感想を書けなくなった人へ――創作の端にいる、あなたへ

霧原零時

第1話

あなたは今――

誰かの作品を読んで、心を動かされたのに、

指が止まってしまうことはありませんか?


いったんは感想を書いたけど、

やっぱり消してしまったことはありませんか?


「作者に迷惑をかけたくない」


「失礼なことをしたらどうしよう」


――あなたのその誠実さと優しさが、

言葉をためらわせているのかもしれません。


私は小説を投稿する作者の端くれです。

そんな私の元に、先日、ある方から感想をいただきました。


それで、私はその人の書いたエッセイを読みに行きました。


それは――


「初投稿作の最終話を投稿して4日後、

 突然ほかの人の作品に感想を書けなくなった」

という話だった。


……ということは、もしかしたら、

このもらった感想は、とても勇気を出して書いてくれたのかもしれない。


そう思って、

その後の「1か月後」~「3か月後」まで続くエッセイも読み進めて、

ひとつ思ったことがあります。



この人は、

私の知る創作界隈でも、ほんとうに稀な“誠実な人”だ。


文章が丁寧とか、語彙がどうとか、そういうことではない。


言葉の奥底にある――


「相手に迷惑をかけたくない」

「失礼なことをしたくない」

「読者としても作者としても誠実でいたい」


その気持ちが、まっすぐに溢れていたからだ。


だからこそ、

感想を書けなくなるほど“強すぎる優しさ”を背負ってしまったのだと思う。


■ そこに見えた “強すぎる優しさ”


・自己評価が低い

 (「私の稚拙な言葉では、作品に釣り合わない」と思ってしまう)

・相手に失礼になることを恐れる

 (「作品の意図を誤解した感想を書いたら、

 作者を不快にさせるのでは」と不安になる)

・“誠実でいたい”という思いが強い

・責任感が強い

・人の好意を深く受け取りすぎる

 (作者の労力を知っているからこそ、気軽に言葉を投げられない)



こんなふうに、ひとつひとつ丁寧に心を動かせる人は、

創作者に向いているのかもしれない。

――だけどその反面、心の疲れがたまりやすいとも感じた。


■ もし言葉を届けられるなら


もし、この人に直接言葉を伝えることができるなら、私は迷わずこう言う。


「人気作家さんへ感想を送っても、誰も“売名”なんて思いませんよ」

「あなたが私にくれた感想の言葉は、丁寧で誠実でしたよ」

「あなたの“感じたまま”の感想が、とても嬉しかったですよ」

「気にしすぎなくて大丈夫。あなたのペースでいいんです」


あなたは、気にしすぎるくらい相手を思ってしまう。

“人に迷惑をかけるくらいなら、自分が黙っていたほうがいい”


もしそんなふうに思っているなら――

はっきり言います。


そんなことはありません。


あなたの感想をもらえることは、本当に嬉しい。


それは、きっと私だけじゃない。

多くの作者も、そう感じているはずです。


■ 感想は“文章力の勝負”じゃない


・作品を読まずAIに書かせた完璧な感想じゃなく、

・テンプレの褒め言葉でもなく、

・あなたがちゃんと作品を読んで、

・あなたがちゃんと何かを感じて、

・自分の言葉で書いてくれた感想。


それだけでいい。いや、それが一番いい。


そして、その感想が、


「この作品おもろ!!」


これだけでも、作者には十分伝わるんです。


それだけで創作者の気持ちは軽くなるし、

作品にもう一度、火が灯る。


感想とは――

上手な言葉じゃなくていいし、そんなに複雑なことじゃない。


■ 最後に


感想を書くのが怖くなる日もある。


自分の文章が急に信じられなくなる日もある。


相手の反応が気になって、動けなくなることもある。


考えすぎるほど、考えてしまう日もある。


だけど、……だからといって、


“自分が黙っていた方がいい”なんて思わないでほしい。


八方美人で頑張っても、

世界中のすべての人に、気に入られることなんて無理です。


どれだけ誠実に丁寧に書いた感想でも、


「いやだな」と思う人はいる。


私のコメントなんか、

「やっほぉぉぉー!」から始まったりもする。


正直、初見の人からしたら

「なんだこいつ、失礼な奴だ!」だろうと思う(笑)


でも、それでも受け取ってくれる人がいる。

怒って返事をくれない人もいる。


それでいいじゃないですか。


なぜなら、自分はその作家さんを応援してるし、悪気も無い。

ただ正直に気持ちを書いただけなのだから。


それで十分だと思います。


喜ぶ人も、喜ばない人も、

そのすべてが“自分と接点を持った人たち”なんだから。


あなたの感想の気持ち、

ちゃんときっと分かっている人には伝わっています。


だから私も、もっといいものを書いて――

もっともっと、あなたの感想をもらいたい。


……そんなふうに思っている作者は、

きっと他にもたくさんいます。


だからあなたの言葉――そのままの言葉を、

またいつか、聞かせてください。


――いつまでも、いつまでも待っていますから。

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