初恋の人の親友と知らずにヤってしまった

湊カケル

第1話 「一度きりの関係だったはずなのに……」

 「……ねぇ早くしちゃおー?」

 

 俺のベッドに女の子が座っている、それも今日出会ったばかりのとびきり可愛い女の子。

 

 そんな子があろうことか俺をベッドに誘っている、比喩とかじゃなくて、そのまんまの意味で、SEXをしようと誘っている。


 「ッ……うん」


 この子の名前も知らない。

 友達に無理やり連れてこられた合コンで会っただけ行きずりの女の子。

 

 パッと見は年上ぽい。

 目に垂れるほどの前髪と長く切られた襟足 。ウルフヘアって言うのか?アイロンで外はねされた髪は、端正な顔立ちも相まって大人っぽい印象を抱かせる。

 

 身長も女性にしては高く、俺と目線がさほど変わらない。

 少なくとも165センチ近くはありそう。

 

 大人っぽい見た目から紡がれる声は女性らしい、というよりはかっこいいよりの、少しハスキー目の声。


 初体験する女性として申し分ない、むしろきれいすぎるくらい。

 ……一つ心残りがあるとすればを初体験が、長年恋焦がれた片思いの子とは違うことくらい。

 でも……逆に正反対だからいいか、いまは何も考えず忘れたい。

 変に似てたりしたら頭にちらつきそうだから。

 

 付き合ってる訳でもないし、片思い相手に操を立てる必要もない。ましてや俺は初恋相手には一度振られている。


 (だからこそ俺は変わらないと)


 「うんしよっか」


 目の前の彼女は女の子座りをしながらも、俺の方をちらちらと伺っていた。


 「……じゃあ脱ぐから、そっちも脱いで?」


 ふぅ、と彼女は軽く息を吐くと、一気に服を脱ぐ。

 なんともおもいきりがいいことで。


 「……ッ」


 初めて女性の下着姿をみた。何とも情欲を沸き立たせる。

 

 (ってそうだ、女の子が下着姿になってる中、俺だけ服を着たままなのもおかしいよな!!)

 

 内心はやる気持ちを必死で抑え、恥ずかしいけど何食わぬ顔をして、服を脱ぐ。ここで脱がなきゃ男が廃る。

 ……そもそも俺が先に脱ぐべきじゃ、とも思わなくはないけど一旦置いておく。

 

(こういうところが好きな人に振られて、てかそもそも恋愛対象に見られてなかった理由なんだろうな)


 失敬。全然一旦置いておけなかった。

 

 ただ、これ以上ネガティブになったら気落ちが萎えそうだから頭を振って無理やりネガティブな気持ちを追い払う。

 

 考えないように、ものの勢いで服を一気に脱ぐ。

 パンツ1枚。

 季節はまだ春になったばかりで、肌に張り付く空気は寒い。


 「わっ、いい筋肉してるねー」


 下着姿でちょこんと座った彼女は、いつのまにか布団を服代わりに体を隠して、俺の裸をじーっと見ていた。


 「昔運動してたから、……て、てか俺も布団に入っていい?ちょい寒い」

 

 あと恥ずかしいのもある。


 「まぁいいよ?もともと君の布団だしー逆に私が聞かなきゃいけなかったよねー、あははめんご」


 会話のノリは以外と軽い。

 上辺だけの会話が、不思議と心地よい。

 

 彼女が開けてくれたスペースに身体を滑り込ませる。

 布団に入れば自然と彼女と身体が触れ合う形になり、女の子特有のふわりといい匂いが漂ってくる。


 いつも使ってる布団なのに、別物みたい。

 

 「あ……そういえば俺はお姉さんの事なんて読んだらいい?」


 後腐れなく、大人になるだけの関係。

 そう言われてここまで来たため彼女の名前も知らない。

 だけど、これから身体を交えるのにもあんたとかきみとかじゃさすがに呼びにくすぎる。

 

 「今日これっきりの関係。お互い初めてを捨てるだけだから本名は言わない約束だしなぁ……、うーんそうだなぁ【名無しちゃん】でいいよ」


 お互いに初めてを捨てるだけ、お金とかそういうのは交換しない。そういう約束。

 ……だけどお互いに初めてというのは、俺は本当だけど、彼女が初めてというのはさすがに嘘だろう。こんなに可愛いんだから男の一人や二人いてもおかしくない。男を萎えさせないために、誰にでもそう言っているんだと思う。

 

 所謂大人のテクニック……なんだろうな。男は馬鹿だから、嘘とわかっても浮かれてしまう、もちろん俺もそのうちのひとりな訳。


 ただそれはそれとしても流石に名無しちゃんって呼ぶのもなぁ……


 「名無しちゃんじゃ長いし……じゃあ【ナナ】って呼ぼうかな」


 そう呼ぶとなぜか彼女は驚いたように目を少し細めた。

 なんだ?


