俺は×××に立ち向かうぞ!

「あなたは×××を倒す素質がある」


 朝の5時頃、この瞬間、俺の運命に大きな動きがあったのかもしれない。


「はい?何ですか×××って。聞いたことない」


 正直こいつとはあまり関わりたくない。

 初対面でよくわからないことを言ってくるやつだ。かかわってもバッドエンドしかないのが容易に想像できる。

 しかもこいつ、さっき「ルークさん」と言った。俺の名前を聞きまわってのか?


「勇者の活躍...魔王軍の衰弱...魔物の活発化...一定数いるハズレ職」


「何を言い出すんですか?レイピア使いの僕を馬鹿にしてるんですか?別に戦えないわけじゃないですし、対人戦でしたら最強格ですよ?」


 男はニヤリと笑う。


「あなたもそうやって言い訳をする。対人性能が何だと言うのです?魔物を殺すことが冒険者の価値なのです」


「......」


「しかし、その価値は誰が決めた?」


「そんなの誰でもないだろ。魔物が人類を攻撃する限り、今の状況は変わらない。でも、勇者が現れた」


「で?勇者が一体何だと言うのです?」


「悔しいが、あいつは世界を救う救世主だ。俺はこれからもひっそりと生きていくかもしれない」


「"かもしれない"?ふざけないでください!!!」


 正直言って疲れる。この人と話してると、なんだか...

 何て言うんだろう...

 その...



 変な希望を感じてしまう

 そんなもの、持っていいはずがないのに。





「結局あの後、住所を教えてもらって、明日会う予定になっちゃったな...」


 俺は別に不幸ではない。

 毎日うまい飯を食って、3日に一回は浴場で身体を流して、たまに親友と呑む。

 だが、恵まれてはいないし、この世界にいる意味がわからない。

 不幸なキャラでもないし、主人公でもない。勇者の仲間、重大なポジション、世界を救う鍵を持っている。

 そんなわけでもない。

 ...でも、俺にも役割があるのかもしれない。

 教会の聖職者は言う。


「人間はみな意味を持って生まれたため命は尊い。神がそう定めた」


 だから、俺にも役割があるはずだ。

 俺が今恵まれていない理由は、まだ俺がその役割を果たすときじゃないからだ。

 今だけ...つまんないのは今だけだ...


「よう!ルーク!どうした~?しけたツラして」


「あ、スミスか。元気だなお前は」


「まあな!今日は仕事だし!」


「よし!お前の受けた依頼を当ててやろう!」


「いいぞー!チャンスは3回だ!正解したらご褒美にキスしてやるよ」


「キスはいらんけど。えーっと...ロングソードに革製の胸あてか...戦闘系ではあるみたいだが...」


「フフフ...今回は難しいんじゃないか?」


「髪と服装がやけに整えられている......分かった!下級貴族または聖職者の護衛だな!」


「せいかーい!」


「頑張れよー」


 スミスは元気に手を振って走っていった。

 今日は軽めの依頼にしようかな...


「さーどれどれ。楽な依頼はないかなー......」


 ふと、気が付いた。


「...あれ?もうスライムの繁殖期に入るはずなんだけどなー...討伐依頼が一個も見当たらない」






コケコッコーッ!


 クソ、気分転換に初めての宿に泊まったが、牧場がうるさい!

 まだ太陽が出たばっかじゃないか...

 今何時だ?この部屋からだと教会の時計台が良く見えない...

 5時か。


「貴族みたいに、俺も一個携帯できる小型時計がほしいよ!」


 おっと。もう仮面の男との集合時間が近い。

 街はずれの倉庫だよな。

 とりあえず剣を持っていくか。


「店主ー!いい宿だったよー!チップここに置いてくねー!また来るよ」


 嘘、牧場の動物が死ぬほどうるさいから二度と来ない。




コンコンコン


「すみませーん。昨日会ったルークです」

「おや?やはり来ましたか。革命家よ」

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