天才の大罪
YOUTHCAKE
追跡
『現れました!奴です!』トランシーバーから男を追跡していた政府御用達の治安部隊員の声が聞こえる。
『よし追尾しろ。決して通行人に目立たないように確保するんだ。殺すなよ。』と言った司令官の横で、男の強さを知っている有識者が『フッ』と鼻で笑う様相を呈する。
『なにがおかしい?』と司令官は怒るが、有識者は愉快である風に未だ笑っている。『彼を舐め過ぎですよ。男一人で何とかなるなんて。フハハ。』
現場の小型ドローンはふらふらと商店街を歩く男の無防備でリラックスした様子をありありと映していた。『まるで何も気づいていない様子ですね。』と司令官の助手が言う。
『彼はああ見えてジークンドーの経験者だぞ!?彼の方の能力を甘く見て、男を買いかぶりすぎなんじゃないか?』と司令官は尚も怒っている。しかし、有識者は足をびっこひかせながら怒っている彼から遠ざかり、椅子に腰かけた。非常に面倒くさそうにしている様子が、鼻につく。
『ああ、言ってなかったですね。僕がこうなったのはアイツのせいなんですよ。だから、気を付けた方が良いって言ってるんです。ま、何を言ってもきかないんで、そんなに緊急性はあなたに伝えませんでしたが。その方が楽しいし。』と笑った。
『貴様!国防に関する重要性を舐めているのか!今この国は大変なことになっているんだ!なんだその横柄な態度は!』と司令官は怒る。
『フハハ。彼に頼る時点で終わりですよ。話にならない。』と彼は笑った。
と、そのとき、モニターに映る男が裏路地に入った。治安部隊員が仕掛けるとしたらその裏路地だ。
『裏路地入りました。仕掛けます。』と忠実に声が入る。司令官は息を呑み、『ああ、そうしてくれ。』と言った。あくまで彼を信頼している。
治安部隊員の手には医療用麻酔の内容物をカスタムした特注の薬品が充填されている注射器が握られており、その効果は、対象の人間を思い通りにする自白剤的な効果や、睡眠薬としての効果を併用することができる。
『返り討ちだ。』と有識者は囁く。モニターに釘付けになっている司令官に言い返す余地もない。
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