 「……ま、まぁいいよ?」


 「じゃあ俺はこの流れで行くと【名無し君】?」


 「うーんそれは呼びにくいなぁ……」


 いや最初そう提案してきたのそっちだけどね?!

 って言うのを何とか抑える。

 

 呼びにくいって……やっぱ女の子難しいわぁ。

 でもこのちょっと不思議な感じどこか俺の初恋の人に似てる気もする。顔も声も髪型も全部違うはずなんだけど。

 

 「……あー、わかった……じゃあ【いちくん】とかでどう?」


 「えっ」

 

 今度驚かされたのは俺の方だった。

 それは昔の俺のあだ名だったから。

 この子、俺の本名知ってるのか?【紫藤 圭一しとう けいいち】っていう俺の名前を。


 「な、なんで?そう思ったの?」


 「え、私の初めての人だから、一番目という意味で【イチ】君」


 思ったよりも安直な考えだった……いや人のこと言えないか、俺も大概だったし案外似た者同士なのかもしれない。

どうやら本名がばれたわけじゃないらしい。


 「何それ」

 

 思わず苦笑が漏れる。

 

 「一度きりの関係だからそれくらい適当でいいでしょ?」


 布団の上の彼女も八重歯を出して、にひひと笑う。

 危なかった、俺に片思いの人がいなかったらうっかり好意を持ってしまいそうな危険な笑顔だった。一度きりの関係なのにそんな気持ち持ったらあとが悲惨すぎる。


 「そりゃそうだ」


 お互いに見つめあう。

 合図とかはなく自然と、お互いに下着に手をかけた。

 

 布団がずれ、彼女のミントグリーンの下着が露わになる。

 着やせするタイプらしく、高校生にしてはスイカばりの大き目のモノを持たれている。

 

 ブラを外す様子を思わずじっと見つめてしまう。

 少しブラが小さいのか、外した際に胸が解放されたように弾ける。かなり大きい。

 

 俺の視線に気づいたらしく、彼女は所謂手ぶらという状態でこっちにジト目を向けてきた。

 

 「ちょっ、あんまガン見しない!恥ずかしいんだから……ほんと男って大きいおっぱい好きだよねぇ……ほんっとばか」


 呆れた声で普段苦労してるんだろうなぁってのが伝わってくる。


 「はい好きです大好きです」


 だけど気持ちに嘘はつけない。

 ナナは一瞬目を丸め、そしてすぐにあははと笑いだす。

 

 「素直すぎる、あー馬鹿だ馬鹿がいる!」


 「これからやる相手に隠してもしょうがないでしょ、あ、でも好きなのは大きいおっぱいだけじゃないよもちろん!おっぱいみんな大好き」


 俺の好きな人も別にめちゃくちゃ大きいというわけじゃないしね。


 「うわーきもぉ、ちょっと引くわー……てか私だけ見せるのもあれだしあんたのもみせなよ」


 また恥じらう気持ちも出そうになるが、そういうのを出さないのがモテる男だろう。

 そういう積み重ねが片思いの子と付き合うために必要なステップかもしれない。


 パンツを手にかけ、潔く脱いで、堂々と立つ。

 恥ずかしいけどここで漢を見せないでいつ魅せるというのか。

 

