僕の彼女はおかずを欲しがる
誘惑のカラメル
第1話 今日はとんかつが欲しい
屋上にぽつんと置かれたベンチに座り、弁当を袋から出してフタを開ける。
右にはきつね色に揚がったとんかつが四切れ、申し訳程度のたくあんときんぴらごぼう。左には白いご飯。せめてふりかけの一つでも欲しいと思い苦笑いする。
僕、
いただきます。そう言って箸をケースから取り出した瞬間、屋上のドアが勢いよく開いた。
「敬ー! お弁当見せてー」
「いいですよ……ん?」
僕のことは前から気になっていたようなのだが……どうやら僕より弁当のおかずが気になっていたみたい。正直寂しい。
隣に密着してとんかつをまじまじと見つめる穂香。よだれをじゅるっとすする音が聞こえ、本気で狙っているのが分かる。
箸でとんかつを一切れ掴んで、穂香の目の前まで持っていく。
「食べますか?」
「んんっ!!」
とんかつは既に穂香の口の中にあり、ほっぺたを両手で抑えて目を輝かしている。
相当美味しいのだろう。そう思って一つ食べる。
丁度いい柔らかさの肉と衣が口の中で纏まり、とんかつにかかっている醤油の味が美味しさを更に引き立たせている。
お母さんの料理はやっぱり美味しい。対して穂香のお弁当はどうだろう?
穂香がお弁当のフタを開ける瞬間を心待ちにしていると――
「敬のお弁当ってシンプルだよね」
突然の言葉に箸が止まる。それはどういう意味だろう。
穂香は僕のお弁当に憧れているのかも。でも、僕としては穂香のお弁当の方がいいと思っている。
綺麗で見た目がいいだけではなく、バランスが取れてそうな食事なのが一目でわかる。
「僕は穂香のお弁当の方がいいな」
「あー……思ってる事は同じなんだ」
穂香がようやくお弁当のフタを開ける。
オムライスに申し訳程度のブロッコリーが二つ。
穂香が僕にオムライスをくれるはずはなく、無言で食べ始める。同じように僕も食べ進める。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでしたー!」
弁当を袋に入れて時計を見ると、十二時四十五分になっていた。
穂香が慌てて立ち上がるのでどうしたのかと思っていると――
「次は移動しなきゃいけない授業だよね!?」
「そう……だったかな」
確か次の授業は数学だから移動しなくてもいいと思う。口に出そうとしたが、穂香は一足先に屋上のドアを開けていた。
「あ、敬。約束して」
「何を」
「明日のお昼ご飯から敬語はあんまり使わないようにっ!」
「わかり……はい、いや、うん」
僕の返事を聞く事も無く階段を降りていく穂香。
本当に自分が穂香の彼氏でいいのか疑問に思っているから敬語交じりの変な口調になってしまっている。
なんて、穂香が聞けばどう思うだろう。
「とにかく、明日からは敬語を使わないようにしよう」
自分への戒めとして口に出し、屋上を後にした。
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僕の彼女はおかずを欲しがる 誘惑のカラメル @asert
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