難攻不落のダウナー系ギャルの灰崎さんが俺にだけ甘い
星宮 亜玖愛
プロローグ
高校二年の俺、
それは学年一可愛いと言われている難攻不落のダウナー系ギャル、
決して彼氏彼女の関係ではないのだが、同じ学校の生徒にバレたら大変なことになるのは容易に想像できる。
それが俺みたいなあまり目立たないタイプの人間だったらなおさらだ。
だから灰崎さんとの奇妙な関係は絶対にバレてはいけない。
俺の身の安全のためにも、灰崎さんの名誉のためにも。
この奇妙な関係のことを灰崎さんがどう思っているかは分からない。
でもこれだけは言える。
好き同士でもない異性の俺と灰崎さんを繋ぎとめている二人だけの秘密があるということ。
♢♢♢
俺には好きな人がいる。
同じクラスの
品行方正、成績優秀、絵にかいたような優等生。
腰まで伸びた黒髪ロングにはっきりとした目鼻立ち、健康的な白くきれいな肌はまさに美少女を体現したような存在だった。
そんな完璧美少女を好きになっても報われない、そんなことなど分かっている。
こんな別次元の存在なんて好きになるわけないとさえ思っていた。
でも翠の幼馴染として一緒に十数年も過ごして来たら好きになってしまうのは仕方のないことだった。
でもこんなに近くにいるのに翠は俺のことなど眼中にないみたいだった。
我ながら叶わぬ恋をしてしまったな。
でもこの恋を叶えようとかそういう気持ちがあるわけじゃない。
俺はただ翠の隣で支えて上げれればそれでいい。
翠が幸せなら俺はそれで十分だ。
そもそも二年生になってからクラスも離れちゃって関りも少なくなっちゃったしな。
「なんか考え事してる?」
前の席の友達の高部が頬杖をつく俺に聞いてくる。
「あぁ何でもないよ」
高部は高一のころからの友達で野球好きという共通の話題で仲良くなった。
「ふーん、てっきり灰崎さんのこと好きになったのかと思ったぞ」
「は、なんで」
「ずっと灰崎さんの方見てるんだもん」
確かに現在の視点に集中したら目線の先には灰崎さんがいた。
金色に染められた艶やかな長い髪にくりくりとした大きな瞳、整った鼻と口はまさに美少女体現した姿だった。
それに加えはっきりとしたボディラインは全女子の憧れだろう。
灰崎さんは翠と並んで学年二大美女と言われるほど可愛い、可愛いのだけれど…
とにかく男子に対して冷たいのだ。
女子とは普通に話はするがいつもどこか気だるげな目をしている。
授業中は寝る、起きたと起きたと思ったらぼーっと窓の外を眺める。
常にだるそうな顔をしている。
でも可愛いから周りに自然と人が集まる。
いわゆるダウナー系ギャルってやつだ。
「別に灰崎さんのことを見てたわけじゃない」
「ふーん、ま知ってたけどね」
なんだこいつ。
「どうせ愛しの翠ちゃんのことでも考えてたんでしょ?」
謎に得意げな顔してんのがむかつくな。
「俺はお前のこと全部分かってますよみたいな顔すんな」
俺がそう言うとまた一段とにやつきを深めた。
「それは翠ちゃんと話してる時の夏樹では?」
コイツコロス。
「お前もう二度と俺の前で翠の話題出すな」
「なになに~?私の話してるの?」
背後の急な気配に驚いて肩がびくりと跳ねてしまった。
振り返るとそこには、
「翠…なんで
たしか翠のクラスは2組だったよな。
「えー、幼馴染に会いに来たって理由じゃだめ…?」
首をこてんと傾げて尋ねてくる翠。
そういうところがズルいんだよなぁ。
「だめじゃないけど…」
こんなに可愛い幼馴染と毎日一緒にいたらもしかしたら俺のこと好きなのかも?と勘違いしてしまいそうになるのにも頷けるだろう。
でも翠が俺を好きなわけなんてない。
だって翠は好きな人がいるから。
それは俺じゃない他のだれかだった。
小学3年のあの時から俺は叶わぬ恋をしているんだ。
「幼馴染だからってあんまり俺に構いすぎるなよ」
「なんで?」
「勘違いされるかもしれないだろ?」
「ん~」
翠はあごに手を当て、目を閉じて考えるような仕草をした後にぱちっと目を開いた。
「たしかにそうだよね。ごめんね」
なんで謝るんだよ、その疑問が体の外に出る前に翠はじゃーね!と言って教室を出て行ってしまった。
「なんだったんだ」
「夏樹、お前相当だな…」
なんだ、なんで俺にそんな憐みの目を向けてくるんだ。
よく分からないけどなんとなくムカついたので軽く小突いておいた。
♢♢♢
「はぁ、無駄にいい天気だなぁ」
学校終わり、雲一つない快晴の空を仰ぎながら独り言ちる。
「はぁ…」
俺は晴れが嫌いだ。
嫌いな理由なんて言いたくない程に晴れの日が嫌いだった。
特に雲一つない天気。
まさに今日のような天気が一番嫌いだった。
思い出したくない記憶が蘇ってくる。
「はぁ、早く帰ろ」
そう考えて歩くスピードを速くしたその時だった。
「んーそんなに甘えてどうしたにゃー?可愛すぎるにゃー」
…え?
