その刺繡の価値は、花咲く頃までわからない

人は皆、何かを作らずにはいられない。

眠る前にこっそり、自分の部屋で小さなハンカチを縫う人がいる。
あるいは高級服飾店の作業台で、サバサバと何着も何着もドレスを仕立てる人がいる。
広大な畑に畝を築き、真っ黒に日焼けしながら茶葉を育てる人だっているだろう。

なんのために?

たとえば、嫌なことを忘れるために。
さえない自分を慰めるために。
あるいは単に、お金のために。

でもそうやって作られた物の本当の価値は、
かならずしも作った本人だけには決められない。

手に取った誰かが、時にその価値をポンと見抜く。
そこに隠された魔法をそっと掬い上げて、
かけがえのない一品としてたいせつにする。

本作が読者の心をやさしく打つのは、
主人公セラのスキル『刺繍』の価値が
そういう定まり切らない広がりを秘めているから。

だからこそ、この物語にはきっと続きがあるんですね。

読んでよかった、素敵な作品です。

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