サラリーマンが見た、青春の「修羅場」一歩手前の物語

一塚 木間

第1話


 時刻は7:45 普段とは違うルートで、営業先へ向かっていた。

 ラッシュとは関係のないガラガラの車内で、私はボーっとしている。

 スマートフォンを見る気にもなれず、見慣れない窓からの風景を見ていると、停車駅についた。


 電車の揺れが止まり、乗車する人が座っている私の横を通り過ぎる。

 一人二人と乗車する中で、一人大きい荷物を背負った女子高生が目についた。

 

 女子高生が珍しいわけではない。

 私が目が行ったのは、女子高生が背負っていた物に驚いたからだ。

(え? あのギターケースのメーカー。最低価額●0万クラスだよな?)


 そう私が驚いたのは、その女子高生が高額のギターを背負っていたからだ。

(親が買ってくれる値段じゃないから、頑張ったんだろうな)と感心していた。


 女子高生は窓際に背を持たれている。それがかなり絵になっていた。

 あまり見てはいけない。怪しまれて駅員に呼ばれるのは本意ではない。


 私はまた外の景色を眺めていた。

 そして、次の停車駅で問題が起きた。


 電車が止まり、扉があいた。


 そして女子高生の前に男子高校生が現れた。

 同じように楽器を持っている。同じバンドメンバーのようだった。

 会話はほぼ聞こえない。だが、時折聞こえるのは音楽の事だったが。


(男子君。その声色……周囲には勘違いされちゃうよ? そのトーン、大人からしたら口説くときのトーンだよ! そのまま言ったら勘違いして修羅場が見えるよ!)


 と、少しドキドキしながら、次の駅で二人は降りて行った。


 えーっと……これ青春だよね? 修羅場じゃないよね?

 

 ※現実に起きたことなので、ある程度ぼやかしております。

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サラリーマンが見た、青春の「修羅場」一歩手前の物語 一塚 木間 @itiduka

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