したはしき 🌼

上月くるを

したはしき 🌼



冬暁のスカイツリーは全方位

暖房の風の襟もと吹き過ぎる


小刻みに影もふるへる冬すみれ

くきと葱折れたる畑を風わたる


クレーン車の屹立したる冬木影

はんこ屋のまちに何軒年つまる


枯菊の香を這はす庭しづまりぬ

冬帽子ひとのかたちの影のわれ


山茶花や民に慕はる武士の水

そのむかし馬と斃れし冬至梅


葉牡丹や縁のなかりし道いくつ

五年後はいかに老ゆるや玉珊瑚


負ふた子の息頼もしき寒暮かな

遠く住むひと慕はしき石蕗の花


手袋にまづしき時代ほたほたと

寒雷やプロレタリアのゐない島


われといふ怪物を飼ふ冬の梨

卓に置く無心ひとつや晩三吉


目端よく利きたるおかみ紅葉鍋

寒波来て紙の世界にこもりけり




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

したはしき 🌼 上月くるを @kurutan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