2話

モブ達も俺の隣に華音がいるから直接的に虐めてくるようなことはしない。


本来の歴史では華音が一人でトイレに行ったり中庭で弁当を食べる時にいなくなった隙を見て結弦を虐めていた。


オタクの虐めってのは不良のようにど直球に人前だろうと構わず殴ったり蹴ったりと暴力を振るう虐めがメインだが、オタクの虐めはそれよりもタチが悪い。


果たして、今の俺が歴史通り華音のいないところで虐められるのかどうかだ。


俺は授業が終わり十分間の休憩時間俺は男子トイレで一人用を足していた。


「ふぅ、今んところ虐めはないようだが……どうやってこれから起こる事件を未然に防ぐ必要があるがどうしよう。結弦の奴もあれからどこにいるかも分からんし……」


一人でぶつぶつ呟いているとドアが開き俺の方へと近づく。


「ナンデカッテニトイレシテル」


振り返ると豚のような男が片言の日本語で俺に威圧をかけながら問う。


「はっ?何でトイレ行くだけでお前らの許可いるの?頭イカれてんのか?」


「オマエ、オレニサカラッタ。ウジニホウコクスル」


この片言豚野郎、マジでムカつくな。


「もう我慢できねぇ……」


俺は堪忍袋の尾が切れそうだ、こんなバカの相手して計画を台無しにするつもりはない。


「オイ、シカトスルナ!」


「ムカつくなぁ、豚野郎今から人間社会というものを教えてやるから覚悟しとけ!」


俺はネクタイを緩め、ブレザーを床に脱ぎ捨てる。


『辞めろ!偽結弦!ここで暴れたら人生崩壊事件が……』


「うるせぇ!黙ってろ!」


「ナニヲヒトリデキレテル?」


「黙れ豚!お前もうるせぇ!ささっと殴ってみろよ!ザコ豚野郎!」


もう人生崩壊事件なんて知らねぇ、どうせ一回死んでるんだ!失うものなんかない。


こんな雑魚どもに舐められたまま終わるなんてごめんだ。


わざと大きな音を鳴らしながら歩き豚野郎に近づく。


豚野郎は一瞬焦り額から汗が流れていた。


「バカニシヤガッテ!」


拳を握り締めぶくぶく太った腕を振り下ろす。


脂肪でスピードは殺されていたため、俺は軽く避けることができた。


ただ、真っ向勝負してもこの体ではダメージは通りにくいだろう。


俺は豚野郎の顔面にフライングニーキックを喰らわせる。


「ブヒィ!」


鼻に綺麗に入ったから豚野郎は両手で鼻を抑える。


その時に前傾になって隙ができた。


俺はそれを利用して豚野郎の首を絞める。


ギロチンチョークを喰らえばどんなに体格が良かろうが抜け出すのは難しいはずだ。


特にあの豚野郎は格闘技を習ってる様子もないから特に。


十秒が経つと豚野郎は気絶した。


そして奴が起きるまで「起きろ豚!」と何度も頬を優しくビンタする。


『純平のバカ、無茶苦茶なことしやがって……事件を防がなきゃいけないのにいきなり暴力で解決なんて……』


結弦がそう言うが俺はフルでシカトした。


「んんんんんぅっ……夢だったのか?」


「夢なわけねぇだろ!」


「ブヒィ!こんなことしてタダで済むと思ってるのか!?」


豚野郎は急に流暢な日本語で話し出す。


「どうなるかって?お前こそど底辺の俺を虐めようとしてボコられたって言いふらしてやってもいいんだぞ?噂になってお前自身虐められるか、それとも俺が噂を広めてやろうか?」


「俺はどうしたらいいんだ?」


察しがいい豚野郎だな。


俺は親切に説明する。


「答えは簡単だ。俺を虐めるように仕向けたクソ野郎の宇治篇太郎を監視しろ!あのクソ陰キャが誰と話しどこで飯を食ってどこでクソしたのか俺に報告しろ」


「何のためにこんなことを俺に?」


「お前は何も知らなくていいんだよ。てか、何でお前さっき片言だったんだよ?」


豚野郎は口を吃らせる。


「……そっ……そそそそれは、俺が日本とフィリピンのハーフだから、外国人ぽく喋ろって……めめめ命令されたからだ……」


『牟田西孔明は日本とフィリピンのハーフなの忘れてたよ、あいつはそれが理由で虐められて宇治の野郎は虐めない代わりに奴を奴隷のように扱っていたな』


「なんだ、豚にも名前あったのかよ……」


俺には理解できなかった。


宇治なんてクソ野郎に媚まで売って、自分がされてきた虐めを他人にする人間の気持ちが。


「俺だって好きでこんなことはしてない!ででで……でも、こうしないと……おおお俺が虐められるんだ!」


「他人を傷つけないと虐められるってお前友達と思われてねぇぞ。それに体臭いからちゃんと風呂入ってダイエットしろよ、豚」


「わかった……」


豚野郎はさっきの気迫が嘘みたいに薄れていた。


元々はおとなしい性格だったんだろう。


だったら俺は宇治よりもいい待遇を与えてやればあいつはメンツを気にしてこのことを言いふらすことはないだろう。


事件を防ぎながら宇治の野郎を監視するスパイも確保した。


これからはこうして豚野郎を利用して少しずつぶちのめしていくか。


トイレから出た後教室に戻るため俺は廊下を歩く。


「これでいいだろ?石ノ上結弦」


俺は廊下の窓を見上げながらそう呟く。


『純平のバカヤロウ……』

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