16話 コキア


♦︎フローナと出会う前。


深い森の中。

昼の光が葉の隙間から細く差し込み、静けさだけが満ちている。


そんな中を歩いていたシェルたちの前に、

ひょこ、と銀髪の少年が現れた。


年は12歳ほど。

伸びた前髪は両目を隠し、手には傷跡がいくつも見える。服で隠れた部分は傷だらけだった。


木の下に座っていて肩に青い鳥が休んでいる。

少年が立ち上がるとパタパタと羽音を立てて飛び立っていった。


コキア「スラ?」


シェル「え?」


少年がじっとシェルを見つめる。


メリサ「もしかして、知り合いに似てたんじゃないかい?」


シェル「そうか・・・

じゃあとりあえず一緒に飯食うか!」


コキア「え?」


メリサ「ちょ、ちょっと隊長!彼困ってるじゃないのさ」


レン「あなたはいつもそうやって・・・」

レンが頭を押さえる。


だがコキアは、そんな三人の様子をじっと見ていた。


 

コキア(誰も僕を気味悪がってない。

僕の体の傷を見ても怯えない。

長い前髪も、喋り方も否定しない。)



コキア「僕、フルーツ以外食べないのでいいです」


シェル「え、そうなのか!?レン、フルーツあったっけ?」


レン「ええ、ありますよ」



♦︎しばらくして。


焚き火を囲んで四人が座る。


シェル「何だ、コキアは感情がないのか!そりゃ大変だ!」


メリサ「こらこら隊長、ストレート過ぎ。失礼だよ?」


コキア「構いませんよ。僕は感情がないので」


シェル「ははは!ほんと面白いなお前!」



コキア(目がキラキラしてる。スラそっくりだ。

彼もいつも僕と話す時、こんな目をして笑っていたんだ。

僕は一度も笑ったことなかったのに。)


 


レン(これは・・・また仲間にする気だな、隊長。)

メリサ(仲間にする気満々だね。)


シェル「血の匂いするな。」


直後、コキアの青い民族衣装の長袖の部分、腕のところが赤く滲み始め、血がポタポタと垂れ始めた。


メリサ「ちょっ、コキア君!腕から血が!すぐ手当てするから待っとくれ!」


コキア「ああ・・・気づきませんでした」


メリサ「気づかないってレベルじゃないよ!?血すごい出てるじゃないか」


コキア「僕は痛みを感じませんから」


コキアは血が出ている間も無表情のまま淡々と話している。


シェル「君もなかなか難儀だねぇ」


メリサ「いや隊長、君もだよ?

腕折れてても血だらだらでもヘラヘラ笑ってるし。普通に怖いからね?」


コキア「シェルさんって変わった人ですね」


メリサ「いや、君も相当だから」


キッパリ言い放つメリサの一言にシェルが笑う。


シェル「だな!ははは!」


風が吹き、桜が舞っていく。


コキア(ああ、この人はスラと同じように笑うんだな。)

 

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