期間限定で“理想の彼氏”を演じることになった俺。だけど契約終了の頃には彼女のほうが本気になっていた件

てててんぐ

第1話 「彼女ができた……らしい」

 ――彼女ができた。

 正確に言うと、「できたことになった」。


「じゃ、よろしくね。“期間限定の彼氏くん”」


 放課後の教室。

 俺の目の前で満面の笑みを浮かべるのは、学年トップの美少女として有名な 白石(しらいし)ほのか だ。


(……いやいやいや。なんで俺なんだ?)


 混乱する俺を他所に、白石は胸元のリボンをキュッと結び直す。


「まずは情報共有からしよ。私、部活でファン多いから“彼氏がいる”ってことを周りに見せつけたいの。変な告白とか、しばらく止められるし」


「え、えっと……その彼氏役を、なんで俺に?」


「優しそうだから」


(理由、軽っ!?)


 とはいえ、断れない空気というのは確実に存在する。

 白石は根が悪い人間じゃないし、むしろ頼られたのは嬉しい……気もする……けど。


「期間は一か月ね。これは私が勝手に“お願い”してるだけだから、終わったら普通に戻っていいよ。責任とか取らなくていいから」


「あ、うん……」


 その瞬間、白石がふっと笑った。


「それに――」


 机に手をついて、俺の顔の近くまで寄ってくる。


「期間限定って、ちょっとロマンチックじゃない?」


(いや、近い近い近い!!)


 心臓が変な音を立てた。

 本当にこの子は、こういう距離感で普通に話してくるから困る。


「とりあえず、明日から“彼氏として”一緒に登校ね。はい、決定」


「は、はい……」


(今日決めて明日実行!? 俺の生活速度についてこれてる?)


 気付いたら全部決まっていた。

 期間限定の契約彼氏。

 それが、俺の新しい肩書きらしい。


――ただの一か月のはずだった。

 この時の俺はまだ知らない。

 “終了直前に本気になっているのは、彼女のほうだった”なんてこと。


 そしてそれ以上に――


(俺、明日からどうなるんだ……?)


 胸の鼓動を押さえつけながら、俺はゆっくり椅子に座り直した。

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