために働き、人と繋がり、恋をして、嫉妬する。

　人並みの生活というのは実に難しく、どんなに苦しくも、人間というのはそうするのだ。

　私もその一人である。

　人並みとは言い難いが、誰だって恋はするし、嫉妬する。それが人間ということなのではないかと、常日頃から思っていること…。人間ならば…。

　そうそう───人間には七つの罪があるのは知っているだろうか？

　『傲慢』『嫉妬』『憤怒』『怠惰』『強欲』『暴食』『色慾』の七つ。人は時に傲慢であり、嫉妬し、憤怒する。ただ怠惰を極めた人間は、強欲と暴食にまみれ、色慾に蝕まれる。とても愚かで、とても人間らしい。

　ただ私はそれを罪と思うことはない。人間だからだ。人間でありたいからだ。

　一人の人間としてありたい私は、世間から少しズレていると感じる。これがいわゆる倫理と呼ばれるモノなのか、心理と呼ばれるモノなのか分からない。ただ、ただの人と同じかと言われれば、違うと自覚する。

　だから人間らしいという在り方は、私を肯定すると同時に、否定するものである。

　そして彼、私と同じ人間。彼は私と同じ、だから彼女を殺す。叶わぬ恋に嫉妬したから。

　私を肯定した彼を盗るのは、許されない。

　だから─────。