あたたかなおもてなし
チェンカ☆1159
あたたかなおもてなし
ある日の午前中、リッカはキッチンで仕込みをしていました。
小鍋にベリーとお砂糖を入れ、ぐつぐつと煮込みます。ゆっくりかき混ぜていると、ふわりと甘い香りが辺りを漂い始めました。
「よし、こんなものかな」
じっくり煮詰めて完成したのは手作りのジャム。リッカはそれをあらかじめお湯で温めておいた瓶に詰めました。
これで今日の仕込みはおしまい。あとは午後からのお茶会のために机の上を片付けておくだけ。
鍋を洗い終えたリッカは軽く伸びをすると、キッチンをあとにしました。
その日の午後三時前、ピンポーンとチャイムが鳴りました。
扉を開けると、そこには二人の女性が立っていました。
「リッカ、来たよー」
「ちょっと遅かったかしら?」
「ハナメさんもマツキさんもようこそ。まだ二人来てないんで大丈夫ですよ」
リッカは苦笑しつつ言いました。
「二人って言うと、フウナとサトリだよね?」
「あの子達よく遅刻するものねぇ」
「そうなんですよ。とくにサトリなんて酷い時には――」
「ちょっとリッカ?あたしそんな遅刻してないって」
「いやサトリ、何言って――って、もう来てる!?」
三人が驚く中、サトリは胸を張って言いました。
「へっへー!あたしだってちゃんと時間通り来るんだからね!」
「ちょっとサトリちゃ〜ん!先行かないでよぉ〜っ!」
遅れてやって来たのは最後の一人であるフウナです。
リッカはため息を零しつつ、中へ入るよう促しました。
「まぁ、みんな揃ったんで、中でお茶会しましょうか」
「やったぁ!」
「おじゃましまーす!」
「私クッキー作ってきたの!」
「うん、フウナちゃんのそれは嫌な予感がするわね」
「なんでですかぁ、マツキさん」
そんなやり取りをしつつ席についた彼女達に、リッカは手早くジャムの入った小皿とスプーンを配ります。
「ん?リッカ、これ何?」
「ジャムだよサトリ。今日は変わった飲み方でもしてもらおうかな、なんてね」
「変わった飲み方って、どんな飲み方?」
「ハーちゃん、たぶんロシアンティーのことじゃないかしら」
「さすがマツキさん、詳しいですね」
「そりゃあ、紅茶を嗜むものとしては当然の知識よ」
「へぇ、ロシアンティーってものがあるんだ」
感心したハナメはリッカに尋ねます。
「それでリッカ、ロシアンティーはどう飲むの?」
「まずはスプーンでジャムを舐めます。それから紅茶を口にします」
「最初からジャムを紅茶に混ぜたらだめなの?」
そう尋ねたのはフウナでした。
「まぁ、日本ではその飲み方も良しとされるけど、本場は舐めながら飲むのが一般的みたい」
「ほえぇ、難しいねぇ」
「……まぁ、私とすれば美味しければどっちでも良い気もする。けど」
「けど?」
四人からの注目が集まる中、リッカはどこか言いにくそうな様子でこう口にしました。
「せっかく手作りしたジャムだから……その、一口位はそのまま味わって欲しいな、なんて」
その瞬間、フウナとサトリが立ち上がり、リッカに抱きつきました。
「え、ちょっと、二人とも?」
「ありがとうね、リッカ」
「すっごく感激してるよ」
そんな三人の様子を、歳上であるハナメとマツキは微笑ましそうに眺めていました。
あたたかなおもてなし チェンカ☆1159 @chenka1159
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