真実を信じれた

「おい、仮面の男。いるか」


「おっとおっと。これは急にどうしたんですか?」


 その顔をみた瞬間、何故か色々な感情が湧いてくる。

 彼は、最近まで俺の救世主だった。

 でも、彼は親友の死を侮辱したし、俺の思想をぐちゃぐちゃにかき乱した。


「答えてくれ。なんでお前は、俺に×××について教えた」


 男は数秒考えた。

 でもその数秒が、数分にも数時間にも感じた。


「あなたに革命家の素質が...」


「違う。本当のことを言え」


 男はニヤッと笑い...


「チョロそうだと思ったからです」


 それを聞いた瞬間、怒りがこみ上げてきた。

 理由は分からない。

 でも、自分の心が怒った。

 コイツの仮面を、剥がした。



「お前...魔物だったのか...」




 素顔は醜い化け物の顔だった。

 魔女族のオスか?


「なんで魔物がこんなところに」


「私だって誰かに見てもらいたかった」


「だからこんなしょうもない事をやってたのか?」


「ああ...」


 しばらく沈黙が続いた。


「よし!チャンスだ!」


 来るか!?

 いや違う...あれは...


「この女たちがどうなっても良いのか!?」


 町を歩いていた女の子が2人、やつに捕まった。

 2人の首筋には鋭いナイフが2本突き立てられている。

 両腕で女を抱え、手に持ったナイフで脅す。

 距離は15mと言ったところか...


「ルークさん!大丈夫か!?」


「え、勇者!?なんでここに!?」


「君が気になって、あの後町を歩いていたら、気配察知スキルに反応があった」


「おい勇者!テメーも一歩動いてみろ!この女の血しぶきを浴びることになるぞ!」


 2人を盾にしているせいで、余計に近づけない。


「おいルーク。お前はそうやって変わった気でいるが、どうだ?」


「何のことだ!」


「じゃあ、質問しよう。なぜお前は、恵まれていないんだ?」


 それは...

 ××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××


 いや...






「全部、ただの偶然だよ」





 今、モヤモヤがスッキリした。

 ×で必死に覆い、目を逸らそうとしていた真実を、しっかりと認められた。


 そして、はっきりと見えた。

 2人の人質の間に見える。切るべき場所が。


「おいルーク!妙な動きをする...」










 今思えば、あの瞬間俺のスピードと剣の正確さは勇者を超えていたと思う。

 まあ、あのスピードをもう一度出すことはできなかったがね。

 俺が恵まれないのが偶然であるように、あのスピードを出せたのも偶然だ。

 この数日間で、色々なことが起きたが、結局現状は変わってない。

 今日も依頼を受け、酒を呑み、寝る。

 こんな日常に意味なんてないかもしれない。

 でも、俺は受け入れられた。

 現実から目を逸らさない人間になれた。

 重要なのは、自分の心に反しないこと。

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勇者ってじつは×××らしいですよ 猫の耳毛 @Takahiro411

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