Cageling〜神聖アウロラ王国史〜

@SERIS-KO

 星王暦5237年

 その年の〈煌天馬の月〉、神聖アウロラ王国の聖公爵にして宰相であるジュリア=ルシーヌが落雷に打たれ死亡した。彼女は絶世の美貌と類稀なる叡智ともって知られ、聖龍王アンリ六世の婚約者であった。地上の女神とうたわれた彼女の突然の死は、アウロラのみならずユーフラニア全土に暗い影を落とし、不吉な風が人々の心をかけ抜けた。世界は光を失ったのだという嘆きと恐れとが、野火のように広がり、恐ろしい予言が至るところで囁かれた。

 やがてその予言は現実となり、〈大災厄時代〉が世界を覆い尽くし、ユーフラニア諸国は苦難の時を迎えることとなった。

 その痛みと苦しみとは、ジュリア=ルシーヌの真の夫であるイオ=ウィスタ家のプトレメウスが、己が命によってすべてを贖う日まで、むことはなかった。

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