第18話 鈴木裕美です。母のOKもらいました!

母陽子と向かい合って座りました。

(母のニヤニヤの理由は何?)

「ようやく裕美にも彼氏ができたの?」

(その皮肉っぽさは・・・)

(でも、まだ、彼女になりきれていない)


「どうかな、送ってもらっただけかも」

(田中さんの反応が、イマイチ薄い)


「下北沢のジャズバーで知り合ったの?」

(・・・何故、それを?)


「どうして知っているの?」

(二か月は客席、ようやく今日、隣の席)


「マスターの奥さんと、実は高校教師仲間で、いろいろとね」

「裕美も小さな頃会っているでしょ?」

(母は、横浜⦅私学⦆高校の国語教師です)

(子供の頃に、マスターの奥様とお逢いしていたのか・・・うかつだった)


「それでマスターから奥様を通じて、母さんか」

(知られていたのか・・・でも、第二次捕獲は失敗したし)


母陽子は、プッと吹いた。

「でも、まさか健ちゃんとはね」

(その笑いは何?突然、健ちゃんって・・・おい!理由を説明しなさい!)


でも、さすがに、私も感づいた。

「もしかして・・・高校で教えたの?」

(横浜か・・・世間は狭いな)


「うん、なかなか面白い子だった」

(・・・その具体性に欠ける表現は、まどろっこしいぞ!国語教師!)


「真面目な子で、文章も、言葉を吟味して書くタイプ、美文家だね」

(凝り性の職人気質ですから)

「読書量も、半端ではないね」

(うん、今もすごい)

「あの年で、ドストエフスキーの長編をほとんど読み終わっていた」

(罪と罰100ページで、本棚に永久保存しました)


「クリスマスコンサートでピアノ弾いてもらうの」


「へえ・・・聴きたいな」

(母陽子の顏が輝きました)


気になることがあったので、聞いてみた。

「田中さん、モテたの?」

(そういうことが、本当は聞きたいの)


母陽子は、意味深な笑顔。

「狙っていた女の子は、多かった」

(うーん・・・狙わないで、今さらだけど)

「授業中も、いろんな子から、チラチラ見られていたよ」

(授業中に、何たるフラチな!・・・今さらか・・・)

「でも、健太君は、無反応」

(ドキドキして、ホッとした)

「軽い話が、苦手かな、言葉を吟味する子だし」

(今でも、そうだ、余計なことは言わない)


「今は、調布に住んでいるらしいの」

(?・・・母の表情が変わらない)

「どこかの防音アパート」

(ここでも、ニヤニヤしているだけ)


「駅で会ったこともあるし、スーパーでも何度も会ったよ」

「キチンと、ご挨拶をしてもらった」

「健ちゃんのアパートの前で別れたよ」

(知らぬは、私だけ?情けない気がして来た)


「でも、まだまだ、ようやく今日話したばかり」

(独占して拘束したけど、まだ彼女未満を自覚します)


母陽子は笑顔です。

「私は、健ちゃんならOK、一度、連れて来てよ」

「ゆっくり話したいし、急ぎで頼みたいこともあるから」

(こら!娘を優先しなさい)

「ほら!モタモタしない!連絡して!」

(うれしいような・・・恥ずかしいような)

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代役合コン出席と、その後の経過について 舞夢 @maimu

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