面接! クワトロ・ヴァルキリアス

エス

面接! クワトロ・ヴァルキリアス


「さて、本日は『クワトロ・ヴァルキリアス』に出場するための当チーム選手選抜面接にお越しいただきまして誠にありがとうございます。


 ご存知とは思いますが、『クワトロ・ヴァルキリアス』はネオスという能力を持った女性たち四人でチームを組み、勝ち抜き戦のバトルをするものです。ケガは当たり前、場合によっては死者も出るかもしれないような危険な競技です。その辺は大丈夫ですか?」


「もちろんです」


「今や世界で最も人気のある競技ですからね、さすがに覚悟をお持ちのようだ。わかりました。ではまず自己紹介をお願いします」


「はい。あたしの名前は紫野原志乃と言います。


 どうしてもお金、じゃなくて自分の力だ、自分の力を試したくて応募しました。貴チームは毎回関東大会で上位となる強豪です。給りょ、練習環境もいいと聞きました。是非あたしの力で優勝して、賞き、おか、名誉をいただきたいと思っています。また、あたしはどんなことも得意で欠点はありません。よろしくお願いします!」


「お金目的、ですかね」


「……いえ、……あ、はい。お金目的です」


「正直に仰って構いませんよ。目的がお金であろうがなんだろうが、強ければうちのチームは大歓迎です。我々の目的は今やオリンピックよりも盛り上がる、あのクワトロ・ヴァルキリアスで優勝することですからね。


 何と言っても相手は世界です。関東どころか日本一さえも通過点。そんな強いチームにしていきたいと思っています」


「なら、お金です! お金超ほしいです!」


「実力に見合った額はお支払いすることを約束します。あなたは自信がおありのようですし、楽しみにしています」


「はい! お金楽しみです!」


「元気ですね。では早速質問に移らせてもらいますね。まずあなたの職業……」

「あまり見えないねと言われますが占い師です!」


「でしょうね。むしろ見え過ぎて困りましたけど。そんなエキゾチックな服装をして片手に水晶玉、もう片手にタロットカードを持っていたら占い師にしか見えませんよ。コスプレで来るわけないですしどこで見えないって言われたんですかね」


「さすが面接官様です。人を見る目がありますね」


「うーーーーーん、ま、まあ、続けさせてもらいますね。占い師ということで運動や格闘技の経験はあまりなさそうに見えるんですが、大丈夫ですか?」


「はい!」


「それは過去に何かをやっていたとか」


「そういうわけではないのですが、デンプシーロールを使うボクシングマンガとか、地上最強の生物である父親と戦う格闘マンガとか、パンチ一発で敵を倒すヒーローマンガとか、他にも色々と読んできているので格闘技は問題ありません」


「あーーーーーー、な、る、ほ、ど。ちなみにあなたの能力を教えてもらってもいいですか?」


「女性にそんなことを聞くのはセクハラですよ」

「セクハラじゃありませんよ! いいですか紫野原さん。そもそもクワトロ・ヴァルキリアスはお互いの能力を開示して戦うのが大会のルールですし、チームに入りたいなら能力を言ってくれないと話になりません」


「ああ! そっちでしたか。安心しました」


「ここで話す能力なんてそっちしかありませんよね、そっち以外って何があるのか逆に気になりますけどとりあえずいいでしょう。とにかく能力は必須事項ですので」


「そっち以外であたしが考えてたこと知りたいですか?」


「いいえ、やめておきます。早くあなたの能力を教えてください」


「能、力、ですよねーー……。その……、何というか……、あたしの能力は……、パワーアップ系というか」


「おお、純粋な肉体強化ですか! シンプルなほど汎用性は高いですからね」


「は、ははは……」


「紫野原さん、肉体強化は高評価ですよ。持続時間や発動条件なども知りたいところですね。これはメモしておきま、あれ? ペンが折れてしまいました。ちょっとテンション上がっちゃったのかな。すみません、飲み物いただきますね。うわ、グラスも粉々に! それに何だか力が溢れてくるような……。この力ってもしかして」


「は、はい。敵だと認識した相手をパワーアップさせる。それがあたしの能力です」


「では味方は……」


「誠に残念なお知らせですが、味方は強くなりません」


「あなたが僕を敵だと認識していたことにもびっくりですが、それ以上に敵を強くする能力、しかも味方には効果がない能力って。それ、使いどころありますか?」


「……練習試合で強い相手と戦えます」


「練習試合はそもそも相手の強さを計算に入れて申し込むんです。強くされたら計算が狂っちゃいますよ。他にはありますか?」


「……」


「例えば味方を敵だと思い込むとか」


「そんな! 味方を売れってことですか! そんな外道なことを勧めるなんて倫理観ぶっ壊れてますよ! あなたは地獄からの使者ですか! ゴミですか? 不快害虫ですか! 世間が許してもこのあたしが許しません!」


「例えばの話だし、思えるかどうかを聞いただけなのにだいぶ悪口言われたなあ」


「すみません。つい」


「まあいいですよ。では他に有効な利用方法はありますか?」


「……ないです」


「ですよね。なら、うちでは雇えません。だってもしあなたが敵のチームにいてくれたらこちらが強くなれるわけですからね。敵にいてくれた方が嬉しいんで。あと、少々というかかなりバカっぽかったのも気になりましたし。さすがに採用するわけにはいかないですね」


「言い忘れましたが発動条件はあたしが『こいつは敵だ』と見て認識した瞬間から六十分間です。使えるのは一日に一回だけです」


「今更そんなことを言われても困りますね。しかも一勝負平均八分って言われてるんですよ。ほぼ七戦分に匹敵するじゃないですか」


「ありがとうございます」


「いや全く褒めてないですから。七戦も敵が強いままとか恐ろしすぎます。


 え? ということはもしかして僕もあと一時間くらいはこの馬鹿力に振り回されなきゃいけないってことですか」


「そうなります」


「仕事たくさんあるのに」


「パワーで解決できてよかったですね」


「いやほとんど事務作業なんですけど」


「事務もパワーみたいなものですから」


「違いますね。それよりも他にアピールできることはないんですか?」


「……」


「では面接はここまでということで。本日はご足労いただきまして、どうもありがとうございました。本日の結果についてですが、合格の場合にのみ三日以内にメールでご連絡します。連絡がなかったときは不合格ということでご理解くだ」

「ほ、他にもあたしはペットボトルのコーラを十秒で飲みきれるなどの特技」

「お帰りください」



=======


「これで三十チーム、全落ちかあ~~。何がいけなかったんだろう。あ、もしかして占い師なのに占いを披露しなかったのがいけなかったのかも」


「くうう、金持ちになりたいぜ!」


「こうなったら手はひとつしかないな。どこかに応募するのはもうやめる! あたしが新しくチームを作ればいいんだ!」


「そうと決めたら早速募集をしなきゃだな」


「やるぞ!」



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※今日は私の誕生日なので短編も投稿します。プレゼントにルーベラもらいました。おいしいですねルーベラ。

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