神殿(連載版)

赤坂栗助

エピグラフ

裁きのうちでの単独性の高揚は、まさに裁きが呼び起こす意志の無限の責任のなかで生起する。……、……。……私が義務を達成すればするほど、私のもつ権利は少なくなる。私が公正であればあるほど、私は有責になる。……自我は自己のうちに独自に中心を有しており、自我の実存はこの中心のまわりを回転している。しかるに、こうした自我が単独性のうちで確証されるのは、自我がこの重心を失って空になることによってであり、空になることをやめない自我は、まさにこの空になろうとするたえざる努力のうちで確証されるのだ。これが善性と呼ばれる。


エマニュエル・レヴィナス『全体性と無限』藤岡俊博訳、2020年、講談社。439-440頁。

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