四月の爽やかな風が吹き抜け、鳥のさえずりと水の音が心地よく響く河川敷。
だが風が運んできたのは鳥のさえずりと水の音だけではなかった。
若い女の人が猫にデレる声も共に運んできたのだった。
しかもそのこえに抑揚は少なく、セリフの割に感情がこもっておらず興味が湧いてしまった。
「感情表現が苦手な人なのかな…?」
申し訳ないなと思いつつも湧いてしまった興味はどうすることもできず、橋の下から聞こえた声の主を一目見るために静かに近づくことにした。
「私のことすきにゃ?」
ゆっくりと近づくにつれ聞こえてくる声もだんだんと大きくなっていった。
どこかで聞いたことあるような…
どこか聞き覚えのある声質に疑問を抱きながらもゆっくりと歩を進めた。
そしてついに声の主が見えそうな場所につき、恐る恐る覗くいた。
「…………………は?」
え…?
「は、灰崎さん…?」
そこにいたのは同じクラスのダウナー系ギャルの灰崎さんだった。
「あ…………」
俺の声で存在に気づいた灰崎さんは猫をなでる手を止めてこちらを見上げて口をあんぐりと開けていた。
俺の思考は先ほどまで聞こえてきていた声と今目の前で猫を撫でている金髪の少女で支配されていた。
情報を処理しきれずに少しの間沈黙が流れていたが、灰崎さんがおずおずと口を開いた。
「聞いた……?」
おそらくさっき声のことだろうな…
灰崎さんのためにも聞かなかったことにした方がいいのかな。
いやそうだろう、聞かなかったことにしよう。
「聞いてない」
「ほんとは?」
あ、これもうバレてるな。
「聞いた?」
仕方ない、ごめん灰崎さん。
俺はゆっくりと頷いた。
すると灰崎さんの頬はみるみるうちに赤く染まっていった。
「……忘れて」
「え?」
「今見たこと聞いたこと、全部忘れて」
「えっと…」
「絶対誰にも言わないで、こんなことバレたら学校いけなくなる…」
灰崎さんは少し俯きながら呟いた。
「別にそこまでじゃ…」
「そこまでのことなの!私、こんなの似合わないでしょ…」
灰崎さんの声は尻すぼみに小さくなっていった。
「そんなことないよ」
「そんなことある」
「似合わない趣味がある人なんて存在しないよ」
それに、と言って俺は続ける。
「灰崎さんは可愛いから猫好きだって気づいたら鬼に金棒じゃないかな?」
俺がそう言うと灰崎さんは顔を背けてしまった。
マズイこと言っちゃったかな?
「で、でも皆には言わないから安心して!」
「………ばか」
「ん?なんて?」
「何でもない」
良く聞こえなかったけどなんだったんだろう。
「桐葉」
灰崎さん俺の名前覚えてくれてたんだ。
「ん?」
「見た罰」
「え?」
「この子飼って」
そう言って灰崎さんは目の前にいる子猫を指さした。
んー、俺一人暮らしだしなんの問題も無いし、ちょうど親父から「一人じゃ寂しいだろ?猫でも飼え!」ってケージとか送ってきてもらってたんだよな。
「って流石に無理だよね、無理言ってごめ…」
「いいよ」
「え…?」
「うちちょうど猫用のケージとかいろいろあるし」
そう言うと灰崎さんはきらきらと目を輝かせた。
「ほんとに!?」
「あぁ」
「っ…!ありがとう!よかったねマル」
そう言いながら灰崎さんは子猫を撫でた。
本当に好きなんだな。
「マルって言うのか、灰崎さんが名付けたの?」
「うん。いっつも丸まって寝てるから」
「いい名前だな」
「だよね、ありがと」
灰崎さんはマルを抱えて立ち上がった。
「じゃあ大事に世話するな」
俺はそう言ってマルを受け取ろうとしたが灰崎さんは中々渡してくれなかった。
少しの沈黙の後灰崎さんはおずおずと口を開いた。
「……ねぇ、私もついていっていい?」
……え?
「マルが心配だから家、行って良い?」
えっと…………え?
~~~~あとがき
こんにちは星宮亜玖愛です!
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