脳力トレーニング

鬱病信者

第1話

「ここは国立能力開発専門高等学校。この国の高校生はこの学校に行くことが義務付けられています。何故なら人類はある瞬間から能力に目覚めたからです。正確には「脳力」と表記するが現代では「能力」の方が主流になってきています。能力のことについては国が歴史統制をして詳しい事は一般人には分からないようにされています。その政策に最初は世間が猛反発。皆も知っているように今でも抗議デモがされています。がその反発も治まってきています。その背景には統制をする代わりに能力開発高校の義務化と全面無償化によるものが大きいです。全国にあった高等学校のほとんどが閉校し、この学校に統一されました。当然生徒数はとんでもない数になる為、教師の職が無くなることはありませんでした。高校教師をしている人は無条件で本校で教鞭を取ることが許可されましたので。

ですが、皆さんが次の時間にやる能力開発の時間では国に認められた者にしか教鞭をとる資格が無い為、私は道案内までですからね。あとここだけの話なんですが能力開発指導者はあくまで『指導者』であって教師ではないです。注意してくださいね。」

「キーンコーンカーンコーン」

「チャイムが鳴りましたね、今日はここまで。さっきも言ったように次の時間は能力開発です。では五分後に廊下に番号順で並んでください。」

僕の名前は「死道 誠」。今日入学した能力開発高校一年生。

「はぁ、めんどくさ。」

出来れば何もしたくない。家にずっと引きこもっていたい、

「ねぇそれ私に言ってる?」

しまった、隣の席の人に聞かれてた。入学早々この「志神 真奈美」という人に絡まれたのだが、初対面なのに凄く馴れ馴れしい。まぁでも話せる人がいた方が僕としても有り難のだけれど。

「違うよ。」

「貴方に今すぐ鏡を見せてその言葉が嘘だってことを証明したいわ。」

「だから違うって。」

顔に出てたか、気をつけないと。この人が鬱陶しいのもあるけど全てをひっくるめての「めんどくさい」なんだよな。でもそれを説明したところで結局鬱陶しいって言ってるようなものだから言えない、

「ま、信じてあげてもいいわ。」

「それはどうも。」

…絶妙に気まずい空気が流れている、いやこれは僕の自意識過剰のせいだ。そんな空気は流れていない。そのはずだ。だから気にするな。

志神の顔を横目で一瞬見る。なんだか気まずそうな顔だ。それと多少の罪悪感を抱いているようにも見える。気のせいじゃなかったか、

「ねぇ、能力ってなんだと思う?」

「強そうなやつがいいよね!」

同じクラスの人の話声が聞こえてくる。どうやら次の授業のことを言っているらしい。いや授業というより訓練と言った方がいいだろう。最初の授業で能力が解放され、自身の能力を知る。とても重要なもので緊張感があっても良さそうなんだが、

「俺は透明になるとか良いなぁ!」

「キモイ〜笑」

なんて緊迫感の無さなんだろう。そして隣が女子だから余計気まずくなったじゃないか。どうしてくれるんだDQN共。

「えっと、なんだと思う? その、解放される能力。なんとなく志神さんは強そうだよね、、」

「そう?かしら。ま、悪い気はしないわ」

なんだか嬉しそうな顔している。良かった、これでお互い話しかけずにある一定の距離を保ち続けることができた。

「そろそろ時間だよね」

「行きましょうか」

なんだかんだで騒がしかった教室も並ぶ時はさすがに静かだ。みんな緊張しているのだろう。何故ならこれから解放される自分の能力次第で人生が決まってしまうのかもしれないからだ。

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