ぜんせんとっく

@1gatu5ka

第1話


 朝、私はいつものように母に朝食を作って母が寝ている寝室までもっていった

 すると、母が驚いた顔でこう言った

「ホノカ、あんた、目の色変わってるわよ」

「へ?」



 私はホノカ、今年で17歳になる恋の気配すらない女の子。

 目の色は両親譲りの黒い目。

 髪はすこし珍しい黒髪です。お気に入りの髪型はポニーテールです。

 背は町で見かける同世代の女の子たちよりちょっと高いくらいです。

 私の家は町から少しいった川沿いにあります。

 お母さんは体調が悪くてベッドから動けないし、お父さんはそんなお母さんを少しでも楽にさせてやろうと出稼ぎに出てるから、最近はほとんど家にいません。

 今は体調が悪くて使えないらしいけど、母には魔法の才能があります。

 私が小さいころは、まだ母の体調がよかったから、魔法で手際よく家事をしていたのを覚えてるけれど、私が10歳のころに病気にかかって、なんとか治ったはいいものの、後遺症で一人じゃほとんど動けなくなりました。


 そんな母が急に驚いた顔で「私の目の色が変わった」なんて言うから、びっくりした。

「お母さんどうしたのいきなりそんなこと言って~」

「ホノカ、あんた違和感とかないの?」

「も~そんなのあるわけないでしょ」

「ふざけてるわけじゃないから川行って自分の顔みてきなさい」

「そこまで言うなら、まぁ行ってくるけど…」

 私はしぶしぶ川まで行って水面を見ると、そこにはいつもと変わらない黒い髪、白いワンピース、いつもと同じ黒い目をした私…。

「うわぁ!!  なんで目の色金色になってるの…!」

 いつもと同じだと思っていた目が、金色になっていた。

 心当たりは全くない。

 昨日町のお風呂で見たときはいつもと変わらない黒い目だったのに…。 

「誰かのいたずら?でも、こんなことする人なんて知らないし…。」

 数分考えたが全くわからない。

「何か異常があるんだろうし、ご飯食べた後に病院にいってみよ」





 「異常はないですね。ですが、もし何らかの魔法の影響なら目の色が戻る可能性は低いでしょうね」

 ここは木造二階建ての診療所の一室。

 目の前には淡々と診断結果を伝える医師に私は気の抜けた声で聞く。

「異常なし?」

「異常はないですね」

「そうですか…。 ありがとうございました。失礼しますね」

 そう言って私は診療所を出る。

「正直何かわかると思って診療所まで来たのに…。 いや、それでも異常がないことが分かっただけでもいいか!」

 そう言って沈んでいた私は気持ちを無理やり持ち上げる。

 町の時計台を見ると、昼前を指していた。

 お昼ご飯までに帰るとしても何か買えるくらいの時間はあると思った私は、少し走りつつ市場を目指す。 

 市場につくと道の両脇にたくさんの露店が出店していた。

 買い物をする人は、主婦や旅人のような恰好をした人、手をつないで露店をめぐっている同年代のカップルなど、様々な人がいる。 

「いつもは夜にしか来ないからこの時間の露店の数は多いなー」

 同年代のカップルを横目に見つつ歩いていると、

「甘くて珍しいお菓子が売ってるよー!!」

 なんて声が聞こえてきた。

 正直私は甘いものがそこまで好きじゃないけどお母さんは甘いものが好きだからちょっと寄ってみることにした。

 店頭には、黒い板状のお菓子のようなものが売られている。

「あのー、このお菓子の名前なんて言うんですか?」

「このお菓子の名前かい。これはねぇチョコレートっていうんだよ。興味があるなら一つ食べてみないかい?気に入ったら買ってくれたらいいからさ」

 そういって店員さんはチョコレート?のかけらをくれた。

 食べてみるとちょっと甘くて口の中で溶けていく食感が気に入った

「どうだい、美味しいだろう?」

「はい、美味しいですね これ、甘すぎるわけでもないし口の中で溶けていくので食べやすいですね。ひとつ買いますよ。いくらですか?」

「四つ入りで500セルだよ。」

「ちょっと高くないですか?」

「まあ遠方のものだからね。そのくらいは貰わないと」

「わかりましたよ。はい500セル」

「お買い上げありがとうございました。暖かいところに置いておくと溶けるので注意してくださいね」

 チョコレートを買うと時間がもうすぐ正午だったので、駆け足で家に帰る。

帰る途中、心なしかいつもよりも速く動けた気がした。





 家に帰ると、お母さんがベッドに座りながら不安そうな顔で聞いてきた。

「ホノカ、目は大丈夫だったの?」

「異常はないらしいよ。けど、目の色は戻らないかもって」

「そう…。でも、異常がないだけよかった」