 「……あ、あの、何も仁王立ちしろとまでは言ってないんけど〜」


 苦笑しすこし気圧された様子のナナ。

 たしかにそうだった、少し恥ずかしくなってきた。


 「……それにしても君のもすごく仁王立ちしてるね、ピンっと張ってお腹にくっつきそう……さ、触ってみてもいい……?」


 「う、うん」


 おずおずと出された手が触れる。

 ひやりとしたでも柔らかい手の触感が下半身を駆け巡る。

 初めて他人から触られる感触に、思わず震えてしまう。


 「わっ、大丈夫?痛かった?」


 慌てたように手を引っ込めるナナ。


 「だ、大丈夫、思わぬ刺激だったから……続けて大丈夫だよ、逆に俺も触っていい?」


 「う、うん」


 お互いに触りやすいように向かい合わせで座る。

 彼女の胸にゆっくりと手を伸ばす。

 おっかなびっくり、ゆっくりと近づけていき……とうとう触れた。


 指で触れるとふにゅりとした柔らかさと、指が吸い込まれるように沈んでいく。

 俺は、今度は手のひらで胸全体を優しく包み込むように触れるけど……片手で収まりきらない。


 でかい。


 「……意外と優しいんだね」


 「そ、そりゃそうでしょ?理性が飛びそうだけどね……自制しないと、おっぱいに顔つっこみそう」


 「きもぉ……でもちょっと驚いた童貞ってもっとがっつくかと思ってた、イメージ的に」

 

 「紳士だからね」


 「童貞紳士が言ってるわ」


 「今日でただの紳士になるんだよ」


 馬鹿な会話をしているうちも俺の手はおっぱいを優しく揉み続ける。

 最初は片手だったのが、気づけば両手で揉んでいた。


 何時までも飽きない柔らかい感触。

 触っているとふと、手の平にコリっとした突起があるのに気づく。


(これって……)


 俺は優しくそれをつまんでみる。


 「ひゃんっ」


 「わっ」


 今まで勝ち気な声をあげていたナナが、驚いたように声をあげた。


 「ご、ごめん痛かった?」


 「う、ううんっ驚いただけだけ……いいよその調子で触って。それにしてもイチ君のこれ……すごく熱を持ってて硬い……本当にこんなのはいるの?」


 俺のを両手でさわさわといじりながら、そんなことを言うナナ。


 「入るんでしょ?人類の営みの歴史を見るに」


 「壮大な視点すぎる、それに私のに入るかは分からないよ……あほ」


 もう気持ちよさやらなんやらで何話しているのか分からなくなってきた。

 頭がぽわッとしてくる。


 「……ナナ、そ、そろそろ」


 「……う、うん……イチ君のもドロドロになってるしね、いいよ?」


 ゆっくりと俺は彼女に覆いかぶさる。


 必然彼女の顔が間近に見えるわけで。

 

 長いまつげとすっと通った鼻筋。

 薄く赤くは発色した唇と特徴的な八重歯。


 彼女の二重の瞼が俺をじっと見つめる。


 「……き、きて?」


 今日出逢った子で俺は童貞を卒業する。

 もう出会うことはない一度きりの関係。

 これっきりの、行き摺りの関係。


 その後、最初だけは優しくした、だけど優しくできたのは最初だけだった。

 その後は無我夢中で動物のように腰を振っていた。

 お互いにあるのは肉欲だけ。


 4月の部屋に響く行為の音と嬌声。

 恋愛感情のない、大人になるための通過儀礼。

 ただのステップアップ。


 恋とか愛とかそんなものじゃない、大人の一歩。

 明日俺は高校生になる。



 一連の行為が終わると驚くほどあっさり彼女は帰っていった。

 

 「じゃあね、イチ君……約束通りこれっきりね?」


 玄関を出る時ナナは笑顔で話す。


 「それとごめんね? シーツ汚しちゃって」


 「ううんこっちこそごめん激しくして。洗っておくから気にしないで……でも驚いた初めてっていうのが本当だったなんて」


 「ひどーい疑ってたんだ。最初からそう言ってるじゃん、私が誰にでも声をかけるわけないでしょー」


 「ってことは俺はナナのお眼鏡にかなったのかな?」


 「まぁ一回くらいならってことね? でもあれだよ? 好きな子にはあんなに激しくしちゃだめだよ? 途中で私が制止しても聞かなかったしさぉ」


 「それは本当にごめん」


 まじで申し訳ない。

 自制が効かなかった。身体重ねるのすごい。

 

 「まぁ許して進ぜよう、悪い初体験じゃなかったと思うし……比較対象ないから分からないけどさー」


 にひっと彼女は八重歯をみせて笑う。

 

