"こうしゃく”令嬢

麻田 雄

第1話

『時は西暦2000年』

『生を受けたる私です!! Zやポストミレニアム、そんな呼称を受けました』

『ネットにスマホ、SNSと、デジタルネイティブと比喩されて、皆が得意と思われながら……私といえば中の中』

『とにかく普通でありましたっ!!』


『更には家庭も平の凡』

『凡リーマンのお父さん、パートで働くお母さん、特に可もなく不可もない、普通の家庭でありました!!』

『私はすくすく成長し、高校・大学進学と、それらも無難にやり過ごし、気付けば普通の社会人』

『時代の煽りを受けつつも、慎ましやかに、凡庸に、静かに暮らしておりました!!』


 閉じた扇子の柄を持ち、2度素振りする。


『ですがっ!! 私に転機がきます!!』


 扇子を大げさに開く。


『転職や、結婚などと思いきや……みんな大好き、異世界転生っ!!』

『剣と魔法に、夢と希望、期待と不安に、美男美女』

『全てが揃った夢想世界!!』


『なぜ、そんな事になったのか? は、おそらく皆さん興味ない? 実際、私も分かりません!』


 扇子を閉じ、少し大げさに俯く。


『……なんとなく、不幸な事故に巻き込まれ、終わったのだと思います』

『両親や、友人、知人にお別れを、言えず終いは無念です……』


 顔を上げる。


『ですがっ!!』


『めげてる時間はありません!!』

『私はその時、問われます』

『次は何になりたいか? と』


 扇子を2度素振りする。


『私は夢だと勘違い。希望を胸に答えます』

『公爵令嬢お願いしますっ!! と』


『”公爵”が、どんなものかも知らないくせに!』


『なにはともあれ、ワタクシの”こうしゃく”人生、はじまり、はじまり!!!』


 扇子を強く2度素振りする。

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