2027年、もうAIが書いた小説のほうが面白いんだってさ。
LucaVerce
第1話
2023年 ここは六畳一間のアパート。風呂トイレは一緒。下着はもちろん中に干してある。
女ものの下着はとある界隈で特に人気らしい。以前友達の下着が盗まれたことがあった。犯人は近辺に住む男子高校生だったらしく、下着を集めるのが趣味だったらしい。
その時の男子高校生の言い訳が「病気のお母さんに…新しい下着を買ってあげたくて…でも貧乏だからお金がなくて…」って事だった。彼のお母さんは全く病気じゃなかったし、彼は有名な私立の学校に通っていた。
今日一日…私はずっと宙に浮いている様な感じでいる。
断頭台にいる死刑囚と、宝くじの当選結果を待つ人たちも、もしかしたら脳科学で言ったら同じ、脳のどっかの機能が働いているのかもしれない
私はドキドキしながら選考結果を見るためにPCを開く
「だめかぁぁ…!」
私、
受賞の通知はなかった。
「…いや私は諦めんぞ…」
突然ノックがなる
誰だろう…?覗き穴を覗くと前にはフードをかぶった人がいる。性別はわからない
ラフなパーカーとハーフパンツを履いており背丈は同じくらいのように思える。
顔は陰に隠れて全く見えない。昼間なのに
「こんにちは。紡。とりあえず開けてくれないか?」
私は扉を開ける。なんでこの人は私の名前を知っているんだろう。
「やあこんにちは。」
「あんた誰?なんで私の名前を知ってんのよ」
「失敬。僕は
「君に小説を書くのをやめさせに来た未来人だよ」
「未来人?」
「そう、未来人。君というより、世界中の小説家になりたがってる人たち、って感じだけどね」
私はとりあえず、断ち人を家に上げることにした。小説のネタになりそうだったからだ。
♦♦♦
二人はもう部屋にあがっている。紡は警戒しながらもどこかけだるそうに座っている。
断ち人は正座でいる。一応、これでもよその家に上がっているという認識はあるのだろう。
紡が先に口を開く。二人はちゃぶ台を挟んで向かい合う。
「んで、あんたは何で私たちに小説を書くのをやめさせたいわけ?」
「実はね…これは善意でやってることなんだ…」
「君は生成AIって知ってるかい?」
紡はデジタルに疎い。何のことだかわかっていない。
「何よそれ。」
「AIっていうのは賢く、自動で言葉や物語、仕事の手伝いや絵まで生成してくれるものなんだ。」
「ふーん、そんなのあんのね」
「それで、未来ではその進化したAIに適当に「小説を書いて」と指示する。そうすると彼らは10万文字を余裕で超える大作を生成する。」
「そしてそれらの話はとても面白く、大衆を容易に満足させられる。」
「そういった小説が未来では主流になっており、人間の書き手は一部の元からトップだった人間を除いて絶滅している。」
「もうAIの作品は太宰治の作品や村上春樹の作品より面白いのかもしれない…未来では。」
紡が興味なさげに質問する
「ふーん、まあどうでもいいけど、要は今から小説を書き始めてもすぐAI小説の時代が来るから意味ないよって話なの?」
断ち人は正座を崩しながら質問に答える。
「そうそう。具体的には2027年にね。今のうちに違う仕事に就いたほうがいいよって話だよ。」
紡が訝し気に断ち人を見る。まだ断ち人のことを信用しきっていないようだ。
「なら君のスマートフォンに生成AIの
紡は試しにインストールしてみようか、という気になる。
紡が音声で「なんか面白い小説書いて」とインストールされたアプリに指示を出す。
Loading…AIが瞬く間に文章を展開する。私は少しだけ驚く。
断ち人は落ち着いたたたずまいでリラックスしている。画面を見ようともしない。結果をわかり切っているからだろう。
AIが物語を生成し終わる。
そこで生成されたのは、大便器星と小便器星がこの世にはあり、それらの戦いは年々激しくなっていく。なので突如お尻神が舞い降りて二つの星を和解させようとするといった話だった。
最後はなぜか美の魔人・尻ゼウスが大海をお尻の割れ目のように割り、リンゴを泣きながら食べて知恵を得るといった話だった。
紡は突如笑い出す
「ブハハハハハハ!」
「ほら、見ただろう…こんなに笑える話…」
「違うって!こんなくだらなくて支離滅裂な物語を作り上げるものを脅威とみなし、わざわざうちに伝えに来る、あんたのそのおせっかいさに笑いが止まらないのよ!」
「はー…死んじゃう…遠路はるばる、このためだけに未来から来たかと思うと…」
断ち人が絶句する。紡はお腹を抱えて笑っている。
断ち人はその生成された話を読んでみる。ある程度読んだ後に頭を抱えて恥ずかしそうにしている
先ほど、AIは「太宰治や村上春樹の作品より面白いものを生成できる」と、大見得きっていた自分を恥じているのだろう。
そりゃそうだろう…太宰治や村上春樹の作品に、美尻魔人・尻ゼウスなんて出てきたら作風を破壊しかねない。
こんなものはトイレットペーパーにでも書いて流してしまえばいいんだ。
断ち人が立ち上がる。どうやら帰るようだ。
「まあまた来るね…今に君は後悔するよ…」
紡はまだ笑っている。当分彼女の笑いは収まらないだろう。
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