第2話 エルフの池

 行商人が来てから三日ほとたった。グリデの熱はすっかり下がった。他の熱病にかかっていた者達もみな回復に向かっているようだ。


 私は広場に向かい行商人に声をかける。

「ありがとう、この薬で皆が救われた、あなたはこの里の恩人だ」

しかし、行商人は

「まだです、原因となる物が解決していません」と言う。


 「この熱病の原因は蚊です。蚊を駆除しなければまた熱病になる者が出てしまう」

「蚊?あの刺されると痒くなる?」

「そうです。刺された時に病まで運ばれてしまうのです」


 なんてことだ、蚊は暑い季節には毎年出る。しかし何故今年は熱病が流行ってしまったのか


 「近くにある池、あそこは魔族による汚染が進んでおります。光魔法で浄化し、ボウフラを食べるこの小魚を放して下さい」そう言うと荷車から幾つか水瓶を取り出した。中には沢山の小魚が泳いでいた。

「そしてこちらが痒み止めの軟膏に殺虫スプレー、これが虫除けです」


 私はこの怪しい行商人をすっかり信用してしまっていた。沢山の小魚を買い腰に虫除けをぶら下げ里の光魔法の使い手達を集め池に来ている。

綺麗だった池は黒くドロドロとしている。


 三日間、交代で光魔法による浄化を行った。

その間、殺虫スプレーも軟膏も虫除けも大いに役立った。

 「この痒み止め何だかひんやり気持ち良いぞ!」

「このスプレーと言うやつ、一吹きすれば蚊がパタパタと落ちて行く!」

「この虫除け腰にぶら下げておけば浄化している時に痒い思いもしなくて済む!」

皆、驚き大喜びだった。

 

 そして綺麗になった池に小魚を放し里へ戻ると行商人は出発する準備をしていた。

ペタルやグリデ、熱病で伏せっていた者達やその家族達から感謝を述べられている。

「いえいえ、皆さん元気になって良かった。また、立ち寄らせて頂く時がありましたらご贔屓にお願いします!」と笑顔で返している。


 私は行商人の元へ向かい無事に池の浄化が済んだ事を伝えた。

「池の浄化は滞りなく行えました、ありがとうございました。これもすべてあなたのおかげです」

 

「いえいえ、私は商売をさせて貰っただけです、こちらこそ沢山稼がせていただきました。ウィスペルさんに一つお願いがあるのですが」そう言いながら荷車に手を伸ばした。

「なんでしょうか?私に出来ることならば遠慮なくおっしゃって下さい」そう答えると行商人は鈍い色の盾を渡してきた。

「この盾、魔王を倒した勇者の物です。いずれまたこの盾を求めて新たな勇者が訪れる日がくるでしょう。勇者が触れると光輝きます。その時がくるまで預かっていてください」

 怪しい小太りの行商人はそう言うと荷車を引き手を振りながら去って行った。







 

 




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