 「ばいばいイチ君。好きな子と上手くいくことを米粒くらい願ってるよー?」


 「俺もナナのストレスの原因がなくなることを5円玉くらい祈ってる」


 「「なんだなにそれ」」 


 お互いに笑って、彼女は振り返りもせず帰っていった。

 なんというか嵐のような女の子だった。


 部屋に戻り、ぼーっとしてたらいつの間にか寝る時間になっている。


 「……これで大人になった。俺にも大人の余裕も出てくる……明日からの高校生活も頑張れる、願わくは、好きな人、赤城さんと一緒のクラスになれたらいいんだけど。……どうせならそれもナナに願ってもらえばよかったなぁ」


 あ、でもナナは5円玉くらいにしか祈らないし関係ないか。

 赤城さんと一緒のクラスになれなかったらどうしよう、今まで全部同じクラスだったのが俺の誇りなのに。

 やばい不安で夜も眠れなさそう。


 別の事を考えて気を紛らわせよう。

 別の事別の事……うーん。


 考えたのはやっぱりさっきのこと。

 ベッドに戻ればそこには確かに赤いシミがついている。


 「さっき俺ここで……卒業したのか」


 なんというかあっけなく終わってしまった。

 最初は失敗しがちというけど、俺目線では悪くなかった気がする。

 ……ナナがどう思ったかは分からないけど。


 「うわしまった、どうだったか具体的な感想を聞いた方が……いやそれはさすがにないか」


 恋愛したことない俺でもわかる。

 流石にデリカシーにかけると……でも悪くないといってたな。

 なんだかんだナナなら答えてくれそうな気もするけど。

 

 ……それにしても。


 「結局ナナって何歳だったんだろう? 少なくとも俺と同い年ってこともないだろうけど……高校生ではあるんだろうけど」


 かなり大人っぽかったし高2とか高3だろうか?


 「まぁもう出会うこともないし考えてもしょうがないな…………年上のお姉さんに卒業させてもらったと思っておこう」


 これも春の夢の如しってやつか?

 なんて、な。平家物語の通りだな、ほんと。

 一瞬だった。 

 

 そう思っていた、思っていたはずなのに。


 それが何で。

 なんで。


 翌日新しく入学する新百合ヶ丘高校校舎の正門前。

 クラス分けが張られた掲示板の前に、彼女はいた。

 昨日大人の階段を一緒に上った彼女が。


 「なッ……」


 それだけなら問題ない。

 問題ないことはないけど一旦今は置いておく。

 もっと喫緊の問題があるから。


 「あ、あなた」


 な、なんでナナが────俺の好きな人 赤城 日葵あかぎ ひまりさんの隣にいるんだよ、しかも抱き合ってめっちゃ仲良さそう!!

 

 ナナのの胸には赤城さんと同じ新入生の桜の花。

 ……え、まさか同い年?


 いろんな疑問で俺の頭が?で埋まっていると赤城さんが俺を見つけて、手を振ってくれる。


 「おーい紫藤君!」


 うん可愛い。

 けど俺の頭はそれどころじゃない。


 頭を整理しようとこの場を離れようと思ったのにそれもできなくなった。 

 俺の姿を見つけた赤城さんが、ナナと一緒にこっちにやってくる。

 やってきてしまう。

 

 逃げ出すわけにもいかない。

 そんなことをしているうちに目の前には二人の女子生徒。

 

 「おはよう紫藤君、高校でもよろしく!」


 「よ、よろしく。……え、えーとそちらは?」


 友達とかじゃなくてそこいらであって仲良くなった人とかであってくれ。たのむ!

 だけど俺の願いも虚しく──


 「──あ、紹介するね私の親友の【蒼井 七葉あおい ななは】。それで七葉!こっちが同じ中学で私のクラスメイトだった【紫藤 圭一しとう けいいち】君。私たち同じクラスみたいだから仲良くしよっ!」


 溌剌として純度100%の笑顔を浮かべる赤城さん。

 そっかナナって蒼井七葉っていうんだ、はははそりゃナナって言ったら驚いた顔するわけだ。

 しかも同級生なのも確定したよ。うん。


 「「よ、よろしく」」


 ナナは苦虫をかみつぶしたようなひきつった笑みを浮かべている。

 鏡を見なくても分かる、きっと俺も似たような表情を今しているはずだ。

 

 どうしよう……昨日童貞を捨てた女の子が好きな人の親友だったんだけど。


 

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初恋の人の親友と知らずにヤってしまった 湊カケル @kakeruminato1118

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