「うん。ほんとにね。そうだ珍しいお菓子買ってきたから一緒に食べよ」

「へえ~。なんてお菓子?」

「チョコレートっていうんだってさ。お母さんはきっと好きな味だよ」

「そう。ならひとつもらうね。ん、甘くて美味しいわねこれ」

「気に入ったならよかった。じゃ、私ご飯作ってくるね」

 この後は私が作った昼食を二人で食べて、納屋の整理や家の掃除なんかをしていたら空が暗くなってきた。

 夕食を済ませお風呂から出ると、誰かがドアをノックする音が聞こえてきた。 

 コンコン

「はーい、今出まーす」

 そう言ってドアを開けると、淡い青色の目をした女の人が立っていた 。

「あのー、何の御用でしょうか?」




 

 大きなバッグを持っていて腰まで届きそうな金髪のロングヘアに、上は長袖の黒い軍隊のような服。

 下は黒いロングスカートに黒い底の厚そうなブーツという恰好をしているわりに背は私より少し高いくらいだ。

「単刀直入に言いますね。あなたをスカウトしに来ました!」

「は?」

「まあ立ち話もなんですから、家の中にお邪魔してもよろしいでしょうか」

「え? あ、ど、どうぞ…」

 勢いに押されて入れてしまったけれどこの状況はひょっとするとヤバいのでは?  家の中には私と動けない母。

 そこに不審な女の人が入っていると考えると、ヤバい。

 そんなことを考えていると不審な女の人が話し始めた。

「少し詳しく説明しますね。あなたは最近目の色が変わりましたね?」

「今朝変わったようですけど...」

「その目の色が変わる現象はあなたが刻印武器の使い手に選ばれたからです!」

「は、はぁ…?」

 刻印武器だの全く知らない話してる人なんて怪しすぎる。早く帰ってほしい…!

「私は変な人じゃないですし、正気ですよ。 刻印武器というのは刻印が刻まれた人にしか使えない武器なんです。 ま、名前のまんまですね。 で、その刻印が刻まれる人はからランダムに選ばれるんですよ。 それで選ばれたのがあなたってわけなんです。 だから目の色が変わったでしょ? それが選ばれた証拠なんです」

 そこまではいいとしても、なんでこの人私だって思ったんだろう…。

 「私は今、仲間から魔法を借りているんです。借りてる魔法がちょっと特殊でしてね。この魔法を使うと魂を観測できるんですよ。刻印は魂に刻まれてるから分かったんです。 ちょっと脱線しましたが要約すると、あなたしか使えない武器をうちが管理してるから一緒に来て私たち勇戦隊の戦力として戦ってほしい。あなたには戦う力がある。もちろん給金は高いしアットホームな職場ですよ。ですから。」

「あの、少し時間をいただいてもいいですか?」

「もちろんです」

 いやちょっと待ってよ。淀みの者と戦うって何?戦う力がある?訳が分からなくなってきた。

 いや、今考えてもわからないし、今日のところは帰ってもらおう。  

「すみません一人で考えたいので今日のところは帰ってもらっていいですか?」

「いやです。泊めてください」

「は?」

 この人ヤバい!いきなり人の家に来て泊めてくださいって何!?

「いや~、今から町に戻っても宿屋の部屋あいてないと思うんですよ。単純に遊びすぎてお金がないですし。あ、私はリビングで寝るのでお気遣いなく」

 この人泊まる気満々だよ。

 荷物ひろげはじめたし。

 ていうか給料いっぱい貰ってるんじゃないの? 

 こういう時に押し返せない弱い自分が嫌になってくる。

「もう、私は寝ますね…。 あ、リビングからは出ないでくださいね。トイレはリビング出てすぐですから。」

 もう明日考えよう。 

 今はお母さんに慰めてもらおう。

「おかあさ~ん」

「どうしたの?そんなに疲れた顔して」

「いや、自分に嫌気がさして。 あと、たぶん大丈夫だけど今リビングにお客さん?がいるの。しかも今日はお金ないからってうちに泊まるらしい。」

「私は別にこの家に盗まれて困るものなんてないからいいけど…。ホノカはいいの?」

「なんか私目当てで来たっぽいからそのまま帰すのもなんだかな~ってかんじ。お母さん、話は変わるけど私が戦場に行くって言いだしたらどうする?」

「急にどうしたの? う~ん でも、それがあんたが選んだ道なら応援するわよ。私の世話ばかりで、ホノカに苦労ばっかりかけてるんだ。お母さんを気にしなくていいよ、変われるチャンスがあるなら逃がしちゃだめだよ。それこそ、私のためを思ってチャンスを手放したら私の魔法がホノカのおしりに火をつけるよ」

「うん、わかった。私寝るね。おやすみ」

「おやすみ」

 今日が人生の分岐点なのかもしれないそう思った私は、眠りについた。

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