女王小野雅子外伝
宿仮(やどかり)
第0話 プロローグ
小野さくらコンテストは、四年に一度開かれる短歌界の「ショパンコンクール」と呼ばれる舞台だ。初出場の高校四天王が、予想通り準決勝に名を連ねた。因縁の対決――小野まちこと俵田まちこに加え、斉藤高校の異端児二人、神城文と寺川修一も順当に準決勝まで勝ち進んできた。
俵田まちこは、伝統高・斉藤高校短歌部の部長で、新春歌始めに抜擢された期待の高校生歌人。
「窓際に ほおづえつきて 雲ながめ やまとの空に ウィンクするわ 俵田まちこ」
しかし、前回の高校選手権では小野まちこに敗れていた。
今回は第一回小野さくらコンテスト優勝者でもある顧問・尺八郎とともに対策を立て、学園口語短歌で挑む。
一方、小野まちこは女王小野雅子の娘であり、コンテスト名を冠する小野さくらの孫娘。前回の勝利を得た歌はこれだ。
「指先に 別れの紫 ひとしずく 草木の影を 踏み越えてゆく 小野まちこ」
絶対に負けられない戦いが、幕を開けようとしている。
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