足手纏いとパーティーを抜けた俺は追放された公女を拾う〜最強の冒険者パーティーだった俺は成り行きで家庭教師になる〜

大猩猩和

第一章 アルカドラ王国逃亡編

第1話 ラルク、パーティーを抜ける

「ごめん、やっぱり俺、このパーティー抜けるよ」


 一人の青年が仲間たちに告げる。


 自分はこのパーティーを抜けると。


 この青年の身長は180センチメートルほどであり、黒と白が混じる長い髪を後ろで括っている。


 体は細身に見えてよく観察してみると筋骨隆々であり、いわゆる細マッチョというものである。


 彼の腰には二本の剣が携えられており、彼が二刀流であることを示している。


 そんな青年からパーティーのメンバーたちは驚きを隠せない様子である。


 それもそうだ。


 今パーティーを抜けると言った青年は彼らのパーティーにおける主柱のような存在なのだ。


 他のメンバーからしたら彼が抜けるなんてことは絶対に許されないことなのだ。


 そのため、青年の正面に立つ金髪の青年が質問する。


「やっぱり、前のことを気にしているのかい?」


「それもあるけど、前からずっと思ってたんだ。俺にはこのパーティーに相応しくないって」


「そんなことはない!!ラルクはこのパーティーに必要な仲間だ!!」


「ありがとう、アーク。君が俺のこと高く評価してくれてるのは凄く嬉しいよ。だけど、俺のせいでニーナが大怪我を負ってしまった。俺がみんなみたいに強かったらあんなことにはならなかった」


 青年、ラルクは拳を強く握り締めながら呟く。


 それは数日前のことだ。


 ラルクたちがとある依頼でダンジョンを潜った時、彼らは本来なら出てこないような強敵に遭遇してしまった。


 その際、彼らの仲間であるニーナという少女が意識不明の大怪我を負ってしまったのだ。


 ラルクはその原因は自分であると思い、ケジメとしてパーティーの離脱を選んだのだ。


 それに、ラルクは前からパーティーを離脱することを決めていた。


 それが少し早まっただけのことである。


 しかし、彼の意思とは反対に仲間たちはパーティーを抜けようとする彼を止める。


「あれは君のせいじゃない!!あれは完全な事故だ!!あの時、判断が遅れた僕の責任だ!!だから、ラークは何も悪くない!!」


「いや、あれは俺のせいだ。俺はみんなと違って何もかもが中途半端だから大切な時に力が足りずに助けられないんだ。こんな器用貧乏の俺みたいな半端者はみんなの邪魔にしかならないよ」


「そんなことはない!!君が色んな才能があるおかげで僕たちの隙間を埋められているんだ!!君がいなければ、僕たちはここまで連携の取れるパーティーにはならなかった!!」


「それは過大評価だよ。やっぱり、それぞれの役職に特化した人たちが集まった方が断然連携が取れるに決まってる。きっと、俺たちがAランクで止まっているのも器用貧乏な俺が足を引っ張ってるせいなんだろうな」


 ラルクはそう言いながら自分の拳を眺める。


 そんなラルクを見て、アークは自分の気持ちが伝わらないことに苛立ちを覚える。


 アークの言葉は今この場にいる他のメンバーたちと同じ意見だ。


 彼らにとってラルクは絶対に必要な存在だ。


 戦力としても心の支えとしても彼はこのパーティーに大きく貢献している。


 そのため、アークに続くように他のメンバーたちもラルクをとめに入る。


「ラルク、考え直してくれ。俺たちにはお前が必要なんだよ」


 アークの左隣に立つ身長2メートルを軽く超える筋骨隆々の男がすがるように頼む。


「ごめん、俺はバンみたいにみんなを守れるほど強くないんだ。俺もバンみたいに仲間の盾になれたらニーナもあんな大怪我をしないで済んだのに」


 だが、ラルクは筋骨隆々の男、バンの頼みを申し訳なさそうに断る。


 バンからの頼みを断られたため、次にアークの右隣に立つ少女が頭に被る帽子を外して頭を下げて頼む。 


 少女は綺麗な赤髪をしており、大きな帽子に黒い装束から魔術師であることが分かる。


「ラルク!!お願い!!行かないで!!私、まだまだ貴方から学びたいことがあるの!!」


「はは、ネルは何を言っているんだ。俺から学ぶことなんてないだろ?だって、君の方が圧倒的に魔術の才能があるじゃないか」


 そんな赤髪の少女、ネルからの頼みをラルクは笑いながら断る。


 そして、最後に残った弓を担ぐ緑髪の少女が神妙そうな表情で話しかける。


 この少女の耳は他の者たちよりも長く、エルフと呼ばれる種族である。


「ラルク、貴方は本気でこのパーティーを抜けるつもりなの?」


「ああ、そうだよ」


「お願い、考え直して。私たちには貴方が必要なの。貴方がいないと誰が私のサポートをしてくれるの?」


「サリアにはサポートなんていらないよ。だって、俺よりも遥かに高い索敵能力と弓による援護ができるじゃないか。それに、君は魔術も凄く使えるんだから、俺なんている必要はないんだ」


 エルフの少女、サリアの懇願すらも今のラルクには届かない。


 仲間たちの制止を全て遮り、パーティーを抜けることを決めたラルクは、


「みんな、今まで本当に迷惑をかけて申し訳なかった。俺に炎魔術が使えたら、もっとみんなの役に立てたのに、不甲斐ない俺でごめんな」


 皆に別れの言葉を告げて部屋から出ていってしまう。


 アークはラルクを追いかけようとするが、バンによって止められてしまう。


「今のあいつに何を言っても聞きやしねぇよ」


「どうして、どうしてこうなった…… ラルクは僕たちの大切な仲間だったのに…… 」


 アークは涙を流しながら悔しそうに拳を握り締める。


 そうして、王都最強と名高いパーティーである聖者の剣からラルクが抜けてしまったのだった。









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2025年12月28日 20:00
2025年12月30日 20:00
2026年1月1日 20:00

足手纏いとパーティーを抜けた俺は追放された公女を拾う〜最強の冒険者パーティーだった俺は成り行きで家庭教師になる〜 大猩猩和 @gorillawa

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