そらから降る温かさ
九戸政景@
そらから降る温かさ
「あっ、ゆき!」
空から降る雪にまだ小学生の娘がはしゃぐ。セリフに起こせばひらがなで言っていそうな舌足らずさがとても愛らしい。
「そらからどんどんふってくるよ!」
「うん、そうだね」
娘のように雪を楽しいと思えなくなったのはいつからだろう。子供の頃は雪が降ればはしゃいで、冷たさを感じながらも楽しく遊んで、寒い寒いと言いながら家で暖まる。そんな日々だったとは思う。
でも、歳を取るに連れて楽しさよりも雪の厄介さばかりが目について、降り始めたらため息をつくようになっていた。そしてそれが、当たり前になっていた。
「まま! ゆきだるまつくりたい!」
「……うん、もっと積もったら作ろうか。そのためにも、おそらにお願いしようね」
「うん!」
娘はまだ小さな手を握り合わせながら目をつぶる。口には出していないが、たぶん真剣に空に向かってお願いしているのだ。そんな姿を見ていると、とても心の奥がポカポカしてくる。
「どうかお願いします。この子のために、もっと雪を降らせてください」
私も空に向かって祈る。たぶん明日の雪かきは大変だろう。でも、楽しくやる事が出来るはずだ。明日の雪はこの子がくれた温かさなのだから。
そらから降る温かさ 九戸政景@ @2012712